004:歯車が回り始める
昼間、普段は賑やかな康平路の通りには人っ子一人おらず、一台のパトカーの先導に続いて、何台ものコースターが陸続と、公にできない建物の中へ吸い込まれていった。
会議室では、黒い立襟ジャケットに身を包んだ集団が身を正し、会議の進行役の発言を待っていた。
「配布した資料は皆、目を通したな? では、まず私からまとめよう。二ヶ月前から、上海では現在の科学では説明できない『超自然現象』が一連発生している。最初は、歩く木や他人の名前が見える少女など、脅威の少ない事物ばかりだった。しかし後に、魔法少女や身体に武器を装着した改造人間など、一定の社会的脅威を持つ者たちが続々と現れた」
出席者の反応は二つに分かれた。陰りを見せているのは早くから『超自然現象』に関わってきた官僚であり、驚きを隠せないでいるのは今回初めて関連資料に触れた者たちだった。
「昨夜、一機の大型ロボットが楊浦区に墜落した。しかし天候と時間の関係で、人的被害も影響の拡散もなかった。また、超自然人物と思われる二名が、墜落地点での武装警察の封鎖を突破した。現在、行方不明である。各部門は手がかりがあれば速やかに報告されたし」
「専門家による迅速な査定によれば、今回の事件で出現した大型ロボットは、おそらく軍事用途だ。中央はこの事態をきわめて重く受け止めており、文清同志を上海へ派遣し、『特殊事件駐上海連合工作組』および関連事項を指導させる。それでは文清同志に発言していただく。皆、拍手を」
進行役の動作に合わせ、会場に礼儀的な拍手が響いた。進行役の隣に座る中年男性は、周囲に会釈して返礼の意を示した。
「同志の皆さん、こんにちは。最近上海で発生した一連の事件について、中央は高度に重視している。各部門の人員を結集し『特殊事件駐上海連合工作組』を組織するよう指示があった。私は中央の命を受け、現在組長の職を務める。中央と地方の調整、および業務監察を担当する。将来的には組織部の推薦により、上海地元の指導部から信頼できる同志一名を副組長として選出する。連合工作組の日常業務指導と上海地元の資源配分を担当させる。以下、中央の『特殊事件』に関する指示を伝える」
「人民の生命財産の安全に関して。各級幹部は常に人民大衆の生命財産の安全を第一位に置かなければならない。事件発生時には負傷者の救助に全力を尽くし、人的被害を最大限減少させる。『特殊事件』の発生原因に関して。各級の科学研究部門は難題解決と調査研究を加速させる。重要な役職には優先的な資源配分を行ってよい。問題解析を統一的に推進する。『特殊事件』の社会的影響に関して。関連事件が一旦公表されれば、社会的影響と経済的損失は計り知れないことを考慮し、当面、関連情報を絶対機密に指定することを決定した。関係者が漏洩した場合、規律処分を受ける。影響の大小により、刑法による処分を受ける可能性がある」
「皆さん、何か質問があれば私に尋ねてよい」
出席者の一人である官僚が手を上げて合図し、口を開いた。
「中央はこの一連の事件について何か手がかりを持っているのか? それと、これらはすべて上海だけで起きているのか?」
「はい、上海だけで起きているわけではない。関連する『超自然の事物』は、まだすべて上海から出ることができない。工作組は以前、陳同志が先ほど言及した『歩く木』の葉を使って試験を行った。ある境界線を超えた途端、それら超自然の事物は瞬時に消滅する。そしてこの境界は、上海の行政範囲と高度に一致している。この一連の事件の発生原因は依然として謎である。ただし、一つの情報を公開してもよい。現在出現している『超自然の事物』は、その多くが現実でかつて幻想の題材として現れたことがある。しかもその多くがポップカルチャーと関係している。たとえば件の魔法少女は、あるゲームの中のキャラクターだ。現在、『菩薩』『土地神』など、伝統文化から具現化した事物は発見されていない。また、明らかに地球外由来で非幻想の事物も見られない」
「これらの現実に元々存在しない超自然の事物が超自然の力を持つ以外に、現実の人間も超自然の力を得る可能性はあるのか?」
「可能性はある。すでに超自然的な力の影響を受けた一般市民を数名確保しており、現在は適切に保護・安置しているところだ」
「今後、関係する市民と『人間の知性を持つ超自然生物』をどのように処理するのか?」
「中央の意向としては、新たな専門部署を立ち上げ、協力の意思があり、選別を経た人員を、政府の『特殊事件』に関する協力管理体系に組み入れ、公務員に準ずる待遇を与える方針だ。ただし現時点では、彼らは連合工作組の管轄下に仮置きという形になっている」
