255 〈白の大樹〉MIA!?
Tips :〈古代の童話の羊皮紙片・転2〉
古代の遺跡やダンジョンの宝箱から稀に発見される劣化した羊皮紙の一部。
この羊皮紙片には6/7とナンバリングされており、物語が終盤であることが伺える。
以下が判読された部分から復元された内容。
『明くる日、姫と貧民の青年の結婚式が行われる日がやって来ました。
姫の結婚を祝うため結婚式の行われる教会には大勢の人々が押し寄せました。
王様は貧民の青年に、民が魔物に怯えてしまってはめでたい日が台無しになると言い、それを聞いた貧民の青年は王様の言葉に従い、狂暴な魔物をうんと遠くへと行かせました。』
戦闘の最中に初歩的な間抜けを晒した俺への代償は、容赦無く自身に迫る鈍色の殺意であった。
「ッ…!」
バッ…
俺は咄嗟に後ろへ跳ぶが、避けられる筈も無く。
ガキィイ-ンッ!
金属と金属が激しくぶつかり合う…ある種軽快な音を響かせて、俺は吹っ飛ばされた。
ドゴンッ!
「カッ…!?」
坑道の岩壁に強かに背中を打ち付けられ、俺は息を詰まらせる。
「ご主人!?」
フラッ…
「ゴホッ…ニーニャ、大丈夫だ…。」
慌てた様子で俺を呼ぶニーニャに、俺はなんとか立ち上がって無事をアピールして見せる。
「……。」
フッ
俺の必死のアピールを見たニーニャの様子は一転、〈ゴーレム〉を無言で鋭く睨んだかと思うとその姿がかき消える。
ギンッ!ギギギッ、ギンッ!
俺の目には〈ゴーレム〉に白い影が纏わり付いているようにしか見えないが、聞こえてくる音からニーニャの攻撃の激しさが察せられる。
「GoOoッ!?」
ブンブン
攻撃自体は効いた様子は無いが、さすがに鬱陶しそうに腕を振り回す〈ゴーレム〉。
しかし俺の目で影しか捉えられないほどに素早く動くニーニャを、フル装備の俺より遥かに鈍重な動きの〈ゴーレム〉が捕らえられるわけが無い。
「ラストさん!?」
「ラストさん、今回復を!
──────、『中回復』ッ!」
パァアッ…!
ニーニャにより〈ゴーレム〉が完全に足止めされている間に、追い付いて来たリタに身体を支えられ、アデリナに回復を受ける。
(あれ?マリ姉は─)
自惚れでは無く、こういう時に一番取り乱しそうなのはマリ姉。
しかしマリ姉の声が無かったことに疑問を浮かべ掛ける俺であったが、事態はこの時既に終わっていた。
「よくもラス君を…、『爆裂火球』ッ!」
ボシュッ!
マリ姉の手から放たれた火球が、〈ゴーレム〉に向かって“ゆっくり”と飛んで行く。
「ッ…!?」
バッ!
驚愕の表情を浮かべ、〈ゴーレム〉の近くから跳び退るニーニャ。
「『防護壁』ッ!」
本来必要な祝詞を唱えず、アデリナの発動した『防護壁』に包まれる俺たち。
「あわわわっ!」
慌てながらも、自然と対衝撃姿勢を取るリタ。
「あ。」
着弾の直前に聞こえた、マリ姉の声。
ドカァアアァンッ!!
「GoOoッ!?」
断末魔を上げた鉄腕の〈ゴーレム〉が、爆煙の中に消えていく。
ビシッ…!ビシッビシッ!
坑道全体…勿論足元にも入っていく罅に、迂闊に動けない俺たち。
「マリ姉、俺言ったよな…?」
パーティーリーダーとして…そして個人としても、マリ姉には言わざるを得ない。
ビシビシビシビシッ…!
クルリ
「…えへっ☆つい♪…ね?」
ペロッ
最早いつ崩落しても可笑しく無いほど満遍なく罅が入った中、慎重に振り返ったマリ姉が「テヘペロ」を披露する。
グラグラ…、ガラッ
「「つい♪」じゃねぇよ、このバカマリ姉~ッ!」
ガラガラッ!
俺の怒鳴り声が切っ掛けとなったかのように、坑道の崩壊が始まる。
ガラガラガラガラ…
しかし予想外にも坑道が崩壊していく音は徐々に小さくなっていき、遂には崩落せずに治まった。
「「「「………。」」」」
「…ほら、大丈─」
ガゴォオンッ!
黙りこくる俺たちにマリ姉が得意げな顔で何かを言おうとした瞬間、俺たちの足元に大穴が口を開ける。
「うわぁあぁああ~ッ!」
「「「きゃあぁああ~ッ!」」」
跳び退るにも踏み込む地面は無く、俺たちは悲鳴を上げながら暗闇へと落下していくのであった。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
ヒュゥウゥ…
「ぅわぁああぁ…っ!」
ドサッ!
「ガフッ…!」
穴は相当に深く、マリ姉の『浮遊』により10秒ほどで無事(?)地面に到着することが出来た。
…因みに、一番重い俺が一番先に落ちてきたということは─
「きゃああぁ~ッ!」
ドサッ!
「痛っ!」
俺の次に“装備”重量のあるリタが到着。
尻を強かに打っていたようだが、怪我は無いようで何より。
スクッ
(さて、お次は?)
「~~~ッ!」
リタの次に、悲鳴を噛み殺して落ちて来たのはアデリナだった。
「よっ、と!」
ドサッ!
「きゃっ!?」
落ちて来たアデリナを上手い具合にキャッチした俺は、腰の抜けてしまったアデリナを地面に座らせて次に備える。
「きゃああぁあっ!」
次に落ちて来たのは『浮遊』の発動者故に、落下緩和の効果が大きかったマリ姉。
(あ、ヤベ。)
しかしそのせいで目測を誤ってしまい、気付けば俺の頭上にマリ姉が。
「ブェ」
グキッ、ドサッ!
首から変な音がしたが、奇跡的に首の筋を痛めただけで済んだようだ。
「痛た…って、キャァアッ!
ラス君大丈夫!?」
俺の安否を確認してくるマリ姉。
しかし─
「モゴモゴモゴ。」
「あっ、ん…!」
ビクンッ!
─俺は顔がマリ姉の太ももに挟まれた状態となっており、俺が言葉を発しようと口を動かせば、何やら悩ましい声を上げて身体を跳ねさせるマリ姉。
ジワ…
(…ん?何か湿って─)
態とでは無いにしろ、状況にそぐわない行為をしていたからだろうか?
ヒュゥウゥ、ドスッ…!
「グモッ!?」
軽いとはいえ腹にニーニャが着地を決めたことでダメージの限界を迎えた俺は、身体の一部を硬くしたまま意識を手離したのであった。
戦闘シーンかと思えばこれよ…
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