表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

信じる理由

神谷 恒一は、目の前の現実を疑っていた。


人が止まる世界。

勝手に選ばれた選択。

そして「第一フェーズ開始」という通知。


全部が現実離れしているのに、心だけは異様に冷静だった。



「ねえ」


声がして振り返ると、奈緒が立っていた。


いつもと同じ距離。

いつもと同じ表情。


だが、今はそれが逆に怖い。



「お前、俺に何させたいんだ」


神谷は単刀直入に言った。


奈緒は少しだけ黙る。


「何も」


「……は?」



「信じるかどうかは、神谷くん次第」


奈緒はそう言って歩き出す。


神谷は反射的に腕を掴んだ。


「ふざけんなよ」



奈緒は止まる。


一瞬だけ、空気が変わる。



「離して」


その声は、今までより少し冷たかった。



神谷は手を離さない。


「説明しろ」


「俺だけ巻き込まれてるみたいな言い方すんな」



奈緒は小さく息を吐いた。


「巻き込まれてるんじゃないよ」


「もう“選んでる側”だよ、神谷くんは」



その言葉が引っかかった。



「選んでる?」


神谷は笑う。


「勝手に選ばされただけだろ」



奈緒は神谷をまっすぐ見た。


その目は、初めて少しだけ揺れていた。



「じゃあ聞くけど」


「もし本当に全部やめられるなら、やめる?」



神谷は言葉に詰まる。



資産。

ランク。

異常な現実。


そして――奈緒。



「……やめられるわけないだろ」


それは本音だった。



奈緒は少しだけ目を伏せる。


「それが答えだよ」



沈黙。



「奈緒」


神谷は声を落とす。


「お前は俺のこと、どう思ってる?」



奈緒は一瞬だけ止まった。


そして、小さく笑う。


「怖い人」


「は?」



「普通の人はね、ここまで来たら逃げるの」


「でも君は、踏み込んできてる」



神谷は一歩近づく。


「それで?」



奈緒は視線を逸らした。


ほんの少しだけ。



「……嫌いじゃないよ」



その一言が、逆に一番危険だった。



その瞬間。


スマホが鳴る。


《第1フェーズ:対象間干渉開始》


《条件:感情リンクの発生》



神谷の背中が冷たくなる。


「感情リンク……?」



奈緒の表情が一瞬だけ変わる。


「最悪だね」



「なにが」


神谷が聞く。


奈緒は静かに答える。


「恋愛が、システムに利用される段階に入った」



夜風が強くなる。


さっきまで普通だった世界が、少しだけ“歪む”。



神谷は奈緒を見る。


そして気づく。


(この感情すら、仕組まれてるのか?)



それでも。


手を離す気にはならなかった。



奈緒は小さく呟く。


「それでも離さないんだね」



神谷は答えない。


ただ、握った手の力を少し強くした。



その瞬間。


《干渉レベル上昇》


《イベント:恋愛干渉モード開始》



世界は静かに、最も危険なステージへ進み始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