014:死体から、少女へ
「ドン」
重いものが床に落ちる音が響き、季雨は空城が消え、レイラの死体も一緒に排斥されたのだと推測した。
目はまだ突然の暗闇に慣れていなかったが、記憶を頼りに、彼は寝室の電気をつけた。
「ふ~、家に戻ってよかった。もし現実の復興島に戻っていたら、大変なことになっていたぞ」
色欲の印の使用方法を思い返し、それから床の上の女性の死体を見て、彼はすでに一つの狂った考えを抱いていた……
だが、レイラの死体を見下ろすと同時に、季雨は自分の身体の異変にも気づいた。
下腹部には、その下にある器官とはどうにも釣り合わない刺青がくっきりと浮かび上がっていた。
一つの淫紋……この時まだ裸体の状態だったので、はっきりと見える。
「刺青?! 終わった、公務員試験を受けられない」
いや、僕は男だぞ! 男に淫紋があるとはどういうことだ???
どうりで原作をプレイした時、主人公の身体に色欲の印が見当たらなかったわけだ。こんなところにあったのか!
季雨は一瞬メンタルが崩れかけたが、すぐに立ち直った。
どうせ人目につかない場所だ。プールなどに行かなければ、おそらく露見しないだろう。
だが、下腹にこの印が現れたのなら、先ほど同じように温かい感覚のあった右目もおそらく……
寝室のスマホを手に取り、フロントカメラを開くと、右目の虹彩はすでに赤く変色しており、嫉妬の印が瞳孔にはっきりと刻まれているのが見えた。
「すごく中二病っぽい……」
嫉妬の印の位置は色欲の印ほど気まずくはないが、その場所のせいで露見する可能性は大幅に増す。
「どうしよう……中二病と誤解されるのはまだしも、超能力を疑われるのが本当に厄介だ」
短い葛藤の後、季雨は解決策を思いつき、再び死体へ視線を向けた。
穴だらけの死体を見て、季雨は道徳的に特に何も感じなかった。
自分は「人」を殺したが、完全に正当防衛だ。しかも当時は追い詰められており、道徳を考える余裕などどこにあった?
人を殺したり死体を見たりすると吐く人もいると聞くが、季雨は自分の身体の反応を注意深く確かめたところ、吐き気はなかったものの、ぼろぼろの死体を見ると確かに少し気分が悪くなるのは分かった。
彼には確かに罪悪感はなかった。
余計な道徳論はさておき、まずは原罪の印を隠すことを考えよう。
季雨の計画は、レイラの右眼の眼球組織の一部を利用し、恒久的な「生物型変色カラコン」を製造することだ。
聞くだけで少し気持ち悪い……だが構っていられない、使えればいい。
台所から包丁を持ってきて、季雨はレイラの目を抉り出した。
この包丁はもう料理には使えない……
チュートリアルを見た時は、色欲の印は錬金術に近いと思っていたが、しばらくして、自分はすでに「死霊術師」に転職していた……
眼球の内側を削り取り、角膜などの線維層だけを残す。それから、端材をレイラの眼窩に戻しておいた。あとでまた使うからだ。
グロテスクなことをしているのに、その目的は「原罪の印を隠す」という至極真っ当なものだ。そのギャップに、季雨は少し笑いをこらえきれなくなった。
眼球の線維層を手のひらに置き、季雨はチュートリアルで示されたように色欲の印を発動させた。
初めての錬成が、しかもこの「生物×装備」の複合型錬成なのだから、彼にはあまり自信がなかった。
だが色欲の印の便利さは彼の想像を超えていた。
頭の中で欲しいものを描くと、どうやら手の中の素材が適切だったらしく、一枚の透明な薄膜が急速に形成された。
「本当に便利だな……」
手の中の「生物型変色カラコン」を見て、季雨は少しためらった。
本当にこれを目に入れるのか?