次々と官僚が質問する中、新たに着任した工作組組長はそれぞれに応じた回答を与えた。会議は約一時間行われ、討論の声が次第に終わった後、進行役は散会を宣言した。
大部分の者が去った後も、会議室にはまだ協議を続ける数人が残っていた。
「復興島から逃げた二人の手がかりはまだないのか?」
「ない。現在ビッグデータ検索と手作業のローラー作戦を併用して追跡していますが、復興島運河を渡った後の足取りは完全に途絶えています。推測するに、超自然的な力を使って身を隠しているか、あるいは我々の捜査手法を熟知した人間が潜伏を手助けしているかのどちらかでしょう」
警察服を着た官僚の話を聞き、組長はうなずいた。
「全力を挙げて捜索しろ。己の置かれた状況すら把握していない超自然生物は、一定の社会的危害を及ぼす恐れがある。だが我々もこの状況に適応せねばならん。今後はこうした事象がますます増えるはずだ。緊急対応策を用意せよ」
「あの二人がどちらへ逃げ、どのエリアに影響を及ぼすのか。武警が現場で回収した遺留品、ロボットの残骸の処置、さらには超自然の事物の分類や命名に至るまで、課題は山積みです。ですが今何より急務なのは、我々の目をすり抜けた超自然存在が上海の2500万の人口の中に紛れ込んでいないかという点、そしていかに周囲に疑われずに、この2500万人を選別するかです」
2500万人を選別する……これは明らかに大工事だ。警察服の官僚が口を開く。
「しかし現状、確実な検査手段が存在しません。生体サンプルを境界線の外へ持ち出して消滅するかどうか確かめるくらいですが、その方法は純粋な超自然産物にしか通用しない。超自然的な力を帯びただけの現実の人間なら、組織サンプルは境界線を越えても消滅せず、ただ一時的に超自然の力を失うだけだ」
「まずは小規模な検査から始めてみてはどうか」新しい幹部官僚が提案した。「九月は新学期だ。市内すべての大学の新入生を対象に入学健康診断を実施し、その後に対象を全教職員・在学生へと拡大する。これなら公的福祉の名目でカムフラージュできるし、病院や防疫システムも新学期には稼働している。採血が一本増えたところで誰も疑問に思いはしないだろう」
「検査の理由を探すのは簡単だ。しかし検査が終わった後、我々はどんな情報を得られるのか? 先ほど張庁長が言ったように、現在信頼できる検出手段はない」別の者が反論する。
「ふふ、現在これらの超自然現象の内在規則に関する研究は突破が速い。万一、一ヶ月後に信頼できる検出方法ができるかもしれない。しかも昨夜、君は復興島事件に直接参加していない。だから、無形の大きな手が陰でこのすべてを操っているのを感じなかったのだ」その幹部官僚は答えた。
「大きな手?」
「我々の捜索に対抗する神秘的な人物、あるいは神秘的な組織の意味だ。私は当時、現場人員の報告を聞いた。その逃走過程が実に見事に行われていると気づいた。逃げた二人は途中でパトカーを使い移動した。しかしパトカー内部の監視データを保存するDVR本体は、その後、川に捨てられているのが発見された。その結果、事件全体に監視記録が全く残らなかった。パトカーの他の部分は破壊されていない。破壊者はパトカーの構造をよく理解していることになる。これらの超自然の事物は、要するに幻想作品から来ている。上海のパトカーの構造を記載した作品があるとは思えない。その結果、そこから具現化したキャラクターが監視を消去する意識を持つとは考えにくい。ゆえに可能性は二つしかない。外国勢力の介入か、すでに人間社会を理解している幻想キャラクターの助けか」
「この一斉検査は、いわば打草驚蛇だ。もし検査対象の中に目当ての存在が混ざっていれば、採血を免れようとしたり、血液サンプルをすり替えようとしたりと、何らかの動きを見せるはず。動きが増えれば、自ずと尻尾を出すことになる」
彼の合理的な推理を聞き、他の官僚たちも一様に頷いた。
◆◇◆
今日の午前、一人のおばさんが僕を見舞いに来た。どうやら僕の連絡先にあった「定海路街道王おばさん」らしい。
管轄区内の孤児を気にかけるのは彼女の仕事だが、それでも僕は彼女の同情と気遣いを感じた。遠回しに、生活で何か困っていることはないかと尋ねてきた。しかし、おそらく僕が記憶喪失だという知らせを事前に聞いていたのだろう。王おばさんはその点を長く追及せず、代わりに、僕の現在の状況とこれからどうすべきかを話してくれた。僕も自分に関する多くの新しい情報を知った。
僕はどうやら大学入学予定者らしい。つい先日の七月に上海理工大学の志望を出した。そして今、合格通知書が家に届いている。
つまり、九月から大学に通うことになるのか?
