240 コワレル関係
※冒頭部分が前話後半(スラスト復活あたりから)に重なります。
ラスト「これは後から聞いた話なんだが─」
俺がソーナに悶々として、ニーニャとの関係を色々と考えていた時。
…
… … … …
… … … … … …
「ニーニャ!」
またもや父親に無理を言って救出隊に付いて来たクソガキが、他の救出隊より大分遅れて合流した。
キョロキョロ…
「…ニーニャ!?」
合流したクソガキは先ず辺りを何かを探すように見回し、〈ヤク〉の背に載せられたニーニャを発見する。
タタタッ
「ニーニャ!」
ニーニャを載せた〈ヤク〉の元へと駆け寄ったクソガキ。
そして次の瞬間─
ズル…、ドサッ!
「あぁっ!?」
─簀巻きにされたニーニャを〈ヤク〉の背から降ろそうとしたクソガキであったが、脱力した人1人は意外と重く…結果手を滑らせたクソガキは簀巻きのニーニャを落としてしまう。
「ニーニャ大丈夫!?…ニーニャ?」
慌ててニーニャに安否を確認するクソガキであったが、睡眠薬により深く眠らされたニーニャは応えない。
「ねぇ助けて!ニーニャが目を覚まさないんだ!」
焦ったクソガキは、スラストの治療後ダマルに最低限の処置をしていたアデリナに助けを求める。
グイッ…
「これは…、大丈夫ですから落ち着いて下さい。
─────、『全状態回復』。」
パァ…!
求めに応じてニーニャの容態を確認したアデリナは直ぐにニーニャが眠らされていることを見抜き、ニーニャにすがりつくクソガキを引き離して神請魔法を行使した。
“睡眠”状態ならば『奮起』で十分。
にもかかわらずアデリナが“呪い”を除く全ての状態異常を回復する『全状態回復』を使用したのは、「起きて動き始めたら効果を発揮する毒」等の罠を警戒したとのこと。
この話を聞いた時、俺は「世の中には変な毒もあったものだ」と思ったのであった。
… … … … … …
… … … …
…
─ 現在 ─
「…、ッ!?」
シュバッ!
「うわっ!?」
アデリナの『全状態回復』は正しくその効果を発揮し、異常を感じたニーニャが飛び起きる。
サッ
簀巻きから抜け出したニーニャは、状況を把握するために周囲に素早く視線を巡らせ─
パチリ
「…え?」
「あ…。」
─ネグリジェ姿のソーナを抱いて、ソーナと同じ毛布で包まっている俺と目が合った。
目が合ってしまった俺とニーニャは、互いの時だけが止まったように動けない。
「ニーニャ!」
ガバッ!
「あぁ…、無事で良かった…!
…さあ、帰ろう!」
… … … … … … …。
… … … …。
…。
翌朝。
結局あの後直ぐに撤収となり、ニーニャはチャトランに連れられて行ってしまった。
そして俺が今朝起きた時にはアデリナが俺の様子見に残っていたものの、他のメンバーは既に出払った後であった…。
俺は大事を取ったアデリナに「今日1日の絶対安静」を言い付けられたが、村全体の雰囲気は昨日と変わらない。
とても夜中に誘拐騒ぎがあったとは思えないが、誘拐が未遂かつ犯人は捕まったか死亡している以上、多くの村人達に取っては「既に終わったこと」なのだろう。
死亡したジャムールの装備や持ち物は全て俺に権利があるのだが、回収の手間賃として弾け飛んで消失した腰当て以外の防具はボスに渡すことにしよう。
可能なら〈白の大樹〉で使用したいくらいには上質な硬革の一式だが、サイズが合うメンバーがいないので仕方ない…。
しかも小憎たらしいことに隠密仕様なので、狩りに大いに役立つことだろう。
…………………。
…………。
…。
昼を過ぎた。
「暇だ…。」
そうポツリと呟く、ベッドの上の俺。
昼食のために一旦戻って来たマリ姉達が俺の様子を見に来たが、1人につき一言二言交わしただけだ。
回収されたジャムールの装備や持ち物の検品も昼前には既に終えており、いい加減ベッドの上に居るのが苦痛に感じてきた。
