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ペダルを漕いで
自転車をこぎながら、信一は教会での日々を思い出していた。
両親を亡くした時のこと、奈美も失ってしまった時のこと、神父服を初めて着た時のこと、懺悔室に初めて入った時のこと……
懺悔室で、初めて話した人は、ある婦人だった。
姑との折り合いが悪く、もう殺してやりたい……!的なことを涙ながらに語られ、最後に
「……でも、私が好きな旦那の母なんで何とか、上手くやっていきたいと思います……」と明るく言い残し、去って行かれた。
そんな彼女に、信一は、アタフタしながら、
「か、神の御加護を」と言った。
自転車が信号で止まる。
青になる。
信一は、こぎださない。下を向いたままだ。
信号は、再び赤になる。
彼は考えていた。
(俺は……俺は色々あって生きる意欲も失いかけていた……結果的に、教会にいて、神父となり、救われていたのは俺なんだ……でも、最近、何か色んなことに違和感がある……違和感が。
だから、行くんだ……俺は行くんだ!)
信号は、再び青に。
彼は顔を上げて、ペダルをこぎだした。




