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第肆拾伍話 修行

三人が歓迎された屋敷から少し歩いた所に観光名所である自社仏閣が集っている。

此処が正に来たかった場所だと零央は目を輝かせた。


「此処、立地が凄い良くて。名所が粗方見て回れるんですわ。何処から周ります?あぁ、それと博物館の方で貴重な宝物が展示された特別展をやってるんですって。勿論、チケットはウチらの方で手配させてもらいますから安心してください」


「れおね、できたじゅんばんにいきたいんだ。おしえて」


そう言われると千鳥は苦笑いしながらもその言葉に応じてくれる。

零央の願いを叶える為、周辺の地図や自身の手帳を頼りに周辺の情報を調べている。

依頼人の要望に応えるのも、ガイドの仕事なのだ。


先輩である賢治は直様、三人を次の場所に案内する為。場所は勿論、その知識を披露してくれる。


「なら、ひーちゃん。五重の塔と三重の塔がある寺がええんちゃう?ウチらが今出てきた拠点や鹿が沢山いる公園、それ以前は寺の跡地になってまして。高名なお坊さんが暮らす塔があったんですよ」


「ほら。おしょくじしたときも、きれいなおにわがありましたやろ?あそこも、もともとはてらのていえんだったんですわ」


吉乃の声に三人が後ろを振り向くと、雄大な池と青空に映える赤い橋がかかっているのが遠目から見える。

ホテルに入る際にも受付から館内は勿論、庭園についての説明もあり宿泊者はテニスコートやゴルフ場も使用する事が出来ると聞いて驚いていたが、全体像を知ろうと思うとそれは途方もない作業になってしまうなと児玉は思ったようだ。


「なるほど。そうなるとかなりの敷地面積を持ってるって事になるな。そう言えば、ツアー紹介にあった五重の塔ってその寺の写真か?」


「そう言う事。大和には格式高い寺は勿論、神社も存在する。今日はこの周辺の観光名所を紹介して、明日は賢治オススメの場所に連れて行くと言うのが今回の大まかなプランだ。寺社仏閣は閉門時間が早いからな。時間管理には気をつけないと」


目的の寺に訪れた一行。その中で零央は目を輝せ、嬉しそうに五重の塔を眺めていた。

児玉に写真を撮って欲しいと言い、それを見た賢治は自身がカメラマンとなり親子を塔の前に並ばせている。

そんな中で微笑ましいと思いながらも山岸は何かの気配気づいたのか?遠くの景色を眺めている。

戻ってきた児玉は彼に声をかけた。


「山岸、どうした?」


「いやっ...今、知り合いの姿が見えたような気がして。あの御堂から人が出てくる所が見えたんだ」


そのあと、砂利道の方から彼の言うように阿闍梨が歩を此方に向けているのが分かる。

次に僧侶らしくない、仕草をし手をヒラヒラと向こうへ振り異国の挨拶をしている。


「グデー!皆さん、お揃いなようで。そんな大勢集まっていらしたら私も気づきますよ」


「えっとね、ハァイ!れおだよ!あざりおにいさん!」


零央も彼に気づいてもらえるように大きく手を振り替えてしているようだ。

阿闍梨は以前、行われた結婚式を通じて運び屋メンバーと顔を合わせた事がある。

それと同じく、以前から光莉や児玉とは顔馴染みでもあるのでその時に望海や零央の紹介をされたようだ。

夢の世界で聞いた人魚の声、それは望海の声であったと現実に戻った彼は確信を得たという。


朝風の過去に戸惑い、心配に思いながらも阿闍梨はこれ以上踏み入れる事はしなかった。

これは彼本人の問題であり、日々協会で彼とすれ違うたびにその暗い表情は見る影もなく寧ろ吹っ切れたように見えたので今は見守ろうという気になったようだ。

そんな中で住職として自分の使命を感じ、今回大和にて彼はある依頼を受けたようである。


「久しぶりだな、夢の事件以来か。まさか、大和にいるとは思わなかった」


「実は、父のご友人がここで住職をされていまして。直ぐに側にある神社で何やら用途不明の物を発見したそうなんです。ずっと使われぬまま、埃被った状態で見つかって。しかし、処分して良い物なのかも分からないと」


「言ってしまえば、神社と関わりがなさそうな物が急に出てきたって事だろう?もしかしたら此処の寺の物が混ざってしまった可能性があるよな?近所なら行事関連で人や物が行き交う可能性もあるし」


山岸の問いかけに彼は確かにその可能性は高いと思いながらも、先程このお寺の住職でさえも困惑し「そんな代物はウチでも取り扱ってない」と言っていた以上。

安易に首を縦に振るという事は出来ず、寧ろ彼は横に振る他なかった。


そのあと、苦笑いしながら三人は勿論。

側にいたガイドの四人に対しても助けを求めていた。


「仏や神でさえ解決出来ない事件。どうか皆さんの知恵をお貸しくださいませんか?地元の方ならそう言った行事や用途にもお詳しいでしょうし」


「なんか、話しが壮大になって来たな!勿論、俺達も解決の力になるで。やけど、用途不明のものって一体なんなんやろ?」


近所の神社で起きた事件、運び屋達はその答えを導く事が出来るのだろうか?

阿闍梨とも合流した一向は次の目的地である隣接する神社へと向かった。


《解説》

・最初に訪れた寺は興福寺。隣接する神社は春日大社のことですね。

元ネタでは奈良ホテルの庭園は興福寺の敷地を使用しています。

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