第32話 乖理者
「『霊廟陣』!」
「これって弔来村で使ってたやつ!」
霊廟陣、自身を霊体化させる異能領域。この領域が展開されると意のままに操る自身の分身霊を利用することができる。
「気配が感じない・・・殺ったか避けられたか?」
ガシ
「んぁ!?ヤバ!引っ張られぇぇ!!」
不可視の分身霊が崇城を空中でぶん回す。
「三半規管の、強化・・・!ウプ。」
オロロロロロッ
「汚ねぇスプリンクラーだなぁ。殺す必要はない、意識が無くなるまでぶん回すだけ。」
(どうにかしない!頭に血がッ、意識が・・・。)
バシィ
「この氣?!婆さんか、分身を消しやがったな!」
「うああああああああ!」
ドン!
「おぉ痛そうだなぁ、婆さんタイミングが悪いぜ。」
「ゴエェッ!ゴホ、痛ェガチで痛ェ・・・もう許さん!」
「命の危機より怒りが勝るかこの乖理者!」
「さっきも言ってたけど、乖理者ってなんだよ?」
「乖理者ってのは、壊れた者って意味だ。」
「お前、事故あって異能が覚醒したタイプだろ?」
「あぁそのはず・・・だ、記憶が曖昧だけど。」
崇城の様子を見て、刺客はわかっていたかのように語る。
「端的に説明すれば、乖理者は事故とかで異能が覚醒した者に多く、乖理者の多くは基本的に脳の一部が壊れちまっている。」
「脳の一部が壊れてる?」
「例を挙げるなら、恐怖の欠落、記憶機能の低下または喪失、感情の混乱、永続的に続く悲しみなどがある、これは全て俺が今まで会ってきた乖理者の症状だ。」
「お前もその感じ、脳が壊れた乖理者ってとこだな。異能の覚醒要因である氣の大量放出に脳が耐えれなかったことが原因だと考えられているらいし。」
「俺がその乖理者ってことなのか?壊れたって治るのかよ?!」
「治るかはわからないな?」
崇城の思考は巡らせる。自覚を持った今今までの事を振り返る。
「大丈夫か?いきなりそんなこと知っちまったら混乱ぐらいはするか。」
(普通の学生が急にいつ死ぬかもわからない世界に来て、ワクワクするとか命を賭けたいとかある訳ないだろ?)
崇城は思い出した。家族の事、あの場にいた友人の事を。覚えていたのにも関わらず、思考から除外していた事。いつ帰れるかもわからないのにも関わらず、あの一言で全て納得したあの時の自分。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ。」
「覚えていたはずなのに!弟の誕生日近かったよな?一緒にゲーム買いに行こって約束したんだっなよぁ?テスト終わったらアイツらと海に遊びに行くんだったよな?」
「ん~?恐怖と記憶の欠落かな。」
「帰らなきゃ・・・でも神子さんが、クソ。」
幾重もの思考の末、崇城の頭には帰る事と守るという使命のみが残る。
「もう分からない?クソォ強増力!!」
「逆上かよ、乖理者?」
To Be Continued




