第44話 vsベルゼブル
茜が目を覚ましてすぐ、ベルゼブルが部屋に入ってきた。
「話も聞かずに警戒して、すまなかった。・・・だから、私と勝負してくれ。お互いに一つ何かをかけて。」
そう言うベルゼブルの目は何かを決意した目だった。
そして、話し合いの結果、ベルゼブルが勝てば茜は魔界に来た目的を全て話し、茜が勝てば友達になることに決まった。
お互いがそれに了承し、部屋を出ようとしたところで部屋の外で待っていたルシファーたちに止められた。
「茜、お前まだ力が戻ってないだろ。せめてもう少し休んで―――」
「大丈夫。私はルシファーの娘だよ。こんな所で負けないよ。」
「マスター大丈夫か?」
「うん。ベリアルはラプラスを護ってね。これを預けておくから。」
心配性な2人に苦笑を漏らした。
そして、茜は首に着けていた赤い石の入ったお守りをベリアルに渡した。
その時、誰も気づいていなかった。
茜の瞳の色が変化していることに。
そして、茜、ベルゼブル、ルシファー、ラプラス、ベリアル、サタンの六人は城から出て開けた場所に来た。
「創造(creation)―――〝小さな世界〟(small world)」
茜の言葉と同時に六人を光が包んで行き、光が消えた後六人がいたのは別の場所だった。
正確には同じ場所の上に作られた別の世界にいた。
今いる場所は周りに何もない場所。
地面には草原が広がり、上には青空が広がっている。
「・・・なんだ、ここは?」
「ここは、私が創った世界。魔界でそのまま戦えば被害がどうなるか分からなかったから。初めて使うけど成功してよかった。」
茜はこの場所の説明をする。
神の中にはクロアのように自分の領地を使い異空間を創りだす神もいる。
けれども、茜が今、行ったのは無からの創造だった。
「ここならあなたも戦いやすいでしょ、バアル・セブル(豊穣の神)。」
「あぁ、やっぱり知っていたのか。」
「私だけ知ってるのも不公平だから自己紹介するね。私はギリシャ神群の長、ゼウスの孫。破壊と創造の神の片翼。」
「破壊と創造・・・創造主と同じ力か。」
この力に対する手段は数が多くない。
茜の力に弱点があるとすればイメージして声に出さなければいけないこと、それと今ここに蒼がいないことだった。
「じゃあ、始めよう。」
茜の雰囲気が変わるのと同時に試合が始まった。
ベルゼブルはスッと手を前に出し、軽く振る。
それだけで鎌鼬のような鋭い風が尋常ではない速さで襲い掛かる。
茜はそれを躱し、言葉を紡ぐ。
「創造(creation)――――〝不滅の刃〟(durandal)」
襲い掛かる風をそれで防ぐ。
相殺するが何十発と襲い掛かるのを全て相殺するのは不可能で一撃の鎌鼬が頬を掠った。
鮮血が飛び散ったが、すぐに傷は塞がった。
「・・・何だ、その体?」
「体が特別なんじゃなくて運命(因果)が特別なんだよ。何千メートルの所から叩き付けられようが怪我一つしない。心臓を刺されてもすぐに治る。」
その言葉にベルゼブルはハッとした。
ルシファーに茜が人間に殺されたことを聞いていたからだ。
「でも、もういい。この力も運命も全て私を為す要素に過ぎない。蒼がいて、大切な物を護れればそれでいい。だから、この勝負負けられない。」
「そうか、だが生憎こっちも負けてやれないんでね。」
ブワリと。
一瞬で竜巻がいくつか発生し、無造作に手を振りおろすと竜巻がまっすぐと向かってきた。
茜は四枚の羽をだし不滅の刃を片手に竜巻を躱す。
竜巻を躱した直後に新たな竜巻が目の前で起こる。
躱すことが出来ないと悟り、不滅の刃で薙ぐ。
だがいくら躱し、斬っても数が減らない。
それどころか増えている。
「破壊(destruction)――――〝竜巻〟(tornado)」
創造とは別のもう一つの言葉を紡ぐ。
その言葉と共に目の前にあるすべての竜巻が消えた。
二人が戦っている場所から少し離れた場所では、四人が話していた。
「・・反則級の力だな。」
「創造神とはあんなものだろ。だがそれにしては攻めきれてないようだが。」
「茜も言っていましたけど茜は片翼ですから。2人揃って初めて真価を発揮するのでしょう。」
それに、優しいですからね、とラプラスは続けた。
「それにマスターはまだ力を出し切ってないしな。」
ベリアルだけは直接戦ったことがあり、茜の神の力が破壊と創造だけでないことを知っている。
ベリアルにとってあれはトラウマになっていた。
そんな話がされているとは知らずに茜とベルゼブルの戦いは進んでいく。
「創造(creation)――――〝落とし穴〟(pitfall)〝カモフラージュ〟」
ぼそりと聞こえない声で呟く。
「創造(creation)――――〝業火〟(hellfire)」
今度は聞こえる声で言葉を紡ぎ、手の上に創りだし投げる。
ベルゼブルは突然の業火に後ろに飛びのいた。
そしてバランスを崩し落ちた。
先ほど創造した落とし穴の上に足が乗り崩れ落ちたのだ。
茜は手を空に向かって掲げる。
空はいつの間にか青空から雷雲に変わっていた。
バチッと茜の手が光り、茜が手を振り下ろす。
神鳴りはそのまま穴に向かって落ちた。




