246 変わらない関係
連続投稿〆!
行きはギルドの荷馬車に便乗したが、帰りは徒歩のため行きより日数がかかる。
更にソーナとカティアという旅慣れしていないメンバーがいることもあり、帰還の旅路はゆっくりとしたものだった。
そして何度目かの野営にて。
「ラスト、テントの設置終わったわよ。」
「ラスト君、このスープ…どうかな?」
しかし自分たちのせいで足が遅くなっていることを察したのか、積極的に仕事をこなすソーナとカティア。
ソーナは料理以外はわりと何でも卒なく熟し、カティアは力仕事はやや苦手なものの料理は野営とは思えない絶品だ。
しかしソーナとカティアが仲間に加わったことで、俺には個人的に気になることが出来ていた。
それが─
「ご主人、薪持って来た。」
「おっ、ニーニャさんきゅ。」
─この、ニーニャの俺の呼び方である。
奴隷にされていたことの名残か、ニーニャを保護した時にはもう「ご主人」呼びであったが、訂正しようとしたら悲しい顔をされて以降このままであった。
しかしニーニャが俺の嫁となった今、嫁を対等に扱いたい俺としては上下関係を示す呼び方はさせたく無いのだ。
…まぁ、美女や美少女に「ご主人様」と呼ばれるのは男の夢であることは十二分に理解出来るが…。
ジー…
「…どうしたの、ご主人?」
俺はどうやらニーニャを無言で見つめてしまっていたらしく、訝しんだニーニャが俺に訊ねてきた。
「ん?何、大したことじゃ─
いや、ニーニャが俺の名前を呼ばないな…とふと思ってな。」
俺が独りで考えを捏ねくり回しても録なことにならないのはニーニャへのやらかしで分かったことなので、俺はこの際素直に「ニーニャの俺の呼び方の理由」を尋ねることにした。
「「─っ!?」」
俺がニーニャに呼び方について尋ねた瞬間、何故かソーナとカティアが反応したような気配がした。
「ん?んー…。」
意外なことを尋ねられたというような反応をしたが、すぐに考え込みはじめるニーニャ。
そして俺の疑問に対するニーニャの答えが─
「ご主人は私のご主人だから…?」
コテン
─というもの。
「???」
当然俺にはさっぱり分からん。
「ああもうっ、あんたたち見てらんないのよ!?」
と、何やら焦れたソーナが、俺にニーニャの言葉の意味を教えてくれた。
獣人の女に想い人が出来ると男を誘引する「求愛臭」を発するようになるというのは記憶に新しいが、他にも獣人種には「運命の番」とやらが存在するらしい。
しかしこの「運命の番」はそれと分かるのが獣人種のみであるにも関わらず、獣人種だけでなく全人種が対象らしいというのだから驚きだ。
更に既に相手が居る場合は「運命の番」と出会っても分からなくなるらしく、獣人種の成人年齢から考えると…「運命の番」に出逢うことがどれ程稀なことか。
実際、あまりの実例の無さに半ばお伽噺と化していたらしいが、街に出た若者から「運命の番」と出逢ったと猫人族の村に連絡があったそうだ。
「それが呼び方にどんな関係が?」
俺がニーニャの「運命の番」らしいということは分かったが、番であればこそニーニャが俺を頑なに「ご主人」と呼ぶのはおかしいのでは?
その俺の問いに対するソーナの答えは─
「「運命の番」に捨てられないように媚びてるんじゃない?」
─であった。
言い方は良くないが、俺も的を射ていると思う。
結局は〈従属の首輪〉により命令に逆らえない奴隷であっても、元より従順な者と反抗的な者とでは…やはり従順な者の方が選ばれる。
また従順な奴隷は法で定められている以上に待遇が良いことが多々あるように、人は自らに従順な相手に悪感情を抱くことは滅多に無い。
「運命の番」が異種族であった獣人種は自ら従順さを示すことで、番関係になれなくとも最低限の“側に居ることを許される関係”になれるようにしているのだ…多分。
ソーナの言った「捨てられないように」とはそういう意味なのだろう。
「…ニーニャは嫌じゃないのか?」
この質問は、今更ニーニャが俺に向ける好意を疑っての質問では無い。
ただ、「運命の番」という運命…つまり神々に決められた相手を好きにさせられるのは、自分の意思が歪められているようなものでは無いのだろうか?
「んー…、全然?
ご主人はご主人でご主人様じゃないから。」
「さっきは捨てられないように媚びてるって言ったけど、嫌なことは嫌って言えるみたいよ?」
ニーニャの言葉は先ほどと変わらず難解だが、ソーナの言葉である程度は納得した。
俺は異種族が「運命の番」であった獣人種の従順さを奴隷に例えたが、奴隷と違うのは自らそう振る舞っているということ。
奴隷でないのだから当たり前だと思うだろうが、「運命の番」が神々に決められたことならば〈従属の首輪〉より遥かに強い強制力を持つことだろう。
しかしソーナは「運命の番」相手でも拒否は出来ると言った。
そのことから俺は、獣人種の「運命の番」が他種族で言う「一目惚れ」のようなものでは無いかと思い至ったのだ。
獣人種は他種族より身体能力に優れているが、それは五感だけに限らない。
それこそ「野生の勘」というように非常に鋭い直感により、無意識で自分と最高に相性の良い相手を選ぶ…それが「運命の番」の正体だ!
「ん…、わたしのご主人はご主人だけだから…。」
モジモジ…
俺の出した結論にそう言ったニーニャは、珍しいことに感情を態度に露にする。
出逢った瞬間の無意識による強烈な一目惚れが「運命の番」。
俺がニーニャを保護しニーニャが俺を「ご主人」と初めて呼んだその時にはもう、俺とニーニャの関係はこうなることが決まっていたのだろう。
散々悩み回り道をした末に得た、神々の意思すら介在していない今の関係。
それこそがまさに、「運命」だったのであろう。
─ 完 ─
はい、ということで…
「やり切った~~!!」
感が半端じゃないですw
ラストがニーニャ以外のヒロインと次々に結ばれる中、「すわニーニャ離脱か!?」からのどんでん返し…如何だったでしょうか?
減っていくポイントに落ち込みつつ、上手く読者皆さま方を騙せていることに愉悦を感じた日々でした。
息抜きで始めたつもりの作品がここまで続くとは…、これも読者の皆さま方の応援あってのことです。
特に複数回の感想を頂いた方の存在が、この作品を読み続けて頂いている実感となり、執筆の原動力になりました。
ネタバレ防止で返信出来ないことがどれ程悔やまれたか…。(その旨を返信すること自体がもうネタバレですから。)
…まぁ、単純に返信のタイミングを逃したことも多々ありましたがw
なんか長々と最終話みたいな後書きになってしまいましたが、まだプロットの半分も過ぎてません。
実を言うと「ここで打ち切り」という考えが浮かばなかったわけではないのですが、本編は(作者的に)纏まりが良くても閑話の「勇者」side が半端過ぎて…。
まあ、一番は結局作者のモチベーションが保ったからなんですけどw
というわけで、↓以下いつものです。
いつも読んでいただきありがとうございます。
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次章もお楽しみに!




