201 唸れ!俺の鉄(誇張)の爪!?
本編200話記念の連投!(&微増量)
※グロ描写注意!!
俺たちの前にこの盗賊団に挑んで壊滅したという、 Dランクパーティー4組20人の討伐隊。
何故彼らが壊滅に至ったのか、その最たる理由がこれだろう。
20人という大人数で拠点の捜索から行うとすれば気取られない筈も無く、もしかしたら盗賊団の奇襲もあったのかも知れない。
依頼に人質の救出などが盛り込まれていた場合、奇襲から立て直しても人質を害すると脅されては討伐隊にできることなど無かったことだろう。
人質を見捨てれば良かったと言う者がいるかもしれないが、 Dランク冒険者に「人質を見捨てる」という判断は酷というもの。
結果的にその方が被害が少なくなるとしても、依頼の評価が著しく下がる行動をその日暮らしな冒険者が取れる筈が無いのだ。
依頼人や冒険者達のそれぞれの都合があったとはいえ、よほど上手くいったのであろう。
ベアトリスを人質に取った灰髪男は、いまだに武器を手放さない俺たちを油断無く見ているようで…実のところ先ほどまでとは別人かのように隙だらけとなっていた。
「…聞こえなかったのか?
もう一度言う、武器を捨てろ!」
(俺たちにそれは無意味なんだがなぁ。)
壊滅した討伐隊の生き残りの情報がきちんと伝わったのか、俺たちの受けた領主直々の依頼では「盗賊団の討伐」が何よりも優先されている。
聞こえていようが理解していようが、俺たちが灰髪男の言葉に従う理由は無い─
ポイッ、ガランカランッ…
─のだが、俺は槍と盾を手放した。
「「っ…!」」
チラッ
俺の行動にアデリナとリタが動揺した気配がしたが、俺は視線で問題が無いことを伝える。
動揺しなかった二人の内、ニーニャは作戦に忠実に盗賊 Dを狙い続け、『魔力矢』を手に待機させ全体を牽制するマリ姉からは、俺の突飛な行動に呆れている雰囲気を感じた。
…まぁ事前に「人質は無視して盗賊の排除を優先」と、特にアデリナとリタに言い含めていたのが俺なわけで…。
だが、人質を取られたから灰髪男の言葉に従ったわけでは無い。
「だよなぁ…いくら頭数を揃えても、いくら良い作戦を立てても、いくら実力があろうが!
…お前らみたいなのは依頼が大事なんだよなぁ?」
しかし見事に自分の手に嵌まったと思い込んだ灰髪男は、悠々とソファに向かって歩きながら大声で俺たちを嘲笑う。
ポイッ
「ま…居場所がバレた以上、長居はしねぇさ。」
カチャ、シャリィンッ…
そう言いながら俺以外の〈白の大樹〉メンバーを舐めるように見た灰髪男は刃毀れした投擲斧を棄て、ソファの後ろにも置いてあったらしい真新しい剣を抜いて見せた。
スタ、ズリ…スタ、ズリ…
そして灰髪男は剣を突きつけたベアトリスを引き摺りながら、俺の正面まで近付いて来た。
「…だが手下を殺したテメェには、きっちりと“落とし前”つけさせねぇとな。」
その言い草や行動原理は、最初の印象に違わず裏の住人のそれだった。
こんなのを兵士として採用するなど、〈カクタス〉の代官は何を考えているのか…。
「安心しな、死ぬのはテメェだけだ。」
グワッ
天井スレスレに振り上げられる剣。
そして剣が振り下ろされる─直前。
「ま、女は一通り味見するがな。」
(今だっ!)
視線から分かり切っていた灰髪男のゲスな言葉を聞き流し、俺は右腕を槍に見立ててスキルを発動。
「『猪突猛進』っ!」
ドッ…!
「ぐっ…!?」
俺のピッタリと揃えた指先が、スキルの加速を持って灰髪男の胸板をド突く。
ボキボキッ!