これは僕にとって願ってもない吉報だった。本来、これから何をしようか悩んでいた僕も、もしかしたら素晴らしい大学生活の中で新たな人生の意味を見つけられるかもしれない。
だが、僕は大学の授業についていけるのだろうか?記憶喪失によって知識が大幅に失われているのだとしたら、大学生活はかなり大変なことになりそうだ。
しかし、昨日の医者の問診では、僕は「水を電気分解すると水素と酸素が生成される」という常識すらまだ持っていた。もしかすると、知識量はそれほど損なわれていないのか?
王おばさんが帰った後、僕は学習アプリを使って、自分の学力をざっと確認してみた。
国語……古詩をいくつか覚えている。
数学……普通の難易度の立体幾何の問題なら解ける。
英語……読めて書ける。
物理、化学、生物、歴史、政治、地理は、満点が取れるとは言えないまでも、基礎は一通り身についている。
さらに日本語の問題まで少し解いてみたところ、僕の日本語能力もかなり高いことが分かった。
どうやら僕は以前、なかなかの優等生だったらしい?しかし、なぜこれだけの知識を覚えているのに、自分の名前すら忘れてしまったのだろう?これは本当に普通の記憶喪失なのだろうか?
疑問だらけのまま、僕は午後に病院を退院した。体にはほとんど外傷がなく、身体検査も完全に正常で、この謎めいた記憶喪失以外に原因が全く見つからないため、医者もこれ以上入院させておく理由はないと判断し、僕を帰宅させた。
身分証に記載された住所を頼りに、僕はスマホのナビを使って上海の街を移動した。
どう言えばいいのか? 自由気ままに上海を歩き回るのは初めてのはずなのに、それほど新鮮味はなかった。なぜなら、僕が通った街並みは昨夜夢で見た空っぽの街とあまりに似ていたからだ。僕の脳はどこから素材を得て、これらの光景を描き出したんだ?
スマホの地図と照らし合わせると、昨夜リズと逃げた島は、おそらく楊浦区の復興島だ。そして泳いで渡った川は復興島運河だ。
僕はついでに、リズと当時岸に上がった川岸を先に見に行った。しかし、なぜかそこは封鎖されていた。
……もしかして、昨夜起きたことのすべてが本当だったという可能性は?
僕は額に存在しない汗を拭った。総じて言えば、まだ完全に記憶を失っていない僕の脳が、この夢を紡ぎ出したという説の方がまだ信頼できる。
もちろん、僕もダチョウのように数々の疑点を考えないほど自分を欺いたりはしない。それ相応の心の準備もした。もし本当に誰かが僕に聞きに来ても、慌てて簡単にぼろを出したりしない。とはいえ、僕に聞いてきた時点で、僕の身元が露見したことを意味するが。しかし当時、僕は暴力行為もしていない。おそらく違法ではないだろう? たぶん……
僕の内心では、昨夜が夢であってほしいのかどうか言い表せない。すべてが真実である場合の結末は深刻だが、しかしそれは、未来にまたリズに会える可能性があるということでもある……
胸いっぱいの疑惑と不安を抱え、僕は記憶を失う前の家、時運苑31号を見つけた。
ごく普通の庶民的な一戸建て。上海理工大学のすぐ隣だ……どうやら志望を出す時点で、家が近いことを考慮していたらしい。未来、寮に住まなくても済むかもしれない。
王おばさんが持ってきてくれた鍵を使い、僕はドアを開けて中へ入った。
内装は至って普通。誰かが生活していたことは分かる。リビングには一組の夫婦の遺影が置かれている……おそらく僕の両親だ。
道徳的な悲しみを抱き、僕は両手を合わせて拝んだ。
これから先、僕はおそらくここで上海での生活を始めるのだろう。
未来が順調であることを願う。
❤️、✨,please.




