199 一気呵成
滑り込みで1人だけ回答者がいたので、エーミール構文はナシになりました。
灰髪男が抱いている女の後ろ姿。
顔は見えないが、あの金髪の成り損ないのような薄い茶色の…農村の女としては長過ぎな腰まで届く髪。
その毛先から半ばまでは弛く波打っているが、実はあれは街で見掛けた貴族令嬢の真似をしようとして失敗した名残であるというのを、独り言の愚痴を偶然聞いてしまった俺は知っている。
(…まぁ、見てくれだけは良かったからな。)
性格はともかく、あの糞との婚約が決まった時なんかは、付近の村一番の美男美女夫婦だなどと話題になったものだ。
「あ…、う…。」
「も…、ゃぁ……。」
「痛いよぉ…、グスッ…。」
「あんっ、あっ…もっとぉ…」
いや…あの性格だからこそ、他の拐われた女達のように心を壊さずにいられるのだろうか?
というより、暴力を振るわれた形跡が見当たらないなど、他の女達と比べて随分と待遇が良さそうだが…?
「…ふんっ、旦那がいるくせに淫乱な女だ。」
「やぁん、わたしを拐ったのは貴方のくせにぃ~。
それにぃ、痛いのはイヤなのよぉ~。」
「…ま、素直な女は嫌いじゃねぇ。」
声を聴いて確信したが、やはり灰髪男が抱いている女は兄嫁だったようだ。
結婚前から糞兄と会えば必ずと言っていいほど物陰で盛っていたが、まさか盗賊に自ら進んで股を開くほどとは…。
自分の容姿が程々に優れていることを自覚しているあの女の、趣味と実益を兼ねた処世術でもあるのだろう。
しかしそのせいで頭が茹で上がった糞兄に身一つで追い出された俺には、納得のいくものでは無い。
無い…のだが、家を追い出され街で冒険者となったことで今があると考えると毛の先ほどは感謝するべきか?
「(ラス君、2人が来るわ!)」
等と作戦の共有を終えた頭で考えていたら、いよいよ服を着終えた次の見張り役の盗賊2人が扉に向かって来たようだ。
「(良し…皆、作戦通りに。
先に出てきた奴は任せるぞ、リタ。)」
「(ハイッ!)」
大任を任されたリタだが、当人はプレッシャーなど何処吹く風。
むしろ大任を任された喜びに、幻影の尻尾が激しく振られている。
「(…アデリナ、万が一のフォローは頼むぞ…!)」
「(っ…、はい…!)」
癒し手であるアデリナに盗賊といえど「人を殴れ」と言うのは酷だが、「実は悪事に一切加担していない」ということが無い限り、アデリナの持つメイスが触れるだけで痺れて無力化させられるだろう。
そうして出てきた1人を討伐ないし無力化すると同時に、後に続くであろうもう1人を倒しながら突入するのが俺の役割だ。
ニーニャは俺の次に突入&発砲で、更に1人を倒すのが理想ではあるが魔猟銃という武器がこちらにあると見せるだけでも牽制になる。
牽制のメインはマリ姉の『火球』だが、これは本当に牽制に見せ付けるだけだ。
『火球』は攻撃魔法として最もスタンダードであり分かり易いが、洞窟内などの狭い空間では自分たちまで巻添えになってしまう危険性が高い。
…仮に開けた場所であっても盗賊の近くに拐われた女達がいるため、爆発する『火球』は使いにくい。
それにマリ姉は俺を誤射して以来、若干「人に魔法を撃つ」という行為がトラウマ気味なのだ。
盗賊などのはっきりとした悪人に対しては「魔物と同じ」と割り切っていて平気なようなので、今回は『魔弾』や『魔力矢』で戦って貰うことになる。
「(来るぞ!用意…)」
ササッ
出てくる盗賊に気付かれにくいよう、洞窟の壁に寄って息を潜める俺たち。
ギイィ…
「……、ボソッ…(だいたい、カシラは気にし過ぎなんだよ。)」
「おいっ!?コソッ…(聞こえちまうぞ!)」
扉を開け出てきた途端に不満を溢す盗賊 Aに、盗賊 Aを咎めているようで同じような不満を持っていることを隠せていない盗賊 B。
見張りの交代に出てきた盗賊2人は発言から分かるように、アジトが見つかると思ってもいないようで会話に夢中だ。
これから見張りだというのに、随分と注意力の無い…。
だが、俺たちに取っては好都合だった。
(今だっ!)
サッ
ヒュッ!
俺の合図で素早く動いたリタのレイピアの切先が、盗賊 Aの喉を切り裂く。
「ごっ!?」
「ん、どうした?…早く行けよ。」
ドンッ
盗賊 Aの身体が邪魔になり、一瞬部屋の中からの光に照らされたリタに気付かない盗賊 B。
…グラッ
「え…?」
ドサッ…
力無く前に倒れる盗賊 Aに、背後から押した盗賊 Bは困惑の声を漏らす。
「お…おい、冗談はよせよ…!?」
他人から奪ってきて自分たちが奪われる側になるなど考えもつかないらしい盗賊 Bは、俯せに倒れてピクリともしない盗賊 Aを叱咤する。
「………。」
バッ!
このまま観察を続ける理由も無し。
障害も無くなったので俺は俺の仕事を果たすべく、奴が狼狽えている隙に暗がりから飛び出す。
「っ!なんグェ…!?」
軽装のリタようにはいかず気付いた素振りを見せた盗賊 Bだが、次の瞬間には状況を把握する間も無く俺の槍に突かれ即死。
しかし位置が悪く、このままでは板材の壁に激突コース。
だがここに至っては、最早もう構うまい。
「『シールドバッシュ』ッ!」
ドンッ!バキバキバキィイッ!!
見るからに脆い板材の壁は衝撃により木っ端微塵に吹き飛び、俺は盗賊 Bの死体諸ともにダイナミック入室。
「キャアアアアッ!?」
「敵だっ、構えろ!」
洞窟に響くキャサリンの悲鳴と、瞬時に襲撃だと把握した灰髪男の怒号。
(こいつ、出来る…!)
たかが Cランクが何か言ってらぁ
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