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38. 明かされる秘密

「なかなかの見応えだったね。経費や警備の面からも罪人を凍らせて移送するのは良い方法だし……。今度からそうしようかな」



 レオンハルトが真面目な表情で言う。



 昼下がりの王太子執務室。部屋の主であるレオンハルトは、フリオニール、近衛騎士のディーンとともに、先ほど軍関係の施設が集まる騎秀宮(きしゅうきゅう)から戻ってきたところである。




 冗談なのか本気なのか……。

 先ほどのレオンハルトの発言は、アルディ領で捕縛した罪人たちの移送方法を指している。


 フィオナを襲撃した実行犯たちは、「命を守るため」というもっともらしい理由のもと、凍結された状態で王宮まで運ばれてきた。それは、……襲撃が失敗したと知った黒幕が実行犯の口封じに動く可能性を考慮した結果と、私的な感情が強く働いたフリオニールが採った異例の方法だったのだが、凍結された人間の姿は同情を誘うほど憐れなもので……。


 解凍の魔法を(ほどこ)された罪人たちが混乱する光景に、レオンハルトは興味を引かれたらしい。(ゆる)しを()う罪人たちの姿から、凍結護送は犯罪の抑制につながる有効な方法として映ったようなのだ。




「やめておけ。……お前が言うと冗談に聞こえん」


 「今度からそうしようかな」と真面目な表情で(つぶや)いたレオンハルト王太子に、呆れた口調でフリオニールが応える。



「あれだけの恐怖を味わわせることができるんだ。犯罪に関わる人間を減少できそうなんだけど」


「……他の対策を考えろ。国民の暮らしが安定すれば、犯罪は減る。恐怖で国民を支配しようとするなど愚策としか思えん」


「……分かった、分かったよ。俺は魔王ではないからな。諦めるよ」



 レオンハルトの未練がましい言葉を宰相補佐であるジークフリートが一蹴する。執務室内にいた面々から否定され、さすがのレオンハルトも折れた。渋々ではあったが、側近たちの意見を無視してまで押し通す策でもないと納得したようだ。




「……ところで、フリオニール。ウォルスがここに居るってことは、フィオナの警備は誰がしてるんだい?」


「俺が作った魔導具を身に付けてもらっている。それ自身の力でも守られているが、俺を転移させることも可能な道具だから安心していい。より早く発動するよう手を加えた」


「フリオニールを転移させられるのか? 王宮内でも?」


「あぁ。フィオナが襲撃された時に、俺を王宮からアルディ領に転移させた力を……ギードの森の力をかりて作った」


「ちょ、ちょっと待って! 王宮内から転移したって? 森の力ってなに? 話が見えないんだけど……」



 フリオニールとレオンハルトの会話にディーンが割り込んでくる。王宮の警備に関わる内容に、近衛騎士のディーンとしても見過ごせないのだろう。



「王宮内は魔法が制限されてるんだぞ。転移なんて、そんなことができるのか?」


「できるんだ。森の力を使えば。……俺も最初は理解できなかった。しかし、ウィルフレッド・アルディを視て納得したんだ。レオン、お前は知ってるんだろう。アルディ伯爵家に伝わる力を」



 常識を(くつがえ)す内容に驚きを隠せない様子のディーンとジークフリートは、確信した様子でレオンハルトを見つめるフリオニールへと視線を移した。



「止めてくれ! まるで、私が悪者みたいじゃないか。……まぁ、フリオが気付いているんなら、話しても大丈夫かな。王国の秘密を」


「!……。俺たちが知らないこともあるのか?」



 ディーンとジークフリートが顔を見合わせる。国王側近の地位を永代に渡り約束されている家系の後継者として、信じられない出来事だったようだ。驚きを隠せない表情で二人が(つぶや)いている。



「今から話すことは、王家とアルディ伯爵家のみ伝えられている。でもこの事だけだよ。三家に伝えられていないのは。……本当だ! 信じて!」



 怪訝そうな3人の視線を受け、レオンハルトが身振りを加えて必死に訴えてくる。


「「……で? 秘密とは?」」


「……。アルディ伯爵家の先祖、フィリップ・アルディは知ってるよね。ケルガー王の代わりに悪魔に魂を差し出しそうとした高潔な人物だ」


「あぁ」


「そのフィリップ・アルディの血を受け継ぐ者には、ギードの森を構成する自然が味方についている。つまり自然界の精霊の加護が生まれながらに備わっているんだ。それは……王家の血筋と同様に、アルディ家の血筋が護られていることを意味する」

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