第31話 幽快新手
「新手じゃ外に出るぞ!」
「はい!」
崇城はお婆さんを抱え壁をぶち破る。
「最早この家は要らん!刺客よ我が家を貴様の墓場にしてやるわ!」
「印解放。」
お婆さんは手で印を結び家に向ける。
お婆さんは家に能力を用いた呪印を長年刻み続けた。万が一自身の身が危ない時に保管している貴重品を守るために。
「ほんの一瞬感じた、強烈な殺気・・・これで大丈夫なのか?」
「後は家を崩せば完全封印じゃ、死ぬまで数十年かかるじゃろうが中々の強者を確実に持って行くにはこれぐらいしなきゃならん。」
「近隣の人に応援を呼ぶか。」
(・・・ん?周囲の気配が感じ取れない?)
崇城が違和感に気づいた時には不可視の攻撃がお婆さんを穿いていた。
「ガハァ・・・!」
「神子さん!」
(透明の敵・・・ッ!)
腹を穿たれ腸が吹き出している。
「ワシを抱えて・・・逃げるんじゃ、余りにも分が悪い仲間の所まで・・・。」
その時、家の前に人の気配が現れる。
「辞めとけ、満身創痍のご老体を無闇に動かすと体に障るだろ?」
存在感が希薄で微かにしか視認できないが、確実に居る、誰かが話しかけてくる。
「治せるとはいえ少しやり過ぎたな。」
「どうすれば・・・?」
(付近に人の気配がないのはこいつの能力で間違いないはず。この状況でできるのは・・・!)
「これだ!」
「これって!?」
前回の会話でお婆さんが話した遺物。印た場所に瞬間移動する遺物。
「ワシの氣を流す・・・ッ!」
「おいおい、逃がすかよ?」
周囲の空間が遺物に向かって集約する。視界が光と暗闇を交互に写す。遠くへと引き伸ばされる感覚共に纏まる。
─現在地、???の上空。
「たく・・・ここ何処だよ、転移遺物か?ご丁寧に上空に飛ばしやがって。」
(異能結界丸ごと飛ばす広範囲の転移遺物か、欲しいが・・・。)
「まずは無事着地するとこからか。」
・・・
「ハァ何処だここ、廃村?」
「ワシの生まれ故郷じゃ。あの遺物の印を最後に残したのはここじゃったな。」
「蘇我さん傷が・・・あれ?治ってきてる?」
腹に負った傷がジュクジュクとグロテスクに再生している。
「能力の応用じゃ、数分したら完治する。奴もそれを分かっていて先にワシに深手を負わせたのじゃろ。」
ドン
刺客が着地する音が響く。
「まずはアイツをどうにかしないと!」
「時間を稼ぐんじゃ、回復さえするば十分やり合える。あやつは強い、勝とうとするな。」
「はい!」
・・・
蘇我 神子の生まれ故郷、石岳村。二人の能力者が向かい合う。
「お前まだ未成年だろ?まだ若いのになんでこんな事に命を賭けれる?」
「こんな事に命を賭ける?何言ってんだ、こちとら命を賭けてるつもりはない!」
「チッ、乖理者か?」
風すら吹かない荒廃した村に突風が巻く。
「強増力!」
「氣体術・顔蹄砕き。」
崇城の攻撃が当たる前に強烈な蹴りが、ノーガードの顔面にめり込む。
「ゴッ」
「モロじゃん、まさか氣知らない?よくそんなんで生き残れたね。」
氣体術。氣を使った基礎的な体術であり、裏世の戦闘は能力よりも氣の熟練度で勝敗を決する場合が多いため、氣体術を修める者は多い。
「はぁはぁ、氣は今取得中だ!」
(能力を手足から頭部に全集中させたか。かろうじて原型を保ったけど、ダメージは相当深そうだな。)
「はぁ、乖理者は無茶な戦闘するよな、普通に怖えよ。」
「強増力を足腰に、速度特化。」
「『霊廟陣・霊息』、早く寝ないと幽霊が来るぞ?フゥー。」
(不可視の攻撃は、常に動き回って・・・・・・。)
思考する隙すら与えるも気の無い攻撃が頬、手、脇腹を通過する。
「?!」
「霊息は生命力を奪う幽霊の息吹、当たった部位は壊死みたいになる。掠っただけでも相当なダメージだ。」
(不可視な上にガード不可。しかも他にも手札がありそうな感じ、このままじゃ。)
「勝てないッ!」
崇城は今までを振り返り、覚悟と気合いを能力に込める。
「強増力ッ!」
「マジかよ。」
(あの技と説明で、なんで逆に元気になるんだよ、怖えぇ。)
「来ないならこっちから行くぞ!」
「殺すのはなぁ、身体強化系は気絶しにくいからなぁ。」
(余裕こいててくれてるのはありがたいことだ、これが効くからな!)
ガシ!
「地面返し!」
強増力で強化された腕による地面バージョンのちゃぶ台返し。
「うぇ?!無茶苦茶だろ!」
To Be Continued




