243 黒幕
ネタバラシ回です。
朝から変態…もとい大変なことが決まったが、…取り敢えず今日から仕事である。
これは決して仕事に逃げたのでは無く、依頼として受けた仕事なので…たとえもう俺が監督する必要など無くとも1人足として働く所存だ。
(…ま、「嬉しい悲鳴」ってやつだな。)
朝はマリ姉の勢いに圧されて「『魔化の呪い』を抑えるため」という理由に気付けなかったが、理由がはっきりしたことで変な遠慮をせず存分にアデリナとイチャイチャ()できるというもの。
確かにアデリナが乗り気になった理由に思い至った時は少しガッカリしてしまったが、それがアデリナの魅力の一つでもある。
今晩の相手であるアデリナのことを考えながら歩けば、あっという間に目的地に到着。
(ボスは…っと、居たいた。)
このまましれっと仕事に交ざっても構わないのだろうが…昨日は療養で休んでしまった手前、今日から復帰すると一声掛けておいた方が良いだろう。
「よおボス、俺の仕事はあるか?」
見つけたボスの背中に、俺はそう冗談めかして訊ねながら歩み寄る。
「おうラストか、身体は大丈夫か─ッ!」
俺の声掛けにボスが振り返りながら応えるが、その言葉が途中で止まってしまう。
「ん?どうかした─」
「おい、お前!」
タタタッ
何があったのかボスに訊ねようとした俺であったが、俺が来たことを感知したクソガキが早速俺に絡もうと駆けて来た。
「はぁ…。」
(面倒だな…。)
そもそもコイツがニーニャにベタベタしなければ、俺はニーニャに酷いことをせずに済んだ。
清々しいまでの責任転嫁なことは理解しているが…こうもしつこく絡まれると、少しくらいなら苛立ちをぶつけても良い気がしてきた。
しかし万が一…いや、億が一まともな用だったら俺が悪者になってしまう。
「チッ、何だよクソg─」
クン…
「…ッ!?」
ビタッ!
俺は舌打ちをして不機嫌全開でクソガキの用件を聞こうとしたのだが、その手前で父親同様に驚愕の表情を浮かべてクソガキが急停止してしまう。
まさか今更、俺の威嚇に恐れをなしたわけでも無いだろうに何故…?
(まるでバケモノになってしまった気分だな…。)
「……だ…。」
…などと密かに落ち込む俺であったが、クソガキが何やら呟いている。
「─がまさか…─と、こいつと──なんて…。」
何とか聴き取ろうとするも、肝心なところが聴き取れ無い。
(くそっ…、もうちょいハッキリ喋れよな!)
そう内心で悪態を吐きながら、俺は目を閉じて耳に集中する。
その瞬間─
「ウソだぁああぁ~っ!!」
ダッ!
「ッ…!」
─そう叫ぶと、涙を流しながら走り去るクソガキ。
キーン…
「…何だってんだよ、全く…。」
「あちゃー…、やっぱり駄目だったか。」
クソガキの叫び声で耳をやられた俺に近付いて来たボスが、クソガキの走り去った方を苦笑しながら見て呟いた。
「なあボス、どういうことなんだ…?」
どこか納得した雰囲気のボスに、何が何やらさっぱりの俺は事情説明を求めた。
するとボスはニヤリと口だけの嫌らしい笑みを浮かべると─
「ラスト、お前ニーニャとヤっただろ?」
─言葉としては疑問形ではあったものの、そう断言したのである。
「っ!?」
(何故…!?)
俺の反応を見て、ボスは自分の見立てに間違い無いことを確認したのだろう。
トントン
「忘れたのか?俺らは狩猟の一族だぜ?
ワン公ほどじゃ無いが、“鼻”は利くんだぜ?」
俺の心の疑問を読んだかのように、自分の鼻を指したボスが得意げにそう言った。
(な、なるほど…。)
「…ん?てことは…。」
俺はボスの言葉に納得すると同時に、とあることに思い至りボスに視線で尋ねる。
…出来れば「違う」と言って欲しい。
「ん?…ああ、勿論お前がニーニャ以外の3人とデキてるってのも最初から分かってたぜ。」
(Oh…、マジか。)
つまり俺たちが夜の営みを控えようが、俺たちの関係は村中にバレバレだったということだ。
…まぁ、それならそれで「俺の婚約者達に余計なちょっかいを出されずに済んだ」と考えよう。
しかしそこでふと、ボスが先ほど言っていた言葉を思い出す。
「………ん?今「ニーニャ以外」って言ったか?」
「おう、言ったぞ。」
それはおかしい。
鼻…つまり匂いで俺とマリ姉達3人の関係が分かったのならば、俺たちの行為に混ざっていたニーニャも俺とそういう関係だとは思わなかったのか?
「あー…、確かにお前とニーニャも互いの匂いが混ざってはいたんだ。
だが─」
そしてボスが言うには、俺とニーニャに付いていた互いの匂いは「家族以上恋人未満」であったらしい。
恋人より家族が関係としては上ではないかと俺は思うのだが、ボス曰く「それがヤるかヤらないの差」とのことだ。
しかしこれらは状況証拠でありボスが俺とニーニャの関係を確定したのは、クソガキに連れて行かれたニーニャが連れて行かれた先のボス宅にて、村のマッチングおばs…恋愛マスターであるボスの妻に俺とのことを相談していたのを見かけたかららしい。
そして状況を更に厄介にしたのが、獣人の女が好きな相手が出来た際に発するようになる…通称「求愛臭」(発情臭とは言ってはいけない)というもので、花のような甘ったるい匂いが意中の男以外も引き寄せてしまうらしい。
(ん?花のような甘い匂い…?)
これに元からニーニャが好きであったチャトランが反応してしまい、好きな相手と結ばれて欲しいボスも黙認した。
ニーニャの想い人である俺はニーニャの「求愛臭」に鈍く、基本的に「押せ押せ」の獣人の求愛も効果が薄い。
これには流石の恋愛マスターもお手上げであり、悩んだ末にボスの提案した「押して駄目なら引いてみる」作戦が採られた…とのこと。
「ほ~………って、お前のせいかぁああぁ~っ!」
結果的に作戦に嵌まった形になったとはいえ、俺が潔い男だったら終わりだったぞ!?
(あ、ボス的にはそれを狙って…?)
「まぁ落ち着けって。
結果ヨシなら全てヨシ!なんだぜ?」
そう言ったボスは、片足を上げて右手で前を指さす変なポーズをとる。
「それ多分ダメなやつだろうが!」
この後、滅茶苦茶安全に作業が捗った。
やはり貴様が黒幕か…!
ボス「俺の毛柄は黒じゃなくトラ三毛なんだぜ!」
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