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花咲く頃に、僕は消えて  作者: 月嶋歩夢
【第五章】今、ボクは生きる
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第33話 本

「だーかーらー、寂しくならないように!」


 小春は照れくさそうに言った。


 小春が僕のために?

こんなこと今までなかったので、少しむず痒い。


「お兄ちゃん、ずっと目を覚さないから。ひとりぼっちだと思って」


 当時のことを思い出しているのか、寂しそうな表情で小春は続けた。


「それにこの本を読めば、お兄ちゃんが帰ってきてくれると思って。この本好きでしょ?」


 小春の目が、僕の答えを待っている。

僕は、ゆっくりと頷いた。


「春、夏、秋、冬。本当は季節ごとにゆっくり読もうと思ったんだけど、面白くて。何回も読んじゃった!」


 小春の顔に笑顔が戻った。


「お兄ちゃん……眠っている時、私の声聞こえた?」

「……」


 眠っていた時のことは、あまり覚えていない。

でもなぜだろう。

小春みたいな……生意気で、無邪気で、陽気なやつを僕は知っている……ような気がする。


“会えて嬉しいな”


 え?

微かに声が聞こえた……ような気がした。


「……聞こえた」

「え?」

「かも」

「もー!」


 小春は頬を膨らませた。


「毎日読んでたのか? その本」

「え? 読んでたけど。前も言ったよね」

「そうか……」


 わからない。

わからないが、僕が生きていれるのは——


「小春、ありがとな」


 僕は小春に感謝した。

全力の笑顔で、心を込めた。


「気持ち悪い」


 小春はボソッと言いながら立ち上がった。


「さて! 休憩終わりだよ」


 小春は僕の肩を叩く。


 言わなきゃよかった。

やっぱり僕の妹は生意気だ。


「お兄ちゃん、誰のためにやってると思ってるの?」

「わかったよ」


 小春は僕の腕を引っ張り、無理やり立たせようとする。


「ほら、立って!」

「わかったから」

「ぐずぐずしなーい!」

「はいはい……」

「はいは一回!」


 いつからこんな口うるさくなったんだ。

昔からか。


「小春、あんまり急がすなよ」

「別に急いでないし……」


 小春は少しむっとしたような顔をした。

だが、すぐに表情を変えた。

何かを考えるように俯いてから、僕の顔を見た。


「ねえ、お兄ちゃん」

「どうした?」


 小春はまっすぐと僕を見た。


「お兄ちゃん、お墓参り行かない?」

「誰の?」

「川井湊美さんの」


“川井湊美”

一年前に亡くなった女子生徒だ。

僕は知らない生徒だった。


「……行こう、お兄ちゃん」


 僕は妹の願いに、ただ頭を縦に振ることしかできなかった。

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