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神々の箱庭  作者: 星奈
第二章 魔界での出会い
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第43話 力の暴走

 それまで笑っていたサタンが笑うのを止め、訊ねてきた。

 

 「それで、これからどうするのだ?」


 「?取り敢えずは、ベルゼブルと話したいんだけど・・・」


 「言うと思って・・・連れてきておいた。」


 サタンの言葉と共に茜たちが入ってきたドアとは反対の方向にあるドアからベルゼブルが入ってきた。

 サタンが座っている椅子をずらし、机を挟んで茜の目の前に持ってきた椅子にベルゼブルが座った。


 「何をそんなに警戒しているんだ、ベルゼブル?」


 「逆に聞きますが、どうしてこの者を信用できるのですか?」


 「・・・何を警戒しているの?」


 「全てですよ。得体のしれない物を警戒するのは普通です。」


 「違う。最初は警戒していなかった。私のことを一切知らなかったのに。警戒しだしたのは私が貴方の存在を当てた時からだ。」


 「・・・えぇ、そうですよ。名乗ってもいないのに正体を当てられたら警戒するでしょう。それだけ調べてきているということなんですから。」


 「あれは、ヒントがあったから。ルシファーの部屋から出てきたから側近だろうと