チーム 赤金の風
「あの、ミーナさんは――」
「ミーナでいいよ!」
「あ、ありがとう。ミーナは、アギトと同じパーティなの?」
俺は、緊張してまだ上手くミーナと話せなかった。
それでも、これが今一番気になることだった。
答えは十中八九、イエスだろう。
それでも聞かずにはいられなかった。
ミーナは、俺の質問に対してすぐに答えることはなかった。
顔を赤くして視線を下の方に逸らした。
そして、アギトの方を伺うようにチラチラ見ていた。
(え?この反応って……)
「そうだよ。ミーナは赤金の風の一員さ。元々は、僕たちはただの幼馴染だったんだけど、色々あってこの世界に一緒に転移してきてね。今では一緒の冒険者パーティを組んでいるってわけさ」
答えにくそうにしていたミーナに変わって、アギトが淡々と答えた。
アギトが話している間、ミーナはそわそわしているように見えた。
「幼馴染、だって!?」
俺は、信じられない答えに驚愕する。
アギトとミーナは、ただの冒険者仲間ではなかった。
なんてことだ。
パーティを一緒に組んでいるだけでなく、ミーナと幼馴染だなんて……。
アギト、どこまで羨ましいやつなんだよ!
(それじゃあ、もしかしてミーナの反応は……?)
俺は、さきほどまでのミーナの動きの謎について考えた。
そして、その理由がなんだったのか俺は、分かった気がした。
「ミーナ、悪いんだけど他の二人もここに呼んできてくれないか?」
「「え??」」
俺とミーナは同時に驚く。
アギトは俺も驚いていることを不思議に思ったのか言った。
「どうして、レイジも驚くんだい?」
「いや……何でもないんだ!」
ミーナが離れていってしまうのが、嫌だと思ったなんて言えるわけがない。
そのミーナは、アギトの真意を知りたがっていた。
「どうしてなの?アギト」
「二人にも、レイジのことを紹介したいんだ。だから、お願いできないかな?」
「なんだ、そういうことね!分かった、二人を呼んでくるね」
「ありがとう、ミーナ」
ミーナは、しばらく離れてしまうのか……。
俺は一人でがっかりしているとミーナは言い残したことがあったようで。
「あ、あのね、その前にアギト。一つだけいい?」
「どうしたんだい?」
ミーナは、言いにくいことなのか照れているのか顔を俯かせた。
(か、可愛い!)
この可愛さは反則だ!
それも、リリスにも匹敵する可愛さだ。
ただ、可愛いだけでなく大人の魅力も持ち合わせているところも完璧だ。
俺が勝手に盛り上がっていると、ミーナはゆっくり口を開いた。
「私ね、アギトがいなくなっちゃったことを考えたら、とても不安になったの……!だから、だからね……」
「何言ってるんだよ。僕がミーナを一人になんかしないよ。一緒に元の世界に帰ろうって約束したじゃないか?」
「そ、そうだよね……。ごめんね!私、2人を呼んでくるね!」
ミーナは、恥ずかしそうに駆けて行った。
後には、俺とアギトだけが残された。
なんだ、これは……?
こんなの、こんなの……。
(ただのラブコメじゃねぇか!!)
「甘酸っぱすぎるわ!!」
俺は、感情が爆発して思ったことを口にしてしまう。
それに、驚いたアギトは体をビクつかせた。
「どうしたんだい?!レイジ……!」
「アギト、さっきのミーナの気持ちは分かったのか?」
「えっ?この世界に来て、まだ不安なんだなって。僕がしっかりしないといけないなと思ったよ」
「なんだ、それ!全然違うだろ!」
「えっ?!」
ミーナの顔は、絶対に乙女の顔だった。
あまり女子に詳しくない俺でもそう感じたくらいなんだ。
間違いないだろう。
「ミーナは、アギトに好意を寄せているぞ」
「ミーナが!?僕に?好意だって?!そんなわけないよ。僕らは、ただの幼馴染だよ?!」
「それが王道展開なんだよ!」
これで全てが繋がったな。
アギトの感じていた仲間との距離感とは、恋愛感情によるものだったのだ。
だから、ミーナはアギトによそよそしい態度を取っていた。
確かに、アギトはカッコよくて性格も良い。
そう考えても、同じパーティを組んでる女子が好きにならない方が難しいだろう。
ましてや、幼馴染だ。
(でも、まてよ。ということは……!)
