52
次の日から、信一は、教会を出る準備を始めた。正山に言ったように働く会社の近くにアパートを借りて一人暮らしに向けて着々と進めた。
それは、スムーズに行き、三日後、ついに教会を出ることになった。
信一は、教会を出る直前、今まで着ていた神父服をキレイに折り畳み、自分の部屋のタンスに閉まった。
そして、物心ついたときから、いつもしていた十字架のペンダントもスゴく悩んだ末、首から外して机の引き出しに閉まった。
そして、信一は自宅の玄関に向かい、自転車に股がった。
後ろから「信一」と声がして振り向くと、正山が神父服を着て立っていた。
手には、将棋マガジンと囲碁ジャナールを持っていた。信一は、それを見て笑った。
正山が、少しオドケテ言う。
「今から、私が懺悔室で待機するからの。聖書は既にワシの頭にも心にも、しっかり入っておるから!」
「じいちゃんは、その域だよな!
じゃあ、じいちゃん、俺、行くよ!」
「信一、懺悔室で、お前の話を盗み聞きして本当に悪かったな……ただ、前も言ったが、お前が、私の知らないところで何かおかしなことをやらかさないか心配だったのはホントなんじゃ。
でも、もう、お前は立派な大人だ。なぁ、信一、何かあったら、また、いつでも、ここに帰ってくるんだぞ!」
「ああ、わかったよ、じいちゃん!また、たまには顔も出しに来るから」
「どこにいても、お前が元気に過ごしていれば、私はそれでいいんじゃ。
おまえ、最近、私の若い頃に更に似てきたわ!息子より、孫のお前の方がワシに似とるわ♪」
「え、本当にσ(^_^;)?」
「信一、私より先に逝くなよ……ワシを、本当の意味で一人にしないでおくれ……」
「だ、大丈夫だよ!じいちゃん!俺は、そう簡単にクタバラナイよ!じゃあ、いくね!!」
「神の御加護を」
そう正山に言われ、信一は手を組み祈っている彼から向きをかえて自転車をこぎだした。




