治療と権限
王は王妃に目を向ける。
「アデルよ。この娘は信頼に足るか?」
その問いかけに、王妃は少し間をおいて答えた。
「わたくしも今日初めてお会いしたので計り兼ねますが、料理の腕は確かです。そして、我々の知らぬ知識を有することも、また事実でしょう。虚言でないことを祈るばかりですが」
王妃はそう言って、遥子に微笑みかける。
遥子はその笑みを見て、素直に怖いと思った。
案に「嘘だったら許さないよ」と言っている。
「ヨーコ。あなたは王に命を賭けられるかと聞きましたね。ならば、ヨーコ。あなたも命を賭けなさい」
「……はい、そのつもりです」
どうせ失敗したら死ぬのだろう。
しかも最高権力者の命を預かっているんだから。
そうして集められた宮廷医と宮廷料理人に、これまでの説明をする。
もちろん反発があった。
私が間違っているとでも言うのか!とか、国王の命を軽んじるなど処刑ものだ!とか、ヤジが飛んだ。
案の定というかなんというか。
「宮廷医たちと宮廷料理人たちには、ヨーコの指示に従ってもらいます。ヨーコの指示は、わたくしの命と同じと考えなさい。わたくしの全権限をもって、お前たちに命じます。ヨーコに従いなさい」
有無を言わせぬ迫力ある命令に、これ以上の悶着はまずいと察したのか、室内の全員が頭を下げた。
この日から本格的な治療がスタートしたのだった。




