表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
農家のデブ三男、兄に実家を追い出されて街で冒険者始めたらモテ始めました!?  作者: FURU
閑章2  もうすぐで1年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

260/284

248 甘味な罠

前回前書きにて→「1話2000字に戻さないと…。」

今回→約4000字


…どうしてこうなるの?



 帰還した翌日にはギルドへ顔を出し、予定外に帰還が延びたことに、心配していたギルマスから小言を貰う。


 次いでに傭兵(ジャムール)と敵対し撃破したことを奴の傭兵タグを提出しながら報告したところ、どうやら奴は通り名のある傭兵で〈カクタス〉侵攻にも向こう(〈クレク連邦〉)側で暴れたらしい。

 残念ながら野盗討伐と異なり賞金などは出ないが、僅かながらもランク昇級のための功績(ポイント)となった…らしい。

 

 それから数日。

 この間の俺たちは依頼と旅の疲れを癒しながら、手狭になってきた今のパーティーハウスに代わる物件を探していた。

 しかし街としては最小限の規模らしい〈ベビーリーフタウン〉に今の俺たちに丁度良い物件は無く、ニーニャとリタ、ソーナとカティアには2人で1部屋を使って貰っているのが現状だった。


「う~ん…。」


 大人数が暮らせる物件として商業ギルドで紹介されたのは、貴族向けの屋敷か大店向けの従業員用宿舎だ。

 従業員用宿舎は論外として、貴族向けの屋敷は悪くは無い。


 しかし貴族向けの屋敷なだけあって8人で住むにも広すぎであり、遠征ともなると…とてもでは無いがベアトリス・ソーナ・カティアの3人では管理しきれないだろう。

 人を雇うにしても男は当然として、ベアの話を聞いた今では女を雇うことにも不安が残る。


 もう1つの方法としては、土地を買って希望通りの家を建てるという手もある。


 しかしこれも広い家が建てられる纏まった土地は街外れにあり、利便性と治安が悪くなってしまう。

 そして何より、家を建てるには金…はともかく時間が掛かる。


(…3人には使うとこだけ管理して貰うか?)


 現状を早急にどうにかすることを考えると、やはり貴族向けの屋敷を買うことが良いと思われる。

 留守組の3人には負担を掛けることになるが、今後住人が増えた場合を考えると余裕はあった方が良いだろう。


フワッ…

「ラス君、まだ悩んでるの?」


 …とそこへ、何やら甘い匂いを漂わせたマリ姉がやって来た。


「はいこれ、召し上がれ?」

コトッ


 そう言ってマリ姉は、俺の目の前に皿と湯気の立つカップを置いた。


「これは…?」


 皿に乗った様々な菓子…とこれは蜂蜜の匂いか?が香るホットミルクに、俺はどういうことかマリ姉に説明を求める。


「なんか何日か前が「甘味の日」っていう日だったらしくてね、甘味とお菓子の材料がいつもより安く売っていたから奮発したの。」


 どうやら「甘味の日」というのはその名の通り、親しい者と甘味を贈り合うという風習のある異世界の記念日らしい。

 『古の勇者』がこれを伝えた当時は甘味が今以上に貴重で長らく貴族間の風習と化していたが、甘味の原材料である砂糖が平民にも出回ると共にここ十数年で大都市を中心に広まっているようだ。


 まぁ…いくら普段より安く売られているとはいえ、砂糖1袋で家族の晩飯が1週間は豪華になる。

 だがそこは俺たちもそこそこの金持ちであり、マリ姉達はこれを機に全員で菓子作りをしてみた…とのことであった。


「へぇ~…ん?この茶色い塊は何だ?」


 マリ姉の話を聞き再び皿の上の菓子を眺めた俺は、見慣れ無い物体についてマリ姉に訊ねる。

 一度気になれば良く見ずとも、皿に乗る他の菓子にも付着していたり似たような色をしている物があることに気付く。


「ああ、それ〈チョコレート〉って言うらしいわ。」


 なんでも、本来であれば「甘味の日」に贈り合うのはこの〈チョコレート〉であったらしいのだが、〈チョコレート〉はここ数年でようやく生産体制が整い始めた菓子だそうだ。

 …本来〈チョコレートの日〉と言うべき記念日を、『古の勇者』は何故〈甘味の日〉と歪めてまで広めたかったのか?


