200 悪人ノ十八番
祝!本編200話!!
「誰だてめぇら!」
と凄む灰髪男だったが、次の瞬間。
パァアンッ!
灰髪男の背後の壁が弾ける。
作戦通り、ニーニャの狙撃だ。
「『魔弾』ッ!」
ドシュッ!
「ぐわぁああっ!?」
ニーニャと同時に突入してきたらしきマリ姉は、作戦とは異なるが出の早い『魔弾』で早速1人をふっ飛ばした。
「魔法使いもいやがるのか!?」
「くそっ、貴族の私兵部隊かよ…!」
作戦とは異なるものの、人がふっ飛ぶというのはインパクトが強い。
作戦通りに傍らに火の球を浮かべて見せるより強烈に「魔法使い」の存在を知らしめることができ、敵を1人減らすオマケまで付いてくる。
急拵えで拙い作戦であるという自覚はあるが、俺よりも更に短い僅かな時間でより効果的な行動に変更するとは…。
さすがはマリ姉、略して「さす姉」だ。
そして外してしまったとはいえ、ニーニャの狙撃も十分以上の効果を見せる。
「っ…!?」
奇襲だと即座に状況を把握した灰髪男だったが、背後から音がしたことで気を取られ一瞬ではあるが振り向いてしまう。
状況把握能力の高さが災いした形だ。
「『猪突猛進』っ!」
ダッ!
その隙を突いて、俺はまず武器スキルを発動。
他の奴らがまだ状況の把握ができていない今、灰髪男を倒して更に混乱に拍車をかける…!
しかし今度は正しく発揮される、灰髪男の状況把握能力。
「このっ…!」
ドンッ!
「キャアッ!?」
初めて見る『猪突猛進』を突進系スキルと瞬時に見抜いただけでなく、迫る俺に向けてキャサリンを突き飛ばしてきたのだ!
「くっ…!」
グリッ…!
俺は無理矢理身体を捻ってキャサリンを避けたが、灰髪男の方が一枚上手だった 。
「はっ!」
バッ!
キャサリンを突き飛ばしたことで動けるようになった灰髪男は、俺の槍が届くギリギリで飛び退く。
ドスッ!
標的を失った俺の槍の穂先は、その先にあったソファの背もたれを貫く。
ゴロゴロ…、パシッ!
俺がソファから槍を引き抜く間に、灰髪男は投擲斧を手にして戦う態勢を整えてしまった。
ベシャ…!
「ンギャ!?」
灰髪男に突き飛ばされていたキャサリンが、地面と熱烈なキスをして変な声を上げる。
チラッ
思わずそちらをチラ見してしまう、俺と灰髪男。
ここで先に動いたのは、灰髪男。
「おいサブッ、いつものだ!」
ヨロ…
「へ…、へい。」
灰髪男が怒鳴ると、マリ姉の『魔弾』を受けてダウンしていた男が、フラフラとした足取りで何処かに向かう。
(あんなトコにまだ部屋が…!?)
部屋の外から覗いた時は丁度見えない位置だったのか、ソファの後ろ…ニーニャの外した狙撃が当たった部分の下側に偽装された出入り口があった
拐われた筈だが見えない“緋色”と、灰髪男の発言からして俺はある予感がした。
「行かせるもんかっ!」
「リタさんっ、待って…!」
俺と似たようなことを考えたのか、灰髪男にサブと呼ばれた男に追撃を仕掛けようとするリタ…と突出するリタを止めようとするアデリナ。
「おっと、行かせねぇ!」
「いつもの」とやらがよほど重要なのか、マリ姉とニーニャに牽制されていた2人の内1人がリタの妨害に動いた。
となれば当然…
パシュッ!
「がぁっ…、ッ!」
(マジかよっ…!?)
ニーニャに大腿を撃ち抜かれた盗賊 Cだったが、根性でリタに肉薄。
そして─
ガギンッ!
「くっ、うぅ…」
グイグイ…
「へっへっへ…」
レイピアで盗賊 Cの斧を受けるリタだが、盗賊 Cは斧刃の鉤状になった部分でリタのレイピアを絡め取ろうとする。
「くっ、近すぎる…!」
「むぅ…!」
マリ姉とニーニャはリタへの誤射を恐れて手が出せず、アデリナもメイスを上げては下げと躊躇っている。
「余所見とは、余裕だな?」
「っ!」
ガッ…!
リタのピンチについ気を逸らしてしまった俺を嘲るように、声を掛けながら行われた灰髪男の攻撃を盾で防ぐ。
(ちっ、間合いが…。)
初手で自ら突っ込んでいて言うのもおかしいことだろうが、こうも狭いと槍の長所であるリーチの長さが途端に枷となる。
…とはいえ、灰髪男の武器である投擲斧は使い捨てが基本。
一度盾で防いだだけで刃が欠けるのでは、灰髪男はいずれ武器を失うことになるだろう。
それまでは持久戦の構え─
「…ゃ!……してっ、離しなさいよっ!」
─とはいかなさそうだ。
「カシラぁ~、連れて来ましたぜ…。」
マリ姉の『魔弾』で元々ダメージを受けていたとは言っても、何故かそれ以上に消耗している様子のサブ。
「おう、寄越せ。
…オラッ、暴れんじゃねえ!」
「痛っ!」
その原因をサブから分捕った灰髪男は、羽交い締めにした緋色を掲げるように見せつける。
「おーし、お前ら武器を捨てろ。
この女が傷モノになっても良いのか、ん?」
俺たちが自分の言葉通りにすることを疑わず、ニヤケ面を浮かべる灰髪男。
「た、助けて…。」
気色悪い笑みの灰髪男の人質となったベアトリスは、先ほどの威勢が嘘かのように怯えた声で助けを求めた。
「………。」
灰髪男とベアトリス。
この2人から相反する要求をされた俺は、表面上は難しい顔をしながらも─
(う~ん…、どうすっかなぁ。)
─内心では、食事処で注文するメニューくらいの気楽さで悩んでいたのであった。
キリ話なのに締まらぬ。
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