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第69節 回答と仲間

「トキト話にはもうちょっと脈略ってものを……」


 トキトの突然の提案にシャルはまた呆れたような口調で説教を開始する。


「あのよくわからないんですが、パーティって……」


 パーティが何かはわかっている。わかっているも何もさんざん依頼を出して断られてきたのだ。

 しかし高い回復能力を持つアカネは別として、書き師であるグラフォスをパーティに入れるメリットは限りなく少ない。ないといっても過言ではない。


 それをトキトはわかっているのだろうか。


「これはシャルも了承済みのことなんですか?」


 もしかしたらトキトが暴走して勝手にそういっているだけかもしれない。

 グラフォスはそう考えて戸惑いながらもシャルに確認を取る。


「ええ。あの森での戦闘全てを通して、私とトキトだけだと間違いなく死んでたと思うし、実際にトキトは一回死んでいるようなもの。相性も悪くないみたいだし、優秀な冒険者を逃す手はないでしょ?」

「でも僕は『書き師』ですけど……」

「あんな誰も見たことが無い魔法を使えるんだから、職業なんて関係あるか」


「私は回復しかできないけど……」

「その回復力がすごいのよ。グラ君だって魔法陣を介した魔術を使えるのに、この街でいるなんてもったいないと思わない?」


 グラフォスとアカネも突然の勧誘に戸惑ってはいるが、その提案は願ったりかなったりだ。


 グラフォスはあの森での出来事を通して、もっと世界を見たいと思った。

 アカネはそれについていくといった。


 二人でも普通の魔物程度であれば特に苦労することもなく、勝利することができるだろう。

 しかし今回のように突然強い魔物と遭遇した場合、どちらかが死んでしまう確率は上がってしまう。


 だがそれもトキトとシャルがいるなら話は別だ。


 トキトの攻撃力は言わずもがなだし、グラフォスができないサポート魔法が使えるシャルも貴重だ。

 確かに考えれば考えるほど、攻撃型のトキト、サポート型のシャル、そして万能型のグラフォス、回復型のアカネ。


 それぞれがそれぞれできない部分を補い、遠距離でも近距離でも対応ができるバランスの良いパーティかもしれない。


「まあすぐにっていうのは難しいわよね。もともと明日までこの街でいるつもりだったから、それまでに決めてくれればいいわよ」

「今日グラフォスが来なければ、もう街を出ようと思ってたけどな!」

「トキトは余計なこと言わない。焦らせるだけでしょ」


「行きます」


 グラフォスの答えはとっくに決まっていた。

 こんな機会を逃す理由が見つからない。


 しかし思わず口に出した後で、アカネの方に目を向ける。

 彼女の意志を聞かずに先に答えてしまった。

 そんな罪悪感からアカネの様子を確認したのだが、そんな心配は不要だったようだ。


「私はさっきグラフォス君に言ったことは変わらないよ。どこに行くとしても私はついていく」


 グラフォスの目を見つめるアカネの顔は優しいほほえみを携えたもので、やる気に満ち溢れているように見えた。

「えっと……そんな即答してしまってよかったの?」

「もちろん。戦闘バランス的の相性はいいですし、別に人間関係にも問題がありそうな感じではなさそうですし、僕としてはむしろこちらからよろしくお願いしますっていう感じです」

「それなら決まりだな!」


 トキトは最初から答えがわかっていたかのように、ギルドの受付へと進む。


「トキトもああ見えて結構不安がっていたのよ。珍しく断られたらどうするかなーとか弱弱しいことを言っていたわ」

「それは……意外ですね」

「全然わからない……」


 そんなトキトのことを話していると、彼女は受付からドリアを引っ張り出して三人が座るテーブルへと戻ってきた。


「グラフォス君、トキトさんたちとパーティを組むって本当!?」

「まあ、そうなりました」

「そっかー、よかったねえ。ついにあのグラフォス君がパーティ結成かー」


 ドリアは感慨深そうにグラフォスの頭を撫でようと手を伸ばしてくる。

 というかちょっと涙声に聞こえるし、目がうるんでいる気がするがきっと気のせいだろう。


 グラフォスはそんなドリアの魔の手を器用に首だけ動かしてよけ続けていた。


「なんでよけるのよ!」

「グラ君って結構な苦労人なの……?」

「パーティ結成するだけでギルド嬢を泣かせるなんてなかなかやるじゃねえか!」

「グラフォス君大変だったんだね……」


 何やら新しい仲間にいろいろと勘違いされているようである。

 そんなに大変ではなかったし、グラフォスは一人で行動するのが嫌いなわけではない。

 だから決して苦労をしていたわけではない。


 ドリアが大げさすぎるのだ。


 グラフォスは顔をしかめながらそんなことを考えていた。


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