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春夏秋冬サヨナラ、マタ…  作者: 月嶋歩夢
【第二章】夏、キミを想う
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第7話 鼓動

 僕はしばらく動けなかった。

それは驚きではない。

細かく揺れるカーテンに、視線を奪われ、心の奥に、わずかな圧迫感を覚えたからだ。


 長く伸びる髪は、影のはずなのに、毛先がかすかに輝き、スカートは妖艶に揺らいでいる。

目を離せば、消えてしまいそうな、繊細さを感じた。


風が吹き、カーテンがふわりと大きく揺れ、影も大きく歪んだ。

その瞬間、影がカーテンから離れ、廊下に影を伸ばした。


「待って!」


 僕は影に向かって叫んだ。

この影に見覚えはない。

それなのに、逃してはいけない気がした。


 影は僕の声に応えることなく、廊下の奥に向かう。

まるでスキップをしているかのような、軽やかな足取りだ。

ふんわりと揺れる髪とスカートの影が、廊下の床を跳ねるように進む。

僕はその影を追いかけた。


 影は止まることなく進む。

階段を降りたと思ったら、別の階段を登る。

目的地がない追いかけっこを楽しんでいる。


はぁ……はぁ……

 

 追いつかない。

影は軽やかに、距離を広げていく。

心臓が内側から押し出されるように脈打つ。


息が——苦しい。


 僕は階段の隅に座った。

鼓動が一定のリズムを奏でている。

目の前が揺れ、気持ちが悪い。


「こんなに走れなかったっけ?運動不足かな……」


僕は目を閉じ、深く深呼吸をした。


 しばらくすると、廊下から足音が響いた。

ダッダッダッと荒く、無秩序なリズムで、どことなく焦りを感じる。

僕は目を開けず、その音に耳を澄ませた。

まだ、鼓動が安定していないのもあるが、僕しかいないと思っていた学校に、人がいるかもしれない。

それだけで、少し安心した。


 音はだんだんと近づいてくる。

たまにキュッと上履きが廊下を擦った音が聞こえる。

相当焦っているらしい。


キュッ!

 

 突然、足音が止まった。


「あっ!」


 僕はそっと目を開き、目の前にいる人物に目を向けた。


「やっと見つけたよ。全然見つけてくれないから、ワタシから探しちゃった!」


 その人物は、息を切らしながら言った。

ニコニコした笑顔は、飼い主を見つけた犬のようだった。

目がキラキラしている。


「またあったねー!」

「そうだな」


 僕の安心は確信になった。 

誰なのかはわからない、会ったこともない人物。


でも——


 心の片隅で求めていたものに違いないと感じた。


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