第30話 白
——ピッ、ピッ、ピッ
規則正しい音が聞こえる。
聞き覚えのある音。
テレビとか映画とかで聞いたことがある。
ゆっくりと目を開ける。
眩しい。
視界がぼやけ、周りの状況が認識できない。
「……どこ?」
白い視界の中に、微かに黒い線が見える。
何だ?
視界がだんだん鮮明になってくる。
白い天井。
黒い線は、小さなヒビだった。
身体がだるくて重い。
指を動かそうとする。
……あれ?
動かない。
どうなってるんだ?
視線だけを動かす。
白い壁。
白い掛け布団。
点滴。
そして、視界の端には機械。
……病院?
ここは病院なのか?
なんで?
状況が読めない。
身体が動かない。
僕はどのくらい寝ていたのだろうか?
ガラガラガラ
突然ドアが開く音がした。
「やっほー! 今日も来たよ」
元気な声で誰かが話している。
少女の声だ。
「あれー、窓開けっぱなし。風邪ひいちゃうよ」
僕の足元から窓側にかけて足音が聞こえる。
軽いステップで、靴が床を擦っている。
「さて、今日も始めますか」
少女は僕の足元に椅子を引き寄せた。
ギギギギギ
「よいしょ」
少女は椅子に腰をおろすと、バタバタと何かの準備を始めた。
「一仕事終えた探偵は桜舞う木の下で、ひとり物思いに沈んでいた。「エドワード、今回もお見事な推理だったな」「あーベネットか」「どうした? 何か納得いってないのか?」エドワードは少し考えた後、右の口角を上げた。「ベネット、君はこの天才探偵エドワードが、この小さな世界に収まると思うかい?」また、不思議なことを言っている。ベネットは眉間を掴み、ため息をついた——」
少女は、迫真の演技で語っている。
もう何回も読んでいるのだろうか、流暢な語り口だ。
「「エドワード、この世界もいいじゃないか。穏やかで暮らしやすい。少し変わってるけど、皆いい人たちだ。」ベネットはエドワードの肩に手を置き言った。「確かにな」エドワードは続けて言った。「でもなベネット、私は見てみたいんだよ、まだ見ぬ世界を」ベネットはため息をついた。「君って人は」エドワードはベネットに意地悪な笑みを浮かべながら言った。「未知から背くことは臆病かそれとも勇気か。相棒、さぁ行こう」ベネットはもう降参だといいたげに両手を上げた。「わかりましたよ、あなたについていきます」「そうこなくっちゃ相棒」二人はまだ見ぬ世界へ歩き出した——」
この話……
僕はこの話を知っている。
僕は喉に力を込めた。
「こ……こは……る……」




