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第70節 英雄創作《ヒーロークリエイト》

「そういえばトキトさん。パーティを組むとなれば名前登録が必要ですけどどうします?」


 グラフォスがトキトとシャルに謎に同情され、そんな状況を見てアカネが綿綿と慌てている奇怪な状況の中、そんな光景を生み出した発端であるドリアが突然仕事モードになって、トキトにそう尋ねる。


「そうか、名前か! 何がいいかなあ。何かいい案とかあるか?」


 さすがにパーティ名となると、トキトも突っ走って勝手に決めたりはしないようだ。

 グラフォスは少し考えると口を開く。


「『四人パーティ』とかじゃだめなんですか?」

「グラフォス君それは……」

「まんまだな!」

「グラ君って魔法名詠唱の時も思ってたけど、ほんとにネーミングセンスがちょっと……あれなのね」 


 シャルは苦笑いしながら言葉を濁してくれたが、自分にネーミングセンスがないことくらいグラフォスも気づいている。

 魔法に大事なのはイメージ力だ。もちろん名前も大事だが、イメージできることが一番だ。


 大剣を模した魔法を顕出するのであれば、大剣と名前についていたほうがわかりやすいに決まっている。


「自分の魔法にそこまでこだわりもありませんしね……」


 まあ試しに出してみただけで、それが本当に決まるとは思っていない。

 ここまでひかれるとは考えてもいなかったが。


「グラフォス君、パーティ名っていうのは名前を付けるっていう意味があるだけじゃなくて、そのパーティのモチベーションにもつながるし、生存率も上がる可能性があるの。もちろん名前が有名になればその名前自体が権力になることもある。それくらい名前は大事なんだよ?」


 ドリアはグラフォスに諭すようにそう話す。

 確かにかっこいい名前を付けているパーティは多いし、ほとんどがそうだ。


 『ドラゴンスレイヤー』なんて名前だったりしたら、これまでドラゴンを何体も倒してきたのかと、実際にそうでなくても何かしら関係があるんだろうなって思ったりもする。


「私たちを象徴する名前ってことよね」


 シャルの発言を受け、グラフォスは再び頭を回す。


 グラフォスたちのパーティを象徴する名前……。

 トレントキングを討伐したのだから、トレントハンター……? 

 いや多分これも却下されるだろう。


「なかなか思いつかないものだね……」

「そうだなあ。『クロックスタート』とかどうだ?」


 今日もトキトのネーミングセンスが光っている。

 どういう意味なのかは全く分からないが。


「どういう意味なの?」

「俺たち戦闘をする中で結構相手の動きを止めたり、足を止めたりする攻撃が多いだろ? まあそれがなかったら勝てなかったわけだし。だから敵は止めるけど、俺たちは止まらねえ! 的な?」


 確かに逆説的な意味としては理にかなっているような気がする。

 ただシャルとアカネはなんだかしっくり来ていないような表情をのぞかせていた。


「だめかあ。じゃあもう万年岩とかでいいんじゃね?」

「それ自分で言っててむなしくならないの?」


 思考をやめたトキトのセンスが格段と落ちる。

 しかしグラフォスはトキトの言葉を聞きながら思考を続けていた。


 確かにこれまでの戦闘からとるのもありか……。 

 これまでの戦いで思い出されるのはどうしたって、仲間の姿だ。


 グラフォスが死にかけたときに、トキトが死んでしまった時にとんでもない魔法を使ったアカネの姿。


 どうしようもなくピンチの時に苦手だという通常魔法を使って敵の動きを止めたシャル。


 そしてトレントキングとの戦闘で炎の花を咲かせたトキトのあの姿。


 自分が負けたときのものは特に記憶に残っていない。

 いや、残ってはいるがそれよりも仲間の姿が印象的すぎて薄れている。

 あの時彼女らはグラフォスにとって英雄だった。


 おとぎ話や昔話に出てくる英雄の姿とどうしようもなくかぶって見えたのだ。


「……ヒーロークリエイト」


 グラフォスは英雄になりえない。そんなおこがましいことを望んだりもしない。 

 ただ自分は世界を見て、できることならこの世界の理すべてを知ることができればいい。

 そう考えているだけだ。


 でもほかの三人は違う。アカネの魔法はトップクラスのパーティを超えているし、シャルのサポート魔法も然りだ。


 そして何よりあの戦闘でのトキトは間違いなく英雄の姿だった。


 この三人であれば英雄になりえるかもしれない。


「ヒーロークリエイト?」

「どういう意味なの?」


「……三人は僕の英雄です。これから僕たちが世界にとっての英雄になるのかどうかは知らないし分からないですけど、少なくとも僕にとっては、すごい存在なので、できることなら皆さんを世界の英雄にしたいなっていう……」


「英雄を創りあげるか……なんかよくわかんねえけどかっけえな!」

「確かにこっちはなんだかしっくりくるわね」


「私にとってもグラフォス君は私の英雄だからね!」


「いいじゃねえか、英雄を従える書き師っていうのも!」

「そういう意味で言ったんじゃありません」


 グラフォスとトキトが言い合いしている間にシャルがドリアが差し出したパーティ申請書に『ヒーロークリエイト』とかきこんでしまっていた。


「いいんですか?」

「みんな納得してたしね。こういうのは決めちゃった方がいいのよ」


 グラフォスは自分が提案したパーティ名が採用されたことと、アカネに自分のことが英雄だといってもらえて、少しうれしさを感じていた。


「じゃあ始めようぜ! 俺が英雄になる旅をよ!」

「俺たちが、でしょ」

「私は皆さんのお役に立てるよう頑張ります!」

「僕は英雄になんてなれませんしね」


 口々に今の思いを口にしながらギルドを後にする。



 これは一人の書き師が英雄を創りあげる物語。

 小さな町の英雄なのか、はたまた世界を救う英雄なのか。

 それは今はだれにもわからない。


 グラフォスにとって一番重要なのは世界を知ることである。













==============

第一部完結しました。

ここまでお読みいただいた方は本当にありがとうございます。 

拙い文章で読みづらい箇所も多々あったと思いますが、精進します。

第二部ですがグラフォスたちはとうとう街を出て旅に出るわけですが、もちろん

ミンネが簡単に了承してくれるはずがありません。

第二部のテーマは『師弟対決』です。

ここまで毎日投稿してきましたが、ストックが0のためもしかしたら数週間更新がないかもしれません。

更新が再開された際には、また覗いてくれると幸いです。

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