浄化の魔法
食事を終えて、二人で部屋へと戻る。
時間帯もすっかり遅くなっており、今から別の宿を探すのは難しそうだ。
俺は仕方なく、ロアを部屋に泊めてやることにした。
(明日こそは、絶対に別の宿を借りさせる)
二日連続、女子と同じ部屋で寝泊まりなんて、今までの人生から考えるとありえないことだ。
しかも、違う女子だ。
クラスの男子にこんなことを話した日には、羨ましがれた後にタコ殴りに会うこと間違いなしだ。
でも、そんな人から羨ましがれそうなことでも俺にとっては、全く嬉しくもなんともない。
今の俺は、とにかく睡眠を確保したかった。
昨日の寝不足もあったり、色々なことがありすぎて、正直おかしくなりそうだった。
それくらい疲労がたまっていた。
そんな状態で、恐らく空気が読めない系女子であるロアと二人きりで寝泊まりなど、嬉しいはずがない。
「こっから半分は好きに使っていいぞ。もう半分のベッドで俺は寝るから、もう邪魔しないでくれよ」
「待ってくださいっ、レイジさん」
俺が、ベッドの領土を取り仕切り、完全睡眠モードに入ろうとしたところで、ロアに待ったをかけられた。
やっぱり、空気を読んでくれないようだ。
「その格好で寝るつもりですかっ?」
「ああ、着替えとかないからな」
「さすがに、それは衛星的に良くないですっ。それにレイジさんも、汗臭くて嫌だと思っていませんかっ?」
ロアにそう言われて、俺は今までのことをあれこれ思い返していた。
まず、異世界から来た初日。
俺は、村人たちの宴に参加し、なぞの踊りに付き合わせられた。
1時間以上は、躍ったし、たくさん汗をかいた。
そして、昨目。
森でリリスと悪魔と出会った。
俺は、悪魔の恐さで思わず冷や汗をかいた。
最後に今日。
俺は、クエストで必殺技を披露するが、盛大に恥をかいた。
かつてはないほど、嫌な汗をかいた。
こうして思い返してみると、この3日間で信じられないくらい汗をかいたかもしれない。自分では、分からなくなっているだけで、本当は、ものすごく臭いのかもしれない。
だが、それでも……。
「思わないよ。それに、俺、汗かかないから」
「どんな特殊体質ですかっ!」
俺は眠かった。
この宿には、洗濯機など存在しないし、ましてや替えの服もない。
今から買いに行こうにも、店は閉まっている。
俺が、汚れていて汗臭くても、どうしようもないのだ。
それに、部屋に泊めてやるのに、そこまで文句を言われる筋合いもない。
なので、もう寝る。
「何を言われようとも、俺は寝るからな」
「そんなの駄目ですっ。不潔ですっ。不衛生ですっ。ばい菌ですっ。ゴミですっ」
「それは、言いすぎだろ!!」
ロアが連続で暴言を吐いてきた。
やっぱり、外に追い出そうかと思っていると、ロアが俺の服に手をかざし始めた。
「クリーン」
すると、俺の服が輝き始めた。
そして、汚れやシワが無くなり、買ったままのような綺麗な状態になった。
「今、何をしたんだ?」
「これは、『クリーン』という洗化魔法ですよっ」
「洗化魔法?なんか、俺の知ってるのと違うんだけど」
「この魔法は、悪霊を払うことはできませんけど、色んな汚れを落として綺麗にすることができますよっ」
「なんだよ、その主婦の味方みたいな魔法は!」
「クリーン」
俺が、驚いていると続いてロアは、俺はズボンにも触れて魔法を唱えた。
すると、ズボンの汚れも完璧に落ち、ピカピカな状態へと変わった。
「さあ、次は下着を綺麗にしますので、ズボンを脱いでくださいっ」
「嫌だよ」
「何でですかっ?」
「恥ずかしいからに決まってるだろ!」
「いいから脱いでくださいっ」
「おい、やめろって!」
ロアが俺のズボンに手をかけ、無理やりにでも脱がそうとしてきた。
俺は必死にズボンを抑えることで抵抗する。
俺だって、年頃の男なんだ。
他人の女性にパンツを見られるのは恥ずかしい。
それに、二人きりの空間だ。
色々と問題がある気がして、抵抗する力にさらに拍車がかかった。
必死に抵抗を試みるが、圧倒的な力の前に取り押さえられてしまった。
レベル差、恐るべし。
ロアに無理やりズボンを脱がされ、俺のパンツが露わになる。
「クリーン」
そして、ロアが俺のパンツの上から魔法を唱えた。
その瞬間、パンツと一緒に俺の何かが浄化されるのを感じた。
❖
浄化魔法は、衣類のような物だけに留まらず、身体まで綺麗にすることができるようだ。
なので、賢者モードの俺はついでに身体まで清めてもらった。
この魔法のおかげで、風呂に入ることなく、清潔に過ごせることができる。
それでも、やはり風呂には入りたいが。
ロアとちょうどベッドを半分にして、布団に入る。
最初は、反対側を向いていたが、ロアがどうしているか少し気になって向きを変えた。
すると、ロアも、こちらを向いていたようで目が合った。
「女神さまもお休みになられるんですね」
「どうかしましたかっ?レイジさん。どこかよそよそしくありませんかっ?」
「いえ、そんなことはないです。明日もまた頑張りましょうね」
「やっぱり、何かあったんですかっ!?」
ロアは心配そうに見つめてくる。
ただでさえ、2人だけの空間なのに、近い距離で見つめられると余計に緊張するからやめてほしい。
俺は、寝返りを打つフリをして、ロアに背を向けた。
「そういえば、聞きましたかっ?この町には、道場という力をつけるところがあるみたいですよっ」
「それは、初耳ですね」
道場か。
もしかしたら、ゲームによくある、レベル上げをするような施設なのかもしれない。
そこに行けば、俺も少しは強くなれるだろうか。
行ってみるだけの価値はあるかもしれない。
そこまで考えたところで一気に眠気が襲ってきた。
今日も色々あったが、癖のある仲間が二人も増えた。
これから、色々と苦労しそうだ。
俺は賢者の祈りを捧げながら、深い眠りについた。




