第6話 古代エジプト神・トト
アポロンとアルテミスの二人と別れた後、茜と蒼とアテナの三人は本が沢山置かれている部屋に来ていた。
見渡す限りの本に茜も蒼も見入っていた。
しばらく散策していると突然後ろから声が聞こえた。
「・・・人間?」
独り言のような小声だったが、茜と蒼が反応するには十分だった。
茜たちが振り返ると先ほどまで誰もいなかった場所で男が本棚にもたれかかって本を読んでいた。
男はモノクルをしていて貴族的な印象を受ける青年だった
「いや、人ではないな。・・・三種の混血か。これはまた珍しい。興味深い者たちだね、アテナ。」
男は茜たちを観察するように見て、アテナに話しかけた。
「・・・トト、驚かさないでください。大丈夫ですよ、茜、蒼。この神はそこまで悪い神ではありませんから。この神は古代エジプトの神のトト、私と同じ知恵の神です。」
「これは、ひどいな。私は悪神ではないのだが。・・・まぁ、いい。で、こいつらは何者なんだい?かなり高位の存在のようだが。」
トトが興味津々な様子でアテナに聞いた。
「トトでも分かりませんか。」
アテナは困ったように、茜と蒼を見た。
「あの、三種の混血って何?・・・ゼウスも似たようなことを言っていたけど。」
それまで黙って見ていた茜が二人の会話に入っていった。
「ゼウス?あいつは詳しいことは言わなかったのか。」
「教育は私に任せると仰っていたので、教えても問題はないと思いますが・・・」
「じゃあ、問題はないだろう。・・・茜と蒼と言ったな。お前たちは、自分がどういう存在だと認識している。」
「私は、・・・悪魔と人の子、蒼は天使と人の子だと思う。」
「そこまでは認識しているのか。一つ違うことがあるとすれば、お前らの母親は人ではない。正しくは人と神の間に生まれた子だ。そして、その親となった神は、ほぼ間違いなくゼウスだろう。」
「ゼウスが?」
蒼も驚いたらしく会話に入ってきた。
「あぁ、あいつは浮気性だからな。そんなことがあってもおかしくはない。・・ただ、お前たちの父親が誰かは分からない。が、これで分かっただろう。お前たちには人と神と悪魔または天使の血が流れているということが。」
「うん、教えてくれて有難う、トト。」
「トトはやさしいかみさまなんだね。」
茜と蒼がお礼を言うと照れたようにそっぽを向いた。
「・・・たまにだったら相手してやろう。お前たちの体にはこちらも多少なりとも興味がある。」
最後のほうの言葉は出会った時のように知識欲で溢れているように思えた。
アテナが苦笑しながら茜たちに向かって手を差し出した。
「では、次の場所に行きましょうか?」
茜も蒼も今度は躊躇わず手を重ねた。
アテナを見ると微笑んでいて、とても温かく感じた。
書庫を出ていく際にトトは一つ助言をしてくれた。
「この書庫の最上階に行けばお前たちの父親が誰か分かるはずだよ。あそこにはすべての世界の情報が集まっているのだから。・・・でも、まぁ認められたらの話なんだがね。」
トトはクックッと喉で笑って再び本に目を移した。




