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第66節 これまでとこれから

 アカネは長くしゃべりつかれたのか話し始める前と同じように、静かに目を閉じてそして大きく息を吐きながら、背もたれにもたれた。


 ところどころ聞き取れない単語は出てきたもののそんなものが気にならなくなるくらいには、衝撃的すぎる話だった。


 まず魔物ばかりがいる、しかも城まで抱えている国なんてグラフォスは聞いたことが無い。


 ミンネは今の話を聞いて顔をしかめているあたり、もしかしたら思い当たる節があるのかもしれない。


「大丈夫かい?」

「はい、意外と大丈夫みたい」


 ミンネがアカネを気遣うように話しかけていたが、そんな中でもグラフォスは気になることがあった。


「他人が回復できないって言ってましたけど、僕とかは普通に回復できていましたよね?」

「うん、あの時は必死だったし、役に立たなきゃって言うよりなんとかしなきゃって感じだったし、私を助けてくれたグラフォス君が死ぬのは、その……いやだなって思って、気づいたらつかえてたって感じかな」

「そうなんですね……」


 確かに魔法を使用するときにイメージ力というのはある程度の効果の増大をはかれる。


 そこまで精神的状態に直結して魔法が使える使えないというのは聞いたことが無いが、アカネはそもそも魔法の力を手に入れた経緯が特殊なため、そういうこともあるのかもしれない。


「私としては逃げてきてよかったというか、それが正解だったというか……グラフォス君やミンネさんに出会えたわけだし。迷惑かけてばっかりだけど」

「いえ、とても助かってますよ。アカネがいなければ間違いなく僕は今ここにいませんでしたし。心残りはネオにもう少し痛い目を見させられれば良かったんですけど」


 グラフォスは淡々と事実と自分が思っていることをアカネに伝える。

 その口調にアカネを気遣うような雰囲気は一切込められていなかったが、それでもアカネは嬉しそうに頬を赤らめていた。


「フォスの死んでいたって発現は聞き捨てならないけど、それが事実だとすれば私の大事な子をアカネちゃんが守ってくれたってことだからね、感謝こそすれど迷惑だなんて思うわけないね」


 ミンネもグラフォスの言葉に続いてそう言葉をつづる。

 アカネの瞳からは涙が零れ落ちていた。


「それにしてもフィーコーか……」

「ミン姉何か知っているんですか?」

「いや私も話に聞いたことがあるだけなんだけどね。魔族だけが住んでいる世界があるとか。信じてなかったけど、これはどうもきな臭いね」

「そんな国が異世界からたくさんの超人的力を持った人たちを集めているとなると、確かにそれはただごとではないですね」


 それにアカネの話とネオが言っていたことを併せて考えるとわかることもあった。

 恐らくあの方というのはアカネもとい異世界転移者に力を与え、アカネが城から逃げ出そうとしたときに遭遇した人物のこと。


 人に力を与えるという絶大な力を持っていることからかなりの権力者、もしかしたらその国のトップなのかもしれない。


「承認欲担当……承認欲求……」

「グラフォス君?」

「こうなったフォスはしばらく止まらないからほっときな」


 承認欲求がその権力者らしき人物に言われていたネオ。

 そしてあの戦闘の時に承認欲担当と言っていた。


 あの方というのがアカネがあった人物とイコールプラスその人物がかなりの権力者であるということが前提にはなるが、ネオはあの方なるものにかなり近い側近的ポジションについていた可能性が高い。


 グラフォスはそこで思考が止まる。

 これ以上のことを知るには自分の知識が足らなさすぎる。


 もっと世界を知らないといけない。


「やっぱりトキト達と会うことも考えて、一度ギルドに行った方が良いですね」

「そうだね。早くしないと町から出ちまうかもしれないからね。行けるうちにお礼くらいは言っとくべきだね」

「私もついていく」

「体の方は大丈夫ですか?」

「それはどちらかというとこっちのセリフだよ。グラフォス君は大丈夫そうなの?」


 アカネに苦笑いを向けられながらそう言われ、グラフォスは自分の体の調子を確かめるように手を開いて閉じる。


「特に問題はないみたいですね」

「そんな確認で大丈夫?」

「大丈夫ですよ」


 立ち上がってもふらつくことはないし、おなかがすいていることもない。

 目も冴えているのだからいつもよりも調子がいいまである。


 そんなグラフォスの様子を見て、ミンネはただただ呆れたように笑っている。


「まあ報酬も出るだろうからちゃっちゃといってきて、今日はおとなしく帰ってきな」

「さすがにそのつもりですよ」

「ほんとかい? アカネちゃん、フォスが急に森に向かおうとしたら泊めてもらっていいかい」

「任せてください!」


「僕ってそんなに信用がないですかね」

「信用がないというかフォスの危険に突っ込むそれはもはや病気だからね」

「失礼な。僕は知りたいことをこの目で確かめに行っているだけですよ」

「はいはい」


 グラフォスのふてくされたような言い訳をミンネは手を振って一蹴する。


「まあともかくさすがに僕も今日は行くつもりはありませんから。じゃあアカネギルドに行きましょうか」

「わかった!」

「気を付けるんだよ」


「「行ってきます」」


 グラフォスとアカネは立ち上がると一回に下りて、外へと向かう。


 まだギルドにトキトとシャルがいてくれるといいのだが……。


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