250 浪漫は世界を越えて
装備更新2話目。
今回は盾!?
※禁止ワード「無駄遣い」「必要性」「非合理的」
魔核を喰わせたら、次は試してみるのが流れとしては普通だろう。
ということで、店に併設された試し切り場にて。
「『石牙』。」
ドガガガガッ!
穂先から連射される尖った礫により、厚さ数cmの木の板が穴だらけになる。
「『流砂刃』。」
ジャリィイイィンッ!
流れる砂を纏った穂先に削られ、板金鎧が容易く切断される。
………、うん。
「やっ、べぇ…。」
ジャムールに使われてその危険性は知っているつもりだったが、何が原因なのか明らかに威力が上がっている。
…もしジャムール戦でもこの威力だったら『石牙』はともかく、『流砂刃』でバラバラになっていたことだろう。
しかもこれらのスキルは〈魔核喰ラウ巨猪ノ骨槍〉に付与されたスキルであり、[帰還]の性質があるとはいえ万が一にでも奪われてはならないだろう。
「よし、ちゃんとスキルは喰えたみたいだな。
次は盾だな。」
スタスタ…
〈魔核喰ラウ巨猪ノ骨槍〉の危険性に戦慄く俺を尻目に、ガンキンは気負いも無く頷くだけで店へ戻って行ってしまった。
「…早く来い!」
あ、ハイ。
…ガンキンは前回槍を見せに来た時に知っているから良いにしても、こっちは今日知ったばかりであるということに…少しは配慮して欲しいものだ。
…………………。
…………。
…。
「…お前さんが妙ちきりんな注文ばかりするからな。
おれも久々に創作意欲が湧いちまってな…。」
ゴソゴソ…
などと言いながらカウンターの下を漁り、何かを探すガンキン。
(「妙ちきりん」って…。)
失礼な…と俺は思ったが、思い返せば〈シャベルナイフ〉だの盾の改造だのと、妙と言われても言い返せ無いことに気付く。
「お、あったあった…ほれ。」
ゴトリ…
そして探し物は無事に見つかったようで、ガンキンの創作意欲の産物がお披露目された。
「………、これが盾になるのか…?」
俺がこんな間抜けな質問をしてしまったのも無理は無いだろう。
何故ならカウンターの上に置かれたそれは、L 字の取っ手が付いた金属の細長い箱から先の尖った金属の棒が伸びた…俺の覚えに一番近い物ではハンマーかメイスのような「妙ちきりん」な物体だったのだから。
「んなわけあるか、アホウ!」
(阿呆って、そんなに言わなくても…。)
だいたい…「次は盾」って言ったのはガンキンで、それで出てきた物体が盾に類する物と思っても仕方無いのでは?
…そうでなければ、俺もガラクタにしか思えなかったことだろう。
「良いか、よーく見とけ?」
グルグル
そう言ったガンキンは箱に付いた取っ手を回し始める。
(あれはハンドルだったのか。)
キリキリ…、ググッ
でも何故?…と思いながらもガンキンに言われた通りに目を離さずにいると、箱から伸びていた棒が短くなる。
「ッ!?」
(…いや、あれは…箱の中に入っていっている?)
…おそらく、あの箱の中には門の開閉装置のような仕組みが入っているのだろう。
キリキリキリキリ…
ガンキンがひたすらハンドルを回し続けると、中に収まり切らなかった棒が箱の反対側から伸びてくる。
どうやら、こちら側の先は尖ってはいないようだ。
キリキリ…
そして─
ガチンッ!
─という音が聞こえると、ハンドルから手を離し汗を拭う振りをするガンキン。
「ふぅ…、これで準備完了だ。
来い、コイツがどんなモンか見せてやる。」
そう言ってやや慎重気味に箱を持ち上げたガンキンは、再度試し切り場へと向かう。
俺もそう何度もどやされてはかなわないと、ガンキンの後に続く。
…………………。
…………。
…。
「よぅし、見てろよ…。」
試しの準備が完了し箱を構えるガンキンの真ん前には、鎧に使われている物と同じ板金が3枚。
(まさか…、な。)
普通は的となる物を置く台にガッチリと固定された箱の向きは、棒が伸びる方と反対側が設置された板金に向いている。
つまり箱が元の状態に戻った場合…鋭く尖った棒の先が、設置された板金へ確実にぶつかってしまうのだ。
槍を扱う俺は訓練で似たような状態に覚えがあり、ガンキンがあの箱で何をするつもりなのかを察した。
俺の槍の師匠でもあるオットーさんは訓練用の刃引きした槍で板金鎧を貫いて見せたが、あれは熟練の技による1種の奥義だ。
ガンキンはそれをあの箱で、しかも3枚一気に抜いて見せるつもりらしい。
シュルッ…
「行くぞ…!」
そう言ってガンキンは、箱と金属線で繋がる剣の柄のようなものを手にする。
「一瞬だから見逃すなよ、3、2、1─」
(いやいや、カウント早いって!)
見逃すなと注告しておきながら、本当に見逃して欲しく無いのか疑問になる。
「─0。」
ガシュンッ!ガッ!
それはまさに一瞬の出来事。
ガンキンの注告が無ければ見逃していた。
「…仮銘〈破壊針〉。
威力は見ての通り…と言いたいとこだが、手打ちなら板金鎧を貫通する前にお前か相手…あるいは両方が吹っ飛ぶ。」
今目の前で起きたことの整理がまだつかない俺に、心なしか得意げに語るガンキン。
「手間を掛けて準備をしても1回きりしか使えやしねぇし、耐久性なんかあったもんじゃ無え。」
しかし得意げな雰囲気とは裏腹に、ガンキンの口から出るのは欠点ばかり。
「針は特別頑丈だがその分金は掛かったし、取り付けたら盾の取り回しが悪くなるのは確実だな。」
聞けば聞くほどガラクタのように思えてくる…筈なのだが─
ドキドキ
(何だ?この胸の高鳴りは…。)
─3枚の板金を容易く貫いた威力への恐怖?
否、これはガキの頃、良い感じの木の棒を拾った時のような。
「だが盾をカギ爪みてぇに振り回すよかマシだろう?、
値引きは出来ねぇが、今買うってんならコイツに正式な命銘をさせてやる。」
…これを創ったガンキンには悪いが、この太さで「針」は無いと思っていたところだ。
「それで…、どうする?」
「そんな…、そんなもんに俺が…─」
最後に理性が全力で止めようとしてくるが、男ならばこそ…この欲求には抗え無い。
「─買った!」
「毎度ぉーっ!」
そして良い顔をしたガンキンとすったもんだの協議の末、仮銘〈破壊針〉に付いた正式銘称は─
「穿つ杭」という意味で、〈パイルバンカー〉
─と相成ったのであった。
ラスト 「これは盾ですか?」
ガンキン「いいえ。
これは皆さんの脳を焼く武器です。」
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