ちっ、ぐずぐずするな。
彼は深く息を吸い、薄膜を目に押し当てた。
薄膜は眼球に触れた瞬間、ぴたりと密着した。意識を集中すれば、右目が一枚の薄膜に覆われているのを感じ取れる。だが、この装備は視界を遮ることもなく、不快感もなかった。
この装備の素材は、かつて嫉妬の印が宿っていた眼球組織なので、ぎりぎり「高級素材」といえる。嫉妬の印には虹彩の色を変える力があるため、この「生物型変色カラコン」の超自然的な特性も、当然「変色」だ。
「黒」
薄膜の中心を黒く変えるよう制御し、季雨はスマホのフロントカメラで確認した。新装備は良好に機能している。
RPGの慣例にならい、彼はこの薄膜に装備名をつけた。カメレオン角膜。
カメレオン角膜、虹彩の色を変えられる生物型装備。生体であるため、眼球の動きに合わせて動き、涙液によって潤されるので、ずっと装着したままでいられる。新たな色欲の印持者が自分用に設計した装備であるため、生体適合性は完璧で、異物感もなく、普通のコンタクトレンズのように毎日着脱する必要もない。
今では嫉妬の印の痕跡は全く見えなくなった。季雨はこの新道具に満足した。
嫉妬の印が露見する可能性の問題を解決したが、今なおもう一つ早急に解決すべき問題があった。
一ヶ月前に肉体が空城によって復興島へ転送された時も、今回レイラに空城へ引き込まれた時も、普通の服は肉体と一緒に転移できなかった。そのため、自分は毎回裸になってしまう。これを解決しなければ、次に何らかの事故で空城へ転送された時、また裸体になり、露見のリスクがある。
だが、同じく肉体を空城へ置換されたレイラは、身体にまだぼろぼろのマントを纏っていた。
季雨は死体の着ているマントを脱がせた。
手の中のマントもレーザー銃でいくつか穴を穿たれているが、彼はこの布切れを侮るつもりはなかった。
色欲の印持者であるレイラは、布地に触れる機会がいくらでもあったはずだし、自分に合った服を生成することもできたはずだ。理論上、このぼろぼろのマントを着る必要はない。
よほどの特異点がこのマントにあるのでなければ。
チュートリアルで学んだように色欲の印を発動させ、季雨は手の中の布地の「素材」としての潜在能力を感じ取った。
……そう、超自然的特性を持つ「高級素材」だ。
もし自分の推測が正しければ、これはゲーム原作でレイラから得られるあの装備——
魂の外套。
精神系防御装備、物理攻撃への耐性はほぼゼロだが、精神や魂に関わる攻撃には極めて強い耐性を持つ。
だが季雨にとって、この装備の核心的価値は防御ではなく、「肉体と共に転移できる」ことだ。
原作ゲームでは、この装備は魔法で作られた「霊装」、すなわち「魂に付着する装備」に分類される。使用しない時は「霊体化」させることで、装備枠を占有せずに済む。
ただし「霊装」の特殊な性質のため、季雨には魂の外套がレイラと共に空城へ入れた理由が今のところ分からない。超自然物体自体が空城に転移できるのか? それとも「魂に付着する」性質によってのみ空城に転移できるのか?
だが、いずれにせよ、魂の外套があれば、転移の際に裸になってしまう問題は解決できる。
手の中の布地を身体に羽織り、季雨はこの霊装との接続を試みた。前の持ち主であるレイラはすでに死んでいるため、彼は簡単に魂の外套の使用権を獲得した。
念じると、身にまとった漆黒のマントは次第に透明になり、消えていった。
「これが霊体化? どうやら僕はもう、こういう超自然的な現象にも慣れてしまったらしい」
彼はこれらの超自然現象が一体どういうことなのか解明したいと思ったが、十分な研究能力を持っていなかった。既存の科学体系を粉々に打ち砕く霊体化現象を見て、季雨はそう嘆息した。
霊体化している間は防御力がまったくないものの、これは季雨の日常生活の問題をうまく解決してくれる。何しろ、次に空城へ転移させられるのがいつになるか分からないし、毎日ぼろぼろのマントを着て過ごすわけにもいかない。霊体化すると「魂に付着する」という性質のおかげで持ち運びに困らず、何かあれば具現化すればいい。
だがマントの下は完全に真空で、やはり非常に心もとない……
露見につながる二つの問題を解決した後、季雨は自分のあの狂った考えを再び構想し始めた。
色欲の印と嫉妬の印があれば、しばらくは自衛能力を得られたと言える。だが、今の自分に最も欠けているのは情報だ。上海で今何が起きているのか、当局の捜索がどこまで進んでいるのか、自分には何も分からない。
自ら進んで能力を利用して情報を探しに行けば、露見する可能性も、今回のように危険を冒す可能性もある。ゆえに最善の方法は——
自分とは無関係に見える誰かに、自分のために情報を探らせること。あるいは、偽造身分を使って外部で活動すること。
偽造身分……ただの普通の大学生である自分には、リズのような完璧な身分を偽造するのは難しいだろう。だが今の上海には、身分証明書を必要とせず、誰も検証できない集団がいる。
二次元キャラクター。
リズとレイラが立て続けに転移してきたことを考えれば、二次元キャラが現実の上海にやって来るのは、決して珍しいことではない。そして当局は明らかにこれらの二次元キャラを捜索している……
自分を隠すため、二次元キャラたちは必死に自分が二次元キャラではないと証明しようとしている。
季雨は逆転の発想も試してみる価値があると思った。
もし自分が超自然的なものとは無関係だと言えば、当局は僕を疑い、超能力を持っているかどうか確かめようとするだろう。
ならば、いっそ自分が二次元キャラだと公言し、超能力を披露すれば、当局は逆に自分が本当は二次元キャラではないと疑うだろうか?
