三人目のメンバーの話
「そういえば」
ママがグラスを拭きながら口を開く。
「日向ちゃんに紹介したい子がいるのよ」
「え、急になんですか?」
俺の右側で椅子が鳴る。
振り返ると結が俺をジト目で見ていた。
「兄さん」
「なんだよ」
「次の浮気相手ですか」
「なんでだよ!」
「そうじゃないのよ、結ちゃん。ここみっしゅの話」
「……ここみっしゅの?」
「もう少し人数を増やせるなら、入れてあげてほしい子がいるの」
結の顔から、鬼が半分だけ引いていく。
俺は姿勢を直した。
「どんな子ですか?」
「そうねえ」
ママはグラスを置いて、少しだけ声を落とす。
「商店街の外れに、古いベンチがあるでしょう。あそこによく座ってるの」
「ベンチ、ですか」
「アタシが声をかけたのが去年の秋かしら。それからなんとなく、うちに寄るようになってね」
「学校は行ってるんですか?」
「ちゃんと高校に通ってるわよ。ただ居場所があるかっていうと、たぶん、ないのよねえ」
カウンターの端で、カシラがジョッキを置く。
「俺も会ったことがあるが、ハーフでな」
「ええ。お父さんが日本人で、お母さんがロシアの方。お父さんの転勤で数年前にこっちに来たんですって」
「日本に馴染めてないんですか?」
「そうねえ」
ママは言葉を選んでいる。
「悪い子じゃないの。むしろ、こんなに可愛い子いる? ってくらい可愛いのよ。元気だし、素直だし、抱きしめたくなっちゃうくらい」
「じゃあ、なんで」
「……まあ、私からは何とも言えないわね」
ママにしては歯切れが悪い。
「高校生にしては、ちょっと変わっているところはあるけどね」
「変わってるって、どういう」
「会えば分かるわ」
それ以上は教えてくれない。
代わりに、ママは名前だけ寄越した。
「ミアちゃん。白河ミア」
「ミア」
「アタシも面倒は見てるけど、こういうお店だとできることに限りがあるでしょう」
ママはカウンターに肘をついて、俺を見る。
「日向ちゃんに任せられたら、それが一番いいと思うの」
「おう」
カシラが俺の肩を叩く。骨が鳴った。
「日向。男見せて来い」
ここみっしゅを何人のグループにするのか、実のところ、まだ何も決まっていない。
二人でやるのか五人にするのか、十人集めるのか。フェスの規定を読んでも「一組」としか書いていない。
とにかく、行動あるのみだ。
「会ってみます」
「よかった」
ママが笑って、それから寝ている環を見つめる。
「この子たちのこと、よろしくね」