「…あっ、ほら考え事は後あと。

 せっかく作ったんだから早く食べて?」 


「あ、ああ…じゃあこれから。」


 変に急かすマリ姉を訝しみながらも、俺は〈チョコレート〉とやらの味はどんなものかと茶色い塊を摘まみ上げる。


「いきなりニーニャの作った物を選ぶなんて、やっぱり「運命の番」だからかしら…?」


ポロリ…

「!?あっ、おっと…!」

パシッ!


 無造作に口に放り込む寸前でマリ姉が呟いた言葉に驚いた俺は、思わずニーニャ作らしいチョコレートを落としそうになり慌ててキャッチした。


「え…これ(〈チョコレート〉)を?ニーニャが?作った…!?」


 ここ数年でようやく生産体制が整い始めた…つまり最新の菓子を、俺の記憶の限りだと料理をしたことの無いニーニャが何故作れるのか?

 料理初心者でも作れる物だとしても、そのレシピがもう売られている…なんてことは無い筈だ。


 いや…確かに、皿の上にある菓子は6つ。

 全員で菓子作りをしたというのだから、このハニーミルクを含めると丁度の品数になる。

 つまり、買ったままの〈チョコレート〉など最初から


「…?」


 何故俺がこんなに驚いたか分からない、といった様子のマリ姉。


「ああ!それはね─」


 しかし俺が何やら勘違いしていることに気付いたマリ姉が言うには─


 「甘味の日」の由来を商人に聞いたマリ姉達。

 そして奮発すると決めたマリ姉達は、砂糖の数倍の値段だった〈チョコレート〉を商人の売り文句(セールストーク)のままに購入。


 しかしマリ姉達が味見をしたところ、買ったままの〈チョコレート〉は甘味よりも遥かに苦味が強く、また口当たりはザラザラとして不快で…正直に言うと騙されたと思うほど不味かったらしい。


 その〈チョコレート〉を溶かしミルク(〈ミルコゥ〉の乳)と砂糖を加え、味と口当たりを良くした


「─いわば、〈ニーニャ特製なめらかミルクチョコレート〉ってことよ!」

 

