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神々の箱庭  作者: 星奈
第三章 天界での出来事
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第54話 墓参り

 ――――人間界――――


 上空から世界のいろんな景色を見た。

 日本どころか生まれ育った家からもほとんど出ていなかった蒼にとって初めて見る物ばかりだった。

 巡察が終わり、ちょうど日本の上に来た頃、それまで景色に夢中になっていた蒼がラファエルに声をかけた。


 「ねぇ、ラファエル。ウリエルが燃やした街の場所は分かる?」


 「えぇ。憶えています。あそこは荒れていましたから。」


 「荒れる?」


 蒼は聞きなれない言葉に首を傾げた。


 「はい。魂の輝きが黒くなっていたのです。負の感情、それもかなり強い感情が

なければそうはなりません。」


 憎しみ、憎悪、嫌悪、苛立ち、怒り、罪悪感、恐怖、畏怖、そう言った負の感情。

 それを蒼たちは誰よりも知っていたし、感じていた。


 「そうだったね。僕たちがいたころは全て僕たちに向いていたけど、僕たちがい

なくなってそれを何処にも向けられなかっただろうからね。」


 「・・・あ、あそこです。」


 話しているうちに目的の場所に着いた。

 そこらへんには家も人間も何も存在しなかった。

 焼けた後も存在しなかった。

 蒼はしばらくその場で無言で見ていたが、何かを見つけたのか、ある場所に向かって飛んでいった。

 集落があっただろうと思われる場所から少し離れた森の中、一か所だけ空気が綺麗な場所があった。

 その場に蒼と蒼の後ろをついてきたラファエルが足をついた。

 その場所の中心には、一つだけ石が立っていた。

 そして、近くには花が置かれてあった。


 「ここは?」


 「お母さんのお墓だって聞いているよ。」


 「お墓ですか?」


 普通の墓と比べてもかなり稚拙な墓の作りだ。

 土が盛られている場所に少し大きめの石を置いただけ、そう思ってもおかしくないだろう。


 「僕が1歳、姉が4歳の時に母は死んだんだ。周りに頼る人もいなかったから、お姉ちゃんが作ったって言ってたよ。」


 「・・・しかし、それにしてはこの場所は綺麗ですね。」


 空気が綺麗、それは今この世の中では簡単に出来ることではなかった。

 本来、空気が清められているはずの神社でさえも神が離れてしまった今は荒れてしまっていた。


 「多分、来てくれてたんだよ。ゼウスが。」


 蒼は傍に置かれている花を見ながら答える。

 神界でアテナに初めて連れて行ってもらった場所で初めて見た花がまじっている。

 

 「・・・ゼウス様がですか。」


 「・・・・・」


 蒼にとってもここは初めてくる場所だ。

 それに蒼には母親の記憶が残っていない、普通に考えれば当たり前のことだ。

 だからこそ蒼にとっては茜が全てなのだ。

 物語の始まりから今まで、茜がいて成り立っている。逆に言えば、茜がいなければ蒼の物語は成り立たなかった。


 「?・・・お姉ちゃん?」


 茜のことを考えていたからだろうか、茜の気配がした気がした。

 振り返って空を見上げると、遠くに三つの影が見えた。

 だんだんとその影は大きくなりこちらに近づいてくる。

 その影が地面に足をつけた途端、蒼は真ん中にいる一番小さな影に向かって走り飛びついた。


 「お姉ちゃん!!」

 

 蒼を受け止めた茜も不思議そうな顔をしていた。


 「蒼?どうしてここに?」


 「お墓参りだよ。今までしたことがなかったから。」


 「・・・そうだったね。ごめん。」


 罪悪感から顔を俯ける茜の手を蒼は握った。


 「謝らなくていいよ。外は危険だったし、それにゼウスが護ってくれていたから。お母さんも寂しくなかっただろうしね。」


 「そうだね。かなり来ていたみたいだね。」


 何時から気づいていたの?と首を傾げる蒼に茜は笑いながら答えた。


 「神界であの花を見つけた時に。」


 茜が見ていたのは先ほど蒼が気付いた花と一緒だった。

 蒼と違って茜は何回か人間界にいた時にも夜家を抜けだして墓参りに来ていたため神界でその花を見つけた時に気づいたのだ。










 茜たちとは離れたところで、ラファエルはルシファーたちと向き合っていた。


 「お久しぶりですね。・・・あなた方がこんなところまで出てくるとは・・・」


 「あぁ、俺は菫(すみれ)と、あいつの母親と話がしたかったからな。こっちは完全に付き添いだな。」


 「うげっ、何で熾天使が・・・しかも、何で俺まで・・・」


 茜と一緒に来たルシファーとベリアル。

 ルシファーは普通に立っているが、隣にいるベリアルは何処か暗い雰囲気を醸し出している。


 「お前の傲慢と娯楽が行き過ぎた結果だろ。グダグダいうな。見てるこっちがウザくなる。」


 「うぐぐっ・・・ひ、否定できない・・・っ!!!」


 ルシファーはベリアルの足を踏みつけて、墓の近くで話している茜たちに近づいた。


 「・・・蒼と言ったな。天界は止まるか?」


 「止まる。いや、止める。ミカエルは動くかわからないから僕が止める。少なくともジブリールとラファエル、ウリエルは力を貸してくれる。」


 誰かにやらせるのではなく自分がやると断言した蒼を見てルシファーは茜と似ていると感じていた。


 「そうか。ところで、何故ミカエルの名前が出てきた?」


 蒼としては一応自分の父親だから一番最初に名前を出しただけだ。

 それに茜がそのことをルシファーに伝えているものだと思っていた。

 咄嗟に茜の方を見たが、茜は答えづらそうにしていた。

 だが、黙っていても仕方がないと思ったのか躊躇いながらもルシファーに教えた。


 「・・・ミカエルは蒼の父親だから。」


 「・・・・」


 見ているだけでもルシファーが怒っているのが分かる。


 「・・・だから言わなかったのに・・・」


 茜が最後に漏らした言葉には蒼は苦笑しか返せなかった。


 「ミカエルは殺しちゃだめだよ。それは僕の役目だから。」


 笑顔で言う蒼にルシファーの怒りも徐々に収まってきた。

 ルシファーはそのままその場から離れ、墓の方に向かった。



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