提案と栄養学
「私は医者ではありませんので他は割愛しますが、治すためには宮廷医や宮廷料理人の協力が必要です。ただ、こんな得体の知れない女が指示を出して、素直に従ってくれるのかを、私は懸念しています。そして王様自身の協力も必要です」
ここが1番の問題なのだ。これはすぐに効果が出るものではないからだ。
「効果が出るまでに少なくとも、3ヶ月は見て欲しいです。すぐに良くなるわけではないこと。それでも私を信じ続けていてくれるかということ。そして恐らく最初のうちが一番お辛いと思います」
「……具体的には?」
「まずは医師に下剤を出してもらいます」
待って。まだ話を聞いて。分かるよ、お腹痛いのにさらに下すなんて嫌だよね、分かるよ。
王様の威圧感に冷や汗を流しながら、まだ聞いてくれる姿勢だったので続ける。
「そしてお医者さんにお尋ねしたいのは、それが硫酸マグネシウムか、ということ。もしそうであれば、それをお風呂にも入れてもらって入浴してもらいます」
これはいわゆる「エプソムソルト」である。現代で使われている入浴剤と同じ効果かは分からないが、入浴により発汗してもらう必要がある。
「薬を、風呂に入れるのか?」
「私の国では薬湯という、湯で癒す方法もあるんですよ」
そして問題はここからだ。
「大量に発汗を促し下剤も投与すると、人間は脱水します。なので、こまめに意識して、出すよりも多く水分を摂ってもらいます。この水分には、必ず砂糖と塩を入れていただきます」
念のため「点滴を知っているか」と尋ねたら、知らなそうだったので、点滴からの水分補給はできないかも知れない。ここも医者と要相談だ。
「食事もとってもらいますが、食物繊維の入った食材で排出を助けます。解毒をメインとした肝臓の働きを助ける食材も増やし、鉛が吸着しやすい亜鉛とカルシウムも積極的に入れなくてはいけません。あと貧血の症状も強いので、鉄分が豊富な食材も必要です。これらをすべて食べるのは大変なので、少しずつでいいので、とにかく継続して召し上がってください」
一つ一つを丁寧に説明していく。
これだけ体が弱った状態の人に「食べろ」というのは酷だろう。
しかし、食べないことには栄養が体に回らない。
脱水の心配も高いので、スープ状にしたほうがいいだろう。
本当はサプリメントがあれば一番手っ取り早いが、今はできることをやって行くしかない。
「どの食材にどの効果があるのかは、あとでここのシェフにお伝えしますね」
これで一通りの言いたいことは言っただろう。
「これが私が今できるご提案の全てです」
言い終わると、室内がシンとして沈黙が落ちた。
どういう意味の沈黙なのかがわからなくて怖い。




