閑話 side 「勇者」その3
盛大にやらかした「勇者」一行…。
次は何をやらかすのか!?
!お知らせ!
本日12:00に[6章登場人物紹介]を投稿します。
ラストが汗水を垂らして、猫人族の村の畑の再生作業を行っていた頃。
図らずも〈クレク連邦〉の〈フラワーフィールズ王国〉侵攻幇助をしてしまった「勇者」一行は、王よりの命令を受けて〈勇者教国〉へと一時帰還していた。
「お父様!お母様を幽閉するとは、一体どうしてしまったのですか!?」
そして現在。
自国に帰還し王妃が幽閉されたことを知ったセラフィアは、帰還報告の謁見にて父を問い質していた。
「控えよ「聖女」セラフィア、ここは謁見の間なるぞ。」
娘として父の蛮行を咎めようとするセラフィアに対し、暗に「公的な場である」と返す王。
父を咎めるつもりが、自分が逆に咎められてしまったセラフィア。
「っ…、ですが陛下─」
「くどい!
…帰還の報は受け取った、下がるが良い。」
しかし尚も食い下がろうとしたセラフィアを一喝すると、王は「勇者」一行を謁見の間から追い出してしまう。
─もしこの時、王がセラフィアに「王妃幽閉」の理由を告げていれば。
─いや、自国民はおろか他国民…極めつけに「勇者」までが居た謁見の場でのそれは、王族の恥を晒すだけで無く国を揺らがしかねない行為であった。
─つまりこの後に起こる“出来事”は誰がどうしようと避けることの出来ない、…陳腐な言い方をするならば“必然の出来事”であったのだろう。
ギィイィ、バタンッ!
近衛騎士により半ば強引に追い出された「勇者」一行の前で、謁見の間への重厚な扉が大きな音を発てて閉じられる。
ポロッ…
「うぅ…お父様、どうして…。」
その様子が父が王として自分を拒絶しているように感じてしまい、閉じた扉の前で目尻から涙を溢れさせるセラフィア。
「…セラフィア様。
一先ず旅の汚れを落としましょう、さぁ此方へ。」
そんな様子を見かねたジャンヌに連れられて行くセラフィアに続き、謁見の間前を後にする「勇者」一行であった。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
城の王族居住区。
カチャ、ス…
王族とその世話をする使用人以外の立ち入りが“原則”禁じられているその区画にある一室の扉が、小さな解錠の後に音も無く開かれる。
「それではセラフィア様、お食事の用意が出来ましたら声を掛けさせていただきます。
それまではお身体をお休め下さい。」
「ええ、ありがとう。」
「勿体無いお言葉でございます。」
パタン…
そんな会話の後、部屋に入ってきたのは湯浴みを終えたセラフィアだった。
ポスッ
「ふぅ…、…………。」
自室のベッドに身を投げるように腰かけると自然と出てきたため息に、セラフィアは漸く自分の緊張が解けたことを自覚した。
「勇者」の活躍により「本来より遥かに少ない犠牲で済んだ」とは言われたものの、初めて戦の惨状を目の当たりにして心が不安定になっていたのだろう…とセラフィアは自身を省みた。
(…明日もう一度、お父様に理由を訊ねてみましょう…。)
謁見の間での自分の行動を振り返ると、自分は「父が母を幽閉した」という噂を聞いて冷静ではなかった。
…あれでは父が自分に何を言っても無駄と判断し、強引に引き離すという手段に出てもおかしい話では無い。
事実、おかげで落ち着きを取り戻したセラフィアは、父を「糾弾」するのでは無く「母を幽閉するに至った経緯を訊ねる」という考えに至った。
セラフィアのこの考えは、この後の“悲劇”を未然に防ぐ最後のチャンスであった。
しかし─
コン コン
「セラフィアさん今ちょっと良いかな?
…セラフィアさんに話さなきゃいけないことがあるんだ。」
「「勇者」様…!?
しょ、少々お待ちを…!」
バタバタ
─そのチャンスは“例外”となる異世界の「勇者」により、ふいにされることとなる。
バタバタ、カチャ…
「あの、お話とは…?」
「セラフィアさん達には、僕がこの世界で起こることがある程度分かる話をしたと思うけど─」
「勇者」…渡が言っているのはいわゆるゲームの知識なのだが、渡が「ある程度」と言ったのは既にゲームのシナリオから外れていることを体感しているため。
しかし元よりゲームシナリオの悲劇を未然に防ぐべく行動する渡は、〈魔剣・ソウルイーター〉の入手などにゲーム知識を利用するものの…ゲームシナリオからの乖離をあまり気にしない傾向があった。
ゲームシナリオに無かった「世界的な不作」や「戦」などの出来事は、渡に取っては「ゲームシナリオの裏で起こっていた出来事」という認識でしかなかったのだ。
そしてこの世界を現実としながらも、自分が関わっていない部分はゲームシナリオ通りに進行すると疑わない渡は語る。
ゲームではセラフィアを仲間にする以前に崩壊してしまっていた〈勇者教国〉が、何故崩壊に至ったのか?その原因を…。
「そんな…!?
宰相が悪魔に成り代わられていて、お父様がその悪魔によって傀儡にされているだなんてっ…!」
渡の言葉を否定したかったセラフィアだったが、渡の話を事実だとすると母の幽閉や謁見の間での厳しい態度などの辻褄が合ってしまう…合ってしまったのだ。
渡の話が事実であれ虚偽であれ、渡以外が言えば不敬罪で首を斬られたことだろう。
しかし「勇者」を奉じる〈勇者教国〉において、既に実績のある渡の言葉は重かった。
「残念だけど…、これ以上大変なことになる前に悪魔を討つしかない。」
悪魔に傀儡にされたということは、既に父王の魂は失われてしまっているということ。
そして傀儡の主である悪魔を討つということは、傀儡にされた父王も屍に戻るということ。
「あぁっ…、お父様ぁ~…!」
既に父が失われていた悲しみと、傀儡となった父と対峙しなければならない哀しみに、再び泣き崩れてしまうセラフィア。
そんなセラフィアを咄嗟に「勇者」が支えるが、セラフィアは「勇者」の腕の中で一晩中涙を流し続けるのであった。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
翌日。
王により暫くの謹慎を命じられた「勇者」一行。
表向き「勇者」一行は王の命令に従う振りをしつつ、裏ではセラフィアの伝手を辿り「勇者」を旗印とした「解放軍」の組織が着々と進むのであった。
…それ「(掠れて読めない)」って言うやつじゃ?
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