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神々の箱庭  作者: 星奈
第四章 新たな世界へ
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第59話 戦争開始

 ――――南極――――


 岩と地面、周りに海しかない場所にたくさんの悪魔が集まっていた。

 その先頭にはルシファーたちと共に茜もいた。


 「本当に止めてもいいの?」


 茜は再び確認していた。

 自分の役目を優先してもいいのか迷っていた。

 その迷いに気づいたのかルシファーはしっかりと頷いた。


 「あぁ、それがお前の役目であり義務なのだろ。だったら迷う必要はない。」


 「うん。」


 刻々と夜明けは近づいてくる。

 夜が明け始めたころ、茜たちの向かい側に白い影がポツポツと見え出した。


 「来たぞ。」


 ルシファーの呟きと共に後ろから悪魔の声が上がりだした。


 「天使どもが来たぞ!!」


 「今度こそ、根こそぎ殺してしまえ!!」


 おぉーという声とともに悪魔たちが動き出した。

 悪魔たちが動き始めたのと同時に茜は動き出した。


 「行ってくる。」


 茜が天使たちに向かっていく悪魔の軍団の前に躍り出た。


 「止まって!!」


 突然出てきた茜とその声に悪魔たちが動きを止めた。

 茜は八枚の羽を広げ、もう一度声を出す。


 「今すぐ止まって。」


 だが、悪魔たちは茜を知らない。

 姿から見て悪魔だということは分かっても、天使が現れた今細かいことは視えていなかった。


 「何者だ、小娘!!」


 「殺されたくなければ、今すぐ其処を退け!!」


 それでも退かない茜を見て悪魔の一人がしびれを切らし茜に向かって剣を抜きかかっていった。

 それに続き、他の悪魔たちも襲い掛かる。

 だが、彼らが茜のもとに到着することは無かった。


 『お前たちは許可があるまで元居た場所から動けない。』


 その声が聞こえた瞬間、悪魔たちは最初にいた場所に押し戻された。

 いや、一瞬で移動した。


 「これでいいか、マスター。」

 

 茜の横に来たベリアルに茜は不満足気に呟いた。


 「ありがとう。でも、私一人でも対処できたよ。」


 「マスターならできそうだが、時間がかかるだろ。それを省いたんだから手段ぐらいでそんな怒るなって。」

  

 ベリアルは茜を諌めるように声をかけた。






 一方、天界の軍の方では悪魔たちに対応を奇妙に思っていた。


 「魔界の奴らいつもなら姿を見せた瞬間向かって来るのに、今回は来なかった

ぞ。」


 どういうことだ、と問う一人の天使に、他の天使も同意しながら意見を出していた。


 「奴らにも最低限の知恵はあったということだ。」


 だが、近づくにつれ見えてきた様子に一人の天使が首を傾げた。

 それに続き、他の天使たちもそれに気づき始めた。


 「ん?何か様子がおかしいぞ。」


 「魔界の奴らの先頭に見覚えのない小さい堕天使がいるぞ。」


 「しかも羽が八枚だ。聞いたことがない。」


 「魔界の隠し玉か?」


 「だが、今ならあいつも背を向けている。この距離なら間違いなくやれる。」


 茜は他の悪魔たちとは離れたところにいて、近くにいるのはベリアルだけだ。

 普段から面倒くさがり戦いに出てこないベリアルはあまり知られていなかった。

 その結果、天使たちはこれをチャンスだと捉えた。


 「よし、やるぞ。魔界のトップクラスをやれば箔がつく。」


 おぉーと天軍の一部が飛び出した。

 後ろから制止の声がかかるが聞こえてないのかそのまま突っ込んでいった。

天使と茜の間にはまだかなりの距離がある。

 天使たちは弓を構え、茜に向かって一斉に矢を放った。

 そして、その矢は見事に命中し、茜は崩れ落ちた。









 「マスター!?」


 力を使って天使から茜と自分の姿を見えなくしていたはずのベリアルは天使の放った矢が茜に当たったことに驚き、その直後別のことで、再び驚いた。

 矢の当たった茜の身体が突然燃え出したのだ。

 矢を放った天使たちは命中したのを確認し、我先にと手柄を取りに行こうと動き出していた。

 天使と茜との距離が一キロと言うぐらいの地点で突然異変が起きた。


 『死ね』


 その言葉が聞こえ、飛び出していった天使たちは地に落ちていった。

 その言葉は小さな天使から発せられていた。


 「蒼!!」


 ベリアルは驚き、その声の持ち主を見た。

 そして先ほど自分の目の前で燃えてはずの茜が自分の後ろにいることに動揺を隠せなかった。

 茜に呼ばれ近づいてきた蒼に茜は苦言を言った。


 「蒼、悪戯が過ぎるよ。」


 「ごめん、お姉ちゃん、大丈夫だった?それよりも前を向いてないと危ないよ。」


 蒼は謝っているが、顔は楽しそうだった。


 「大丈夫だよ。蒼がいたのは分かってたし、近くにベリアルもいたから。」


 「まぁ、良いけど、封印ぐらい外そうよ。」


 ただでさえ目立つんだから、と言っている蒼に茜は笑って返した。


 「じゃあ、蒼も外して?」


 「分かったよ。」


 茜と蒼は石の入ったお守りを外し、下に落とした。


 「クロア、それお願い。」


 下にいるクロアに向かって。


 「ちょっと、天界を止めてくる。」


 蒼は茜にそう言うと天軍がいる方に飛んでいった。

 蒼を見送っていた茜にルシファーが問いかけてきた。


 「マスター、何が起こったんだ?」


 ベリアルの驚きように茜は苦笑しながら先ほどの種明かしをした。


 「蒼の悪戯。ベリアルが近づいてくる天使に気を向けた内に蒼が霧で私を隠し

て、炎で作った幻影を私がそこにいるように他の皆に認識させたんだと思うよ。」


 「あの規模をマスター以外誰にも気づかれないようにやったのか?」


 言うのは簡単だが、実際にやるのは難しい。

 それはベリアル自身が分かっていた。

 ただでさえ何かを支配するものは自分よりも霊格が高い相手には効きにくいものだ。

 だが、それをここにいる茜以外の天使と悪魔相手に一人でやってのけたのだ。


 「うん、それが蒼だから。騙し、惑わし、迷わせる。そして普段はそれを悟らせ

ないように仮面をかぶる。だから誰も蒼の本質に気づかない。」


 常に騙し、嘘を吐き、本気や本心など見せやしない。

 大切な物(茜)の為にだけ本気となり、本心を見せる。


 「・・・私たちも皆のとこに行こう。」


 茜は天使たちの居る方に飛んでいく蒼をもう一度だけ見て、黒い翼を羽ばたかせベリアルに声をかけた。

 茜とベリアルはルシファーたちのいる所に向かった。

 茜の前には4人の上位君主が並び、その後ろには8人の下位君主が並んでいる。


 「ルシファー、サタン、レヴィアタン、ベリアル。魔界は天界との戦いを止めてくれる?」


 「あぁ。」


 「約束しよう。」


 「いいぞ。」


 「マスターの仰せの通りに。」


 茜の言葉に4人ともが肯定の返事をした。

 茜は一度だけ皆に笑顔を見せて、飛び上がった。


 「ありがとう。じゃあ、ちょっと決着をつけてくる。」


 茜は再び蒼の居る天軍の方に向かった。






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