レイラの死体は、色欲の印にとって間違いなく「高級素材」だ。この死体を利用すれば、自分は完全に「偽二次元キャラ」を捏ね上げ、自分が二次元キャラだと主張し、それによって政府内部へ入り込み、情報を収集できる。
だがここには二つのリスクがある。
一つ目のリスクは、当局に二次元キャラと協力する意思がまったくない可能性だ。その場合、自ら正体を明かした「偽二次元キャラ」は、即座に抹殺されるかもしれない。だが、季雨の本体には影響せず、一つの「高級素材」を失うだけだ。
二つ目は、当局やその協力者が何らかの理不尽な「占術系能力」を持ち、季雨が操る「偽二次元キャラ」を通じて本体を特定できる可能性だ。だが、リズが堂々と大学に通えていることを考えると、季雨はその可能性も低いと考えた。
たとえ本当に失敗しても、「当局は協力を受け入れない」あるいは「当局には検出能力がある」といった貴重な情報を得られる。
ともかく、この計画は試す価値がある。
ここまで考え、季雨はしゃがんでレイラの死体に触れ、色欲の印でその内部の素材としての潜在能力を感じ取った。
「『精鋭個体』として製造すれば、得られるのは……少数の小型生物を生み出す能力……」
正直なところ、彼はこの唯心式の能力があまり好きではなかった。何もかも感覚と推測に頼るしかないからだ。
「原素材が女性なので、捏ねるキャラも女性にすれば、能力をより完全に保持できるのか」
色欲の印は生物を創造する時、その生物に「自我」を与えるかどうかを選択でき、同時にいつでも創造物を完全に制御できる。だが季雨はこれから製造する「偽二次元キャラ」に自我を与えるつもりはない。彼は完全にこの身体を操作して予定の計画を完遂する必要がある。つまり、この「偽二次元キャラ」は彼のある種の分身となる。
決して女性の身体がどんな感覚なのか試してみたいからこう決めたわけではない!
まあ、まずはどうやってキャラを作るか考えよう。まずこのキャラは、現実に存在するある幻想作品のキャラと同じでなければならない、もしただ「二次元キャラ」と自称しても、対応する作品の裏付けがなければ、必ず疑われる。
少数の小型生物を生み出す能力……色欲の印と似ている部分があるため、設定が大きく異なるキャラを選ばなければ、疑われやすい。
季雨は自分の脳内のアニメ知識を掘り起こした。
あった! 綾小路緋羽! 『緋羽神社物語』のヒロイン。
その物語は東京都内にある、代々陰陽師の家系「綾小路家」が管理する小規模な神社「緋羽神社」を舞台にする。現神主である綾小路夫妻は、娘の緋羽が高校二年生の時に突然世界旅行を決意し、「世界各地の霊脈を訪ねる」と称して、陰陽術を学んでいた娘に神社の管理を一時的に託した。両親が旅立った後、綾小路緋羽は巫女として神社の日々の運営を続けながら、周辺に現れる小規模な怪異事件を処理している。
要するに、スローペースな霊異系幻想漫画だ。
……少し百合要素もある。
小型生物を生み出す能力は、陰陽術の式神召喚として完全に偽装できる。その他の陰陽術については、緋羽は半端な陰陽師なので、彼女の陰陽術は非常に不安定だ。ゆえに「術の失敗」を他の陰陽術が使えない口実にできる。
最悪の場合でも、祓除などの能力も偽装できる……何しろ悪鬼を直接殴り殺すのも一種の「祓除」だ。
だが能力以外にも、露見しやすい点がいくつかある。
まず問題になるのは日本語能力だ。現代日本を舞台にした作品のキャラである緋羽は当然日本語を話せるが、季雨の日本語力も悪くない。当局が「この人物は二次元キャラを装っている」と明確に疑っていない限り、届出の際に少し質問される程度で済むだろう。そこを通過すれば、日常生活では中国語を使えるはずだ。何しろ、リズが「自動的に中国語を習得した」前例があるのだから、緋羽が中国語を話せても不思議ではない。
