表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
12/26

未知の病と推測


「では、これ、お願いします」


 私が騎士に渡したのは1通の手紙。

 本当なら面と向かってお別れを言いたかったのだが、すぐには行けそうもないので、この場で紙とペンを用意してもらい、急いで手紙を書いたのだ。


 こんな私を拾って衣食住を与えてくれたこと。お世話になったお礼と、これからは王妃様の元で働くことになってしまったこと。時間ができたら必ずまた顔を出します、と文末を締めた。


「ああ。必ず届けよう」


 そう言って、私をここに連れてきた騎士は、部屋を後にした。



 

 それを見送ってから、病床に臥せっている人は誰かと王妃様に尋ねる。

 王妃様は他の使用人を下がらせてから、口を開いた。


「この国の王よ。レオン・オーギュスト・ド・ベルモン国王。王国の名医もついには匙を投げたわ」


 まさかの王様の名前が出てきて驚く。

 野村さん、ゲームに王様が出てくるなんて言ってたっけ?

 あんまり記憶にないけれど、もしかして病に臥せってたからゲームに出てきてないのかな?


「私は医者じゃないので診断はくだせませんが、王様の様子を見ることはできますか?」

「あなたに診断を期待しているわけじゃないわ。そうね、本来であれば気軽に謁見できるような御方ではないけれど、王妃権限で許可しましょう」


 そうして使用人に馬車を出させてまた十数分走った頃、最初に通った大きな宮殿に到着する。

 その宮殿の中央に寝室があり、そこへ向かう。

 王妃様が廊下を歩くと、それに気づいた貴族たちが頭を下げる姿が圧巻だった。

 寝室の前に控えている護衛が王妃様に敬礼し、扉をそっと開ける。

 まず寝室が大きすぎて驚く。入り口から遠く離れた窓のそばに、王の寝床があった。


「レオン様、アデルが来ましたよ」


 王妃様がその手を握るが、眠っているのか反応がない。

 素人目に見ても、状態が悪かった。


 学生時代に「病院研修」というものに参加し、病院食の献立の作り方や実際の調理、配膳まで行う時間があった。

 何度か出入りをして思ったが、死期が近い患者さんの部屋は、配膳で入るときに独特の臭いがする。

 この寝室は広くて空気が薄れているが、目の前で横たわる王様からは、似たようなものを感じた。


 これは料理以前の問題なのではないか。

 自分の死が頭をよぎり軽く絶望したが、ネガティブな考えを打ち払うように首をふる。


 私の知識はどこまで通じるのだろうか。

 今まで習ってきたことや体験してきたことを総動員させる。


「今は眠ってらっしゃいますが、起きているときはありますか?」

「ええ、起きていることには起きているけれど、起きているときはとてもお辛そうよ」

「病だと気づき始めたのはいつ頃ですか」

「そうね。数ヶ月前から腹痛を訴えていて、食事の量が減っていったの。疲れやすくなったと仰っていて、歳かななんて笑っていたのだけれど、みるみるお力を無くされて」


 歳と言っても40歳そこらだろう。この国の平均寿命は知らないが、老化現象が来るには早い。


「腹痛……、変わったものを食べたりはしましたか?」

「いいえ。食事はいつも通り宮廷料理人が作るものを召し上がっていて、変わったようには思えなかったわ。わたくしも同じものを食べていたもの」

「感染症、ではないんですよね?」

「発熱がないのでおそらく違うと医者は判断していたわ」

「他に変わったことはありますか? 行動とか」

「そうね……。まだご自分で歩いていらしたときは、息切れをしていたかしら。たまにフラフラしていたので、わたくしが支えて散歩に出る日があったぐらい」


 腹痛、食欲減少、疲労感、貧血、か。

 でもこんな症状の病気なんて山ほどあるし、決定打に欠ける気がする。


 王妃様も同じものを食べていて問題ないなら、食中毒の線は薄い。

 王様だけに症状が出るとするなら、アレルギーを疑うが、発疹や呼吸困難の症状がないのでそれも違う。


 宮廷にありそうな原因で言うなら毒殺?

 しかし王様ぐらいの人間に毒味役がいないわけがない。

 万が一毒殺なら、私にできることはひたすら代謝を高めて排出を促すだけ。

 しかし毒であるなら、医者のほうが詳しいから分かるはずだろう。


 ーーでも、この時代ではまだ未知の病だとしたら?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