 ─とのことらしい。


 そして他の菓子を食べる時にもこの紹介はあり─


・マリ姉作〈ほろ苦ガトーショコラ〉

 見た目は焦げたパンの塊のようだがこれは〈チョコレート〉をふんだんに使用したケーキであり、買ったレシピ通りに作ったので断じて焦げたわけでは無いらしい。

 味はその名の通り甘味の他に苦味があったが、俺としては嫌いじゃない苦味だった。

 ただ…大半は〈チョコレート〉の苦味であったのだが明らかに、…いや細かいことは言うまい。


・アデリナ作〈シュガーラスク〉

 硬いバゲットにバターを塗り、砂糖を振りかけて焼いた〈チョコレート〉を使用していない菓子。

 というのも孤児院に差し入れするために大量に作る必要があったらしく、受け取る教会職員が遠慮しないように配慮したとのことらしい。

 シンプルな菓子ながら、バゲットのサクサクとした食感にバターの香りが際立つ見事な逸品であった。


・リタ作〈チョコレート掛けパウンドケーキ〉

 庶民のケーキと貴族が言うパウンドケーキに、ニーニャの作った物とはまた異なるミルクチョコレートが掛けられた菓子。

 チョコレートを掛けるためにケーキの甘さを抑えたらしく、甘過ぎることの無いベストバランスな味であった。

 ただ一つ残念(?)だったのは、これを味わえた男は俺だけでは無いということだ。


・ベアトリス作〈薔薇入り飴〉

 蜜色の飴の中で薔薇の花びらが躍る、見た目にも美しい菓子。

 甘さは控えめで、代わりに薔薇の風味を愉しめる…実にベアトリスらしい菓子と言える。

 なお、俺が食べた物は幾つも失敗した中で唯一成功した物であったらしい。


・ソーナ作〈ハートチョコレートクッキー〉

 生地に溶かしたチョコレートを混ぜ込んだ、ハート型のクッキー。

 普通のクッキーにチョコレートを掛けるか悩んでいたそうだが、少々手間の掛かる混ぜ込みを選んだらしい。

 ソーナはクッキーの形といい、言われなければ分からない可憐(いじら)しい努力といい、俺のツンデレ2人が可愛過ぎる。


・カティア作〈カティア特製ホットミルク〉

 温めた〈ミルコゥの乳〉に蜂蜜を混ぜただけのハニーミルク…と思いきや、カップの底に擂り下ろした〈ジンジャー〉が隠されていた。

 これにより最後の一口がピリリと辛く、流石に甘ったるくなってしまっていた口の中がスッキリとし、飲み終えても身体がポカポカと暖かい。

 普段の態度からは意外な細やかな気遣いに、「カティア特製ホットミルク」と聞いた際に思わずカティアの裸体を思い浮かべてしまったことを懺悔したくなる。

 …しかしふと「俺がこうなることを狙っていたのでは無いか?」という考えが浮かんだが、それは穿ち過ぎだろうか…?


コトッ…

「ふぅ…、どれも旨かった。」


 マリ姉達の作った甘味を平らげた俺は、先にそう言うことでこういう時に有りがち(「どれが一番)な質問(美味しかった?」)を避ける。

 確かに味や完成度に差はあるが、愛しの嫁や婚約者達が作ってくれたというだけで最高以外の評価は無いだろう?

 …まぁ、食えないものは食えないとはっきり言わせて貰うのだが。


「そう?良かった…。」


 そんな俺の気持ちを察したのか、マリ姉は俺がマリ姉達の作った甘味を美味しく頂いたことに喜ぶだけ─


「ならお返しする時に、ちゃんと1人1人にお礼を言わなくちゃね?」


 ─かと思いきや、そんなことを言い出した。


「え?いや…、お返しなんて用意していないぞ!?」


 確かに甘味を贈り合うとは聞いたが、「甘味の日」というのを俺は今知ったばかりだし、そもそも今日は「甘味の日」では無い。


「へぇ…、ラス君は私達を親しく思って無いのね。」


 そう言って泣く振りをするマリ姉。


「いや、そんなこと無いって!

 …ただ、今すぐ用意しろって…急過ぎだろ。」


 マリ姉を宥めようと俺がそう言うと─


キランッ!

「大丈夫よ!返す物が無いなら、身体で返してくれれば良いじゃない?」


 ─獲物を見つけた獣のように目を光らせたかと思えば、即座に身を翻して俺に迫ったマリ姉がそう言った。

 マリ姉がやけに菓子を食うように急かしていたのは、これが狙いだったのだ!


「は、嵌められた…。」


「え~、ハメるのはラス君の方でしょ?」


(そういうとこだぞ、マリ姉。)


 マリ姉のスケベオヤジのような物言いはさておき。


 既にマリ姉達の作った菓子を口にした俺に…いや、事前に分かっていたとしても俺に「マリ姉達手作りの菓子を断る」という選択は無い。

 つまりこの後、7日間(1人につき1日)かけて“お返し”をするのは当然のことであったのだ。



皆さんは誰を…では無く、誰の手作りスイーツが食べたい(飲みたい)ですか?


今日は「(製菓会社の陰謀)」?

ははっ…、理解しかねる。



いつも読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。

「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。


感想、レビュー等もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 バレンタインデー?知らない子ですね…。普段買わない商品が行き着けのスーパーで安売りされるので、そこだけは評価してやろう(上から目線) お返しはホワイトデー→ラストのホワイトミルク…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