第2話 再会
浜辺を歩いていると、見慣れない少女が立っていた。
やれやれ、とでも言いたげな表情で、こちらを見ている。
最初から僕を待っていたかのようだ。
まだ幼さの残る少女。
青白い肌に、腰まで伸びた紫の髪。
月光を受けて、その色は淡い桃色にも見えた。
身体より少し大きなマントを羽織り、口元だけが隠れている。
「やっときたね。今回も会えて嬉しいな」
見た目に覚えはない。
けれど、その口調には確かに聞き覚えがあった。
何度も聞いている、軽い口調。
「今回は、メルヘンだね。桃色の海なんて人魚がいそうじゃない」
今回……前回はどうだっただろうか。
相手の言葉に脳の奥が揺れ、薄い霧が立ち込める。
思い出せない。
——いや、思い出さなくていい。
僕は脳の揺さぶりから逃げるように、相手に視線を移した。
君の姿も、だいぶメルヘンじゃないか。
僕はそう思ったが、声には出さなかった。
「顔色が悪いね。海水でも飲んだの?」
「……海は、あんまり好きじゃないんだ」
「そうなんだ」
嫌いではない。
ただ、会話を広げるのが面倒なだけだ。
相手はニヤニヤと、ふてぶてしい笑みを浮かべている。
すべてお見通しだとでも言いたげな表情だった。
砂のジャリっとした感触が僕の足の裏をくすぐる。
歩いても、歩いても海と砂浜。
大きな月が僕たちを監視するかのように付きまとっている。
風景が何も変わらない。
それが、安心だったはずなのに。
胸の奥が、わずかにざわついている。
相手は砂を蹴りながら、鼻歌混じりに歩いている。
……呑気だな。
だが、何気ないことを楽しめる相手が少し羨ましい。
それからしばらく歩いた頃、視界の奥に白い塊が現れた。
輪郭が揺らぎ、重なり合い、不安定な形をしている。
「あれは、森だね」
——森。
そう呼ばれて、ようやくそれが“森”だと理解した。
葉も枝も幹も、どこか現実の構造とは微妙に異なっている。
……すべてが白い。
色素を失ったというより、最初から色を持っていないような白。
「行ってみよう。砂浜も飽きたでしょ?」
飽きている。
別に、森に強い興味があるわけじゃない。
ただ、今の退屈な現状を壊したかった。
相手は軽い足取りで、森に向かって歩いていく。
僕はその後を追った。
導かれるほうが、ずっと楽だからだ。
森に足を踏み入れた瞬間、さらに現実離れした光景に言葉を失った。
月光が葉と葉の隙間から漏れ、白い幹や地面を淡い桃色に染めている。
風が吹くたび、桃色の光が揺れ、桜を思わせる。
……綺麗だ。
「静かだな。不思議と安心感がある」
相手は、安堵のため息を吐きながら言った。
確かに、鼓動が穏やかだ。
胸の奥で、一定のリズムが保たれている。
葉と葉が擦れ合う音には、ノイズがなく、心地よかった。
僕は、そっと木に触れた。
手が震え、触れてはいけないと身体が訴えている気がした。
それでも、触れろと心の奥がざわめいている。




