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花咲く頃に、僕は消えて  作者: 月嶋歩夢
【第三章】秋、キミと笑う
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第21話 月

 どのくらい経っただろうか。

といっても数分だけだが、長く沈黙が続いた。

とても気まずい空気が流れている。


 相手の横顔を見てみと、何を考えているかわからない顔をしている。

口元は少し口角が上がっているが、目元は悲しげな表情をしている。

かと思えば、目を瞑り、小さくため息をつく。


 ど……どうしよう。


 言葉が出てこない。

あなたは何を考えてるの?

 

 僕はベンチに深く座り、真上を見た。


 今まで見た中でも、特別大きな月が、そこにいた。

視界いっぱいに広がり、今にもこちらへ落下してきそうだ。


……なんか、近くない?


 大きな月が、僕たちを、優しい光で包み込んでいる。

なんだか、僕たちを心配してくれているようだ。


 月をぼんやり見ていると、端に小さく触れる何かが視界に入った。


ん?


 影だ。

しかも、人の形をしているように見える。


「屋根の上に誰かいるよ?」

「え?」

 

 相手も真上を見た。


「本当だ。危ないね」


 屋根に柵はない。

風も強い。

少しでも足を滑らせると、そのまま真っ逆さまだ。


「どうしよう、誰か呼んでこようか?」

「うん……」


 その時、ふわりと甘い香りが漂った。

金木犀の香りではない。

この匂い——まただ……


どん!


 重く鈍い音が、静かな中庭に響いた。

それと同時に——


ああああああああああ!!!!


 頭が、頭がいたい!

何か大きなものが、後頭部にぶつかったのを感じた。


「ど、どうしたの?」


 相手の叫び声が聞こえた。

瞳孔が開き、声が震えている。


 「頭が! あーあ……あ、あー!!」


 頭が割れるように痛い。

いや、絶対割れている。

痛みは、一瞬で後頭部から全体に広がり、徐々に熱くなってきている。


「ど、どうしよう……急に……」


 涙目になり、怯えている。

相手には何も見えていないようだ。


僕は……僕はどうなるんだ……


 急に恐怖が揉み上げてきた。


「やだ……やだ……」


死にたくない。


 僕は相手を見た。


「大丈夫、大丈夫だよ。大丈夫……」


 混乱している。 

相手は僕の手を強く握った。

手が大きく震えている。


怖い——


 その時、背中に生温かい温度を感じた。

柔らかい感触。

その奥に、硬いものがあった。

細くて黒く、少し硬い糸みたいなものが、風になびいている。

その糸からは、あの匂いを強く感じた。


髪の毛……


 意識が遠のく中、その糸の正体に気づいた。

そして、この匂いは——


シャ——


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