第27話 拒絶
「……そう」
「うん」
二人の間に、重い沈黙が落ちた。
私が“殺した”と言っていたけど、そういうことか。
私が落ちて、その下にいた少年を巻き込んだんだ。
「そうなんだ。それで死んじゃったんだね」
「……」
それは、少し困ったような表情をしていた。
何か隠している、そんな表情だ。
「何? 何か言ってよ」
「うん……少年はまだ生きてるよ」
「生きてる?」
生きてる?
さっき私が“殺した”って言ったよね?
「どういうこと? 死んでるんじゃないの?」
「生きてるよ。一応ね」
頭の奥が、熱くなった。
鼓動が早くなり、息も荒くなっていく。
彼が生きてる?
私が死んで、彼は生きている。
どうして私なの?
どうして死んだのが私なの?
なんで……
目頭が熱くなり、視界が滲んだ。
「へー生きてるんだそいつ。私は死んだのに」
「……」
八つ当たりだ。
分かってる。
でも、信じたくなかった。
私が死んだって。
「こんな根暗で、人生楽しめてなさそうな奴が生きて、私が死んだ。そうか……」
「……」
それは何も話さなかった。
ただ、真っ直ぐ私を見ていた。
「何その顔。可哀想にって言いたげな顔。同情してるつもり?」
「……」
「何か言いなよねー、何か言えよ!」
それは、目線も表情も変えず、諭すように話した。
「君は死んだんだ」
嫌だ……認めたくない。
「私は生きてる」
「……君は死んだんだ」
「私は生き」
「君は死んだんだよ!」
それの声が空間に響き渡る。
子供のような高い声が何重にもなって聞こえてくる。
やめて……やめてよ……私はまだ
「生きてるのに……」
もう何も聞きたくない。
私は耳を塞ぎ、しゃがみ込んだ。
「……君は、自分が生きてると思ってる。だから無意識に彼の魂を、身体を探していたんだ」
「どういうこと?」
また、訳のわからないことを言っている。
「ノイズ、影、香り、彼に自分の痕跡を植え付けようとしたよね」
「知らない」
「……彼に幻影を見せて、死を意識させようとしたよね」
「知らない」
「……知らないよね。無意識だもん」
「もう、やめて……」
「ワタシは彼が飲み込まれないように、彼のそばにいた。でもダメだった……」
「……」
「君は彼の魂を飲み込んだ……」
「……」
もう、やめて……私は何も知らない。
知らないはずなのに。
胸の奥で、誰かが悲しんでいるような気がした。