ジャムール戦で負った怪我は元より、久々の畑仕事で出来たマメの1つすらも〈エリクサー〉で完治している。
それにこうしてベッドの上に座っている限りでは、貧血でふらつくような感覚も全く無い。
「………よっ、…と!」
(…うん、平気だな。)
ベッドから降りて立ち上がってみるが、俺は特に不調を感じなかった。
むしろ身体に問題が無いにもかかわらず半日以上ベッドの上だったことで、身体…特に足腰の感覚が変に鈍っている。
「…明日いきなり動くのも怪我の元だしな。」
(その辺を少し散歩するだけだ、バレやしないさ。)
リハビリを建前とした俺は、暇に堪え兼ねて外へと繰り出した。
…もし俺がきちんとアデリナの言い付けを守っていたのなら、あんなことにならずに済んだのだろう…。
……………。
………。
…。
ポカポカ
(良い天気だ。)
外へ出るとここ最近では一番の陽が、俺を歓迎するように暖める。
遠くの畑を見遣れば、俺が居らずとも猫人族の村人達が畑の再生作業を進めている。
(このペースなら、あと1週間も掛からなそうだ。)
無事に今年の作付けに間に合いそうで、無事依頼を完遂出来そうで一安心の俺。
しかし作業が完了するということは、俺たちがこの村に滞在している理由が無くなるということ。
(大分馴染んだよなぁ…。)
実際のところ1週間と少しの滞在であるが、この村を訪れた初日の警戒は何処へやら。
村外れに建つ俺達が仮宿にしている空き家が、ボスを始めとする猫人族の村人達が俺たちを警戒していたことを示す名残だ。
「…ん?」
(あれは…、チャトラン?)
そこで俺はふと、村人達が焚き付けの小枝を拾いに行く森の入り口の木陰に、チャトランの姿を見つけた。
「チャトラン1人でどうした?」などとは、俺は思わない。
ただ…、村人が総出で畑の再生作業を行っている今、あんな人の目が届きにくい場所に2人でいる理由が気になる…というか良い予感がしない。
「ニーニャ!
僕…いや、俺…絶対アイツより強くなって見せる!
…だから冒険者なんか辞めて、その…。
俺と結婚してくれ!」
案の定、バカデカい声でニーニャにプロポーズをするチャトラン。
(くそっ…!)
チャトランがニーニャに求婚しやがったのも勿論気に入らないが、完全に木の影に隠れてニーニャの反応が見えないことが擬しくて俺は苛立つ。
「───。」
ニーニャの声が微かに聴こえてくるも、俺の耳では何と言っているかまでは聴き取れない。
「ニーニャも分かってよ!
アイツが好きなのはアイツの仲間の他の女の人みたいな、おっぱいの大きい人間種の人なんだよ!?」
(おい馬鹿、ヤメロッ…!?)
確かにマリ姉もアデリナもリタも、クソガキの言うようにおっpゲフンッ!…「胸の豊かな人間種」の美人だ。
ただ…俺と好き合った女が偶々そういった身体的特徴があったというだけで、そもそも俺は「選ぶ側」ではないと昨日再確認したばかりではないか。
一体誰に必死に弁明しているかは分からないが、ここで弁明しておかないとヤバいと俺の勘が囁いている。
それはともかく、チャトランが言っていることの全てが間違っているわけでもないのが厄介だ。
人間種の上流階級には「人間種至上主義」という考えがあるのは知っての通りだが、そこまで極端ではなくとも「異種族との婚姻」に忌避感を覚える者は…種族問わずに多いのが現状だ。
「───。」
一部真実を含むチャトランの言葉に、ニーニャがどう返したのかは分からない。
「ニーニャ、ッ!」
徐に両手を伸ばしたチャトランが、ニーニャに歩み寄る。
そして次に俺が目にしたのは─
「そんなっ…!?」
ガサガサッ、ドサッ…
─チャトランに肩を抱かれ、口付けを交わしながら茂みの向こうへと押し倒されていくニーニャの姿であった。
ニーニャ争奪戦 〔 game set 〕(←!?)
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