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第31話 少女
ガタガタガタ、ガターン
何かが跳ねるように倒れる音がした。
「へ?」
少女の喉から漏れるような声が聞こえた。
「こ……こは……る……」
僕はもう一度言った。
「そ、そんな……そんな……」
少女の声が震えている。
呼吸が荒く、肩が小刻みに上下している。
「う……う……う……わあああ」
少女が僕に抱きついてきた。
胸に重みを感じる。
「こは……る……」
少女は僕の胸に顔を埋め、泣いている。
「こはる……どう……した……?」
少女は胸に顔を埋めたまま答えた。
「お……お兄ちゃん、お兄ちゃんがあああ」
困った。
泣き止まない。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんが目を覚ましたあああ」
少女は体を起こした。
顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている。
小春……僕の妹だ。
生意気で、いつも僕を小馬鹿にしてくる。
小春のこんな顔、初めて見た。
「ど……どうし——」
「あっ!」
小春が何かを思い出したような顔をした。
「お医者さん呼んでこなきゃ! お父さんとお母さんにも連絡しないと!」
「こ……こは——」
バタバタと大きな音を出しながら走って行った。
扉も乱暴に閉め、忙しない。
「病院……だぞ……」
小春には届いていない。
だが、流石に兄として言わないといけないと思った。
小春は小学生。
元気だけで突っ走る。
……そういうやつだ。




