表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/62

18. 謎は謎のままでいい

「……私は連れてきただけで何も」


「そうか。じゃあ、本人に聞くしかないよね。う~ん。話してくれるかな」

 フィオナに確認したことに意味があったようだ。

 レオンハルトが眉尻を下げ、困ったような表情をしている。


(絶対的な自信がおありになる人だと思うのに……。王太子様、困ってらっしゃる?)


「悪魔は、契約相手でないと真実を教えてくれないのだ。ストラスは誰とも契約していない。君は……連れて来ただけなんだろう?」


 フリオニールが説明してくれる。なるほどと頷いたフィオナは、膝の上にいるストラスと視線を合わせた。


「私も知りたいわ。教えてくれないの?」

 すると、子うさぎの姿をした悪魔ストラスが首を振る。


「私も呼ばれただけだ。ウォルスが手伝えと。ウォルスに聞いてくれ」


「……言っただろう。未来のことは知らない方がいいと。変に関わると未来が変わってしまう。このまま時が来るのを待つのが賢明だ。ストラスが何とかしてくれる。心配いらない」


「未来が見えているなんて、すごいわ! ……あっ、すいません」


 自分の悪い癖だ。周りの状況を忘れてつい本音を話してしまった。フリオニールだけじゃない。ここには王太子もいるのに。恥ずかしくて恐縮しているフィオナに、先に声をかけてくれたのは王太子だ。


「フィオナは素直なんだね。……大丈夫。気楽にしてくれて構わないから。王国の秘密を共有してるんだ。仲間だろう?」


「そんな……。ありがとうございます……?」

 どう返事をしていいのか分からなかったので曖昧に返す。仲間なんて恐れ多い。



「たぶん、ここにいる5人のなかでは、フィオナの序列が一番上だ。悪魔は序列に従順だから見ていて分かる。ウォルスから、お前としか呼ばれない最下位のレオンハルトのことは気にするな」


「!……」

「……それを言うか、フリオニール。まぁ事実なんだけど……」


 フリオニールから序列一番と言われたフィオナは絶句し、苦笑を浮かべたレオンハルトに肯定された。


「本当だよ、私もそう思う。ここにいる5人には、普段のフィオナを見せてくれて構わない。それに、君も聞いた通り王国でこれから何かが起こるんだ。それが解決するまで、王宮に滞在することになると思う。少しは打ち解けてもらわないとね」


「そう言ってもらえると気が楽になります。ありがとうございます」


「じゃあ、これからよろしく頼むよ」


 そう言ってレオンハルトが立ち上がり、フィオナに手を差し出した。握手に応じようとフィオナも立ち上がろうとした時、不機嫌そうな声が下の方から聞こえた。


「……おい。俺たちの力が必要なんだろう」


 ウォルスとストラスだ。差し出されたレオンハルトの手を睨み付けている。


「っ!!」

 慌てて手を引っ込めたレオンハルトが言い直した。


「それじゃあ、……こうしよう」


 レオンハルトは、座った姿勢のウォルスの頭にうさぎのストラスを乗せると、片膝を床につけた。


「フリオニール、フィオナも膝をついてくれる?」


 それからフィオナの手にウォルスの手を乗せる。

 順にフリオニール、レオンハルトと重ねていく。


「フィオナ、ストラス。ファブールにようこそ! 王国の未来のために、力をかしてくれ」


 「…………。おおぅ…………」


 満足気なレオンハルトを除いた4人がやっと納得する。同意を通り越して団結を求められるとは……。レオンハルトは未来の国王だ。強引さも必要なのだろう。


(アリシア様もそうだけど、堅苦しい方でなくて良かったわ)


 ほっと息を吐くフィオナだった。



         …☆…☆…☆…



「さぁ、これからが本番だね。本当はどんな娘なんだろう」


 フィオナとストラスが退出した執務室。

 書類で埋め尽くされた執務机の前に座り、レオンハルトが楽し気につぶやく。


「……お前は本当に懲りないやつだな」


 不機嫌そうにウォルスが声をかける。ウォルスにしてみれば、フィオナの内面などお見通しなのかもしれない。


「悪魔に気に入られるって……どんな娘なんだろうと思ってたけど。うん、確かに表面的には問題なさそうだね。性格も良さそうだし」


「フィオナを安心させておいて本性を探ろうとするとは……。悪い癖だな」

 フリオニールもウォルスに同調する。人の目がないところでは、王太子に気安く接することも許されているため遠慮しない。



「フリオニールも気に入っているのかな。女性には厳しいのに。でも……わかるよ、その気持ち。明るくて可愛らしいのに落ち着いていて、こちらが優しい気持ちになれる感じが心地いいよね。確かにフリオニールの周りにはいないタイプだ」


 フリオニールより年上のレオンハルトは熟練者のように言うが、豊富な恋愛経験が王太子にあるはずがない。


 レオンハルトも結婚を急かされている一人だ。王太子妃候補に他国の王族の名前もあがるが、ファブール王国は政略結婚に頼るほど困っていない。

 そのため自由に相手を選べるレオンハルトは、フリオニールと同じように数多くいる令嬢たちの中から花嫁を選ぶのに苦労している。


 厳しい目で令嬢たちを選別している日々を過ごしているうちに、自然と本性を探る癖がついてしまったようで、レオンハルトは女性にも男性にも手厳しい。

 両親から受け継いだ麗しく優し気な見た目が、相手を油断させる手段となってしまったことが残念だ。


 王国のために結婚は避けられないだろう彼に、良い相手が現れることを願ってやまない……。


 フリオニールは、レオンハルトに少しだけ優越感を感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