「アギト、お前の悩みって、実は同じパーティの女子二人からモテているが、それに気付いてなくて悩んでいたってことか!?しかも、1人は美少女の幼馴染!もう、羨ましすぎて反吐が出そうなんだが!というか、顔に吐いていいか!?」
「落ち着いて、レイジ。急にどうしたって言うんだい……!?」
「これが落ち着いていられるか、いいや、いられないね」
「反語?!」
これは反吐が出るほど羨ましい。
あんな美少女に好意を寄せられているなんて。
今ここに、ハンカチでもあればキーっと噛みちぎりたいくらいだ。
それに、気づいてないとはどれだけ鈍い男なんだ、アギトは。
とんだラブコメ主人公野郎だ。
というかもう、アギトが主人公でいいんじゃないか!?
まだ、アギトは俺の言ったことを理解していないようだった。
しかし、俺が本当のことをアギトに伝えていいのかは考えさせられる。
なぜなら、ミーナの気持ちもあるからだ。
アギトが気づいていないということは、ミーナもまだアギトに気持ちを伝えていないはずだ。
だからこそ、彼女の気持ちを汲み取るならば、言うべきではない。
それに、俺は可愛い子の味方でありたい!
❖
それからしばらくして、ミーナは二人の冒険者を連れて戻ってきた。
相変わらず、アギトは俺の言ったことを分かっておらず、ずっと考えていた。
やってきた冒険者の1人は、魔女だった。
ミーナ同様、こちらも美女だった。
年齢は俺よりもいくつか上だろうか。
その年齢差が大人の妖艶さを感じさせる美しさだった。
残念だが、胸の方は妖艶ではなかったが……。
もう一人は、男の冒険者だった。
この男がアギトの言っていたケイジーンなのだろう。
その鍛え抜かれた肉体は見事で何か格闘技でもやっていそうだった。
顔は爽やかイケメンといった感じで、アギトとはイケメン部類も違っている。
(何なんだ、この美男美女の冒険者パーティは……!)
「アギトくん、探したょ……」
「先にギルドに行ってたとはな!」
「ごめん!二人も僕のことを探してくれていたんだね」
アギトは、即座に謝る。
こんなに心配されるなんて、仲間もアギトのことが好きなんだな。
「んで、紹介したい奴ってのはそいつか?」
「そうだよ。さっき友達になったレイジだ!とても良いやつなんだ」
「初めまして、俺がレイジだ。よろしくな」
今度は、緊張せずに自己紹介を済ませられた。
格闘家の男が、威圧感があって少し怖かったが。
「はじめまして、私はステラですぅ……。その、よろしくお願いしますぅ……」
「俺はケイジーンだ。アギトは俺の大恩人だ。アギトを困らせるようなことがあれば、俺が許さねえ」
ステラは、弱々しく言った。
人見知りで人前で話すのが得意じゃないタイプなのかもしれない。
反対に、ケイジーンは力強い感じで威圧的にも感じた。
正直、怖かった。
それでも、ケイジーンがアギトのことを慕っていることは伝わってきた。
さすが、アギト。
人望も厚いなんて、完璧過ぎてもう非の打ち所がない。
「ケイジーン、心配無いよ。レイジは本当に良いやつなんだ」
「アギトがそういうなら……、安心だな!レイジ、威圧してすまなかった」
「納得早っ!!別に謝らなくても……」
ケイジーンは、急ににこやかになった。
まるで、ロアのことが好きなヴェーノのようだな……。
とりあえず、ケイジーンが怖い人でなくて安心だ。
それに、何度もアギトが俺のことを良いやつだと言ってくれたのも嬉しい。
「そうだ、レイジ。ステラもケイジーンも巡り人なんだよ」
「え?二人とも」
「ああ、もう何度も異世界転移を繰り返してるぜ」
「私も……。ケイジーン君とは少し違うんですけどぉ……」
どうやら、アギトの率いる赤金の風は全員が転移者であるようだ。
今日だけで、転移者4人に会うとはとんでもない日になったな。