次に、巫女としての専門知識も問題になるが、これは学習で補える。ネットには「一日巫女」を体験する動画がたくさんある。
最後は性格の演じ分けだ。綾小路緋羽は女性なので、演じている最中にうっかり男性用トイレに入ってしまったら大変だ。この点は、日常の中で常に注意するしかない。
解決できない難題がないことを確認した後、季雨はレイラの死体を望む姿へ錬成し始めた。
本当に死霊術師になってしまった……
顔……季雨はスマホを開き、漫画の絵を見ながら造形していく。緋羽の前髪には一筋の赤いメッシュが入っていて、なかなか格好いい。
胸……Cカップにしよう。漫画で描かれている大きさはだいたいこれくらいだ。しかも、胸が大きいと女子は大変だと聞く。自分が使う身体なのだから、あまり大きく作りたくない。
腹……正常でいい。細いが病的ではなく、ただし臍は縦に細長い形でなければならない。
毛……毛が要るか? いや、自分の身体にこんな邪悪なものが生えてはいけない! この場所は清潔で、整っていなければならない!
自分が創造したあの完璧な「隙間」を見て、季雨は満足そうにうなずいた。
最後に脚と足、彼は同様にモデルの基準で緋羽に長く美しい脚と足を作り上げた。
もしこれが自分の彼女なら、自分はきっと我慢できないだろう。だが残念ながら、これは自分の「もう一つの身体」だ。自分の下に横たわる「聖潔」な「少女」を見て、季雨はそう思った。
色欲の印の開発潜力は、チュートリアルで示された以上に高いのかもしれない。「綾小路緋羽」という身体を製造する際、内臓や神経系など季雨が厳密に設定しなかった部分は、レイラのテンプレートに従って自動生成される。
これがおそらく、色欲の印で錬成する際、原材料にある程度の類似性が必要となる理由だ。もし季雨が他の動物の死体を使ったなら、人間の器官生成は今回の錬成ほど順調にはいかなかっただろう。だが逆に、もし彼が細胞、ひいては人体全体の構造を完全に解明できたなら、単純な有機物質から人間を作り出すこともできるのだろうか?
もし分子、ひいては原子の構造まで解き明かせたなら、色欲の印は真の「錬金術」へと変わるのだろうか?
しかし実際に一度、生物錬成を最後まで行ってみたことで、季雨はある盲点に気づいた。
レイラが復興島での戦闘で残した血液は、相当量あるはずだ。もし色欲の印による錬成が、タンパク質やDNAといった微細構造を変えていないのであれば、血液検査を受けるだけで、緋羽はレイラやその造物と誤認されやすくなる。
生体情報を少し改変する必要がある……これなら無から何かを生み出すわけじゃないから、季雨にもかろうじてできる。
一筋の夜明けの光が窓から寝室へ差し込み、季雨をそれらの壮大な構想から一時的に我に返らせた。
「うん、とにかく今日はまだ軍事訓練がある。まず昨夜何が起きたか確認しよう。緋羽は家に置いておく」
眠っている少女を自分のベッドへ運び、レイラの残留物質を片付けた後、季雨は洗面所へ行った。
「ピピッ」
スマホにメッセージが届く。
「海安路橋でガス爆発が発生し、復興島にある花火倉庫の一つに被害が及びました。現時点の情報によれば、人的被害は確認されていませんが、引き続き危険が生じるおそれがあるため、本日の軍事訓練は中止とします。学生は宿舎内にとどまり、外出しないでください。今後の日程については別途通知します」
ほう? 口実はガス爆発か。
だがともかく、今日は暇になった。しかも外出して情報収集もできない。だから……計画変更だ。
眠っている少女が目を開けた。
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