「くっ!」
しかし、厚い胸板と指先ではどちらが丈夫かなどは明白で、俺は指の骨が折れる痛みに歯を食い縛る。
ゴリゴリッ、ブツッ…
「おぉ、っ…」
俺の掌が粉砕されてもスキルの加速は止まず、激痛を訴えてくる右腕に何かを突き破った感触が伝わる。
ズズズ…
「がぁああっ!?」
それがまさに“皮を切る”感触だったのか、灰髪男の胸板にめり込んでいく俺の腕。
右手首の先の感覚が無くなった俺に対し、胸を突かれる灰髪男は断末魔の叫びを上げる。
ズズ…、ズボッ!
スキルの効果が切れたのは、俺の腕が灰髪男の身体を貫いたのと同時だった。
「ゴボッ、ごっ…!?」
ズルッ…
血の塊を吐き、体勢を崩す灰髪男。
ガシッ
「きゃっ…!?」
ドンッ…
崩れ落ちる灰髪男の腕から人質を回収し、俺は灰髪男を軽く蹴飛ばす。
ズルル…、ドサッ…
そうしたことで灰髪男は後ろに倒れ、灰髪男の身体を貫いていた俺の腕は自然と引き抜かれる。
「ひっ…!」
カクンッ…
「おっと…!?」
胸にポッカリと開いた穴から大量の血を流す灰髪男の死体を見て、そのあまりにもスプラッターな光景に気絶してしまうベアトリス。
「そんな…、カシラが…。」
「ウソだろ、おい!」
灰髪男が倒されたことで、サブと盗賊 Cは絶望的な表情となる。
「…よくも頭をっ!」
パシュッ!
そして無謀にも俺に襲い掛かろうとした盗賊 Dは、灰髪男を撃ち損ねてからずっと、狙いを定めていたニーニャがきっちり仕止めた。
2対5…しかも片方は大腿から出血が止まらず、サブに至っては無手で『魔弾』のダメージもある。
戦力で圧倒的不利なことに加え、灰髪男の死に様を目撃した盗賊2人は投降の意思を示した。
だが、ここで困ったことになった。
〈白の大樹〉の戦闘員は実質4人で、その内1人は完全な後衛だ。
更に拐われていた女達を保護しつつ帰還することを考えると、明らかに手が足りなくなる。
依頼は盗賊団の“討伐”なので降伏を受け入れる理由は無いのだが、アデリナとリタが嫌がるだろうし…俺としても今はこれ以上気分の悪くなることは勘弁だ。
「ま、待った!オレっちは色々知ってるぜ!?」
そう言って命乞いしてきたのはサブ。
こいつは灰髪男の副官的な立場だったらしく、一味の隠し財産の場所やアジトの場所を知っていると言う。
(1人くらいなら…、まぁ…。)
だが1人を生かすとなると、ますますもう1人を殺しにくくなる。
「あ、あの…」
と、拐われていた中で比較的無事だった女が、おずおずと頼みごとをしてきた。
なんでも…盗賊 Cは拐った女達を一番手酷く扱っていたらしく、その恨みを晴らさせて欲しいとのことだ。
「そういうことなら、まぁ…。」
「その裁きで貴女方が救われるのでしたら…。」
この訴えにはリタとアデリナも頷かざるを得ないようであった。
…まぁ、アデリナが治療を施さない時点で盗賊 Cの死は近いと決まっているので、あとは死に方が違うだけだ。
… … … … … … …。
… … … …。
…。
そういうことで盗賊の1人を捕らえ、使えそうな武器や道具、食料に保護した女達を荷車に乗せてスマト村に帰還したのであった。
…………、盗賊 Cの死に様?
…………、…………。
…あれは男として口にするのも悼ましい最後だった、とだけ。
……まぁ、やってきた事が“事”なだけに同情はしないが…。
精々…マリ姉たちを本気で怒らすことの無いよう、戒めとさせてもらうことにしよう。
灰髪男の倒し方、それ敵側のやり方なんよ。
例 三倍速い茹で蟹 凸<ケチョン、ケチョーン
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