第7話 嫌われ者アレス
書庫を出てから日が暮れるまで、いろんなところを見て回った。
太陽が沈んでいく街の景色は昼間とはまた違って、綺麗だった。
けれども朱く染まっていく空にどこか悲しみを覚えた。
「これからはいつでも外に出かけられますから。そんな顔しないでください。」
アテナが茜と蒼の目線に合わせて屈んだ。
「ここではあなた達を傷つけるような輩はいません。もし居たとしても、私が守ってあげます。だから大丈夫ですよ。」
そう言ってアテナは二人を包み込むように抱いた。
二人の目からは涙が流れ出た。
思いっきり泣いたわけではないけれど、それまで胸の奥にしまっていたものが溢れてくるようだった。
アテナは二人の背中を優しく撫でた。
どのくらいの間そうしていたかは分からなかったが、茜と蒼が落ち着いてきた頃、アテナは立ち上がって笑った。
「さぁ、帰りましょう。ゼウス様も待っていますよ。」
優しく微笑むアテナに茜も蒼も少しだけ笑顔を取り戻した。
三人が宮殿の前まで帰ってくると一人の男が立っていた。
青銅の鎧を身に着け、手には巨大な槍を持っている背の高い男だ。
その姿は威圧的でまさにこれから戦を仕掛けるような、荒々しい雰囲気を纏っていた。
男に気づいたアテナが茜と蒼にここから動かないように言い、男に向かって歩き始めた。
宮殿の前に立っていた男がアテナに気づいたようでこちらに向かって歩いてきた。
「よぉ、アテナ。久しぶりだな。」
気軽そうな言葉だがアテナは警戒心を持っていた。
「・・・なぜ、この場にいるのですか。アレス。」
「おいおい、ひどいな。仮にも同胞に向かってその言葉はないだろ。」
ひどいとは思っていない声でアレスが答える。
余裕のあるその態度にアテナは一層、警戒心を強めた。
「貴方は緊急時以外ここに近づくことを禁止されたはずです。」
この場には茜と蒼がいるのだ。
アレスを2人に近づけるわけにはいかない。
そう思って語気を強めていった。
アレスはアテナと同じ戦闘の神だが、アテナと違い残酷だった。
人との戦いを、戦闘を娯楽とし、生きがいとする。
そんなアレスが茜たちに近づけば何をするか分からなかった。
だが、アレスは茶化すように返した。
「緊急時だろ。ゼウスが人間の子を育てるというのだからな。」
そう言った瞬間アテナの目の前からアレスが消えた。
「なっ!?」
アテナが慌てて茜たちの居る方を振り返ると、すでにアレスは茜と蒼の目の前にいた。
中途半端ですが、次話に回します。
すみません。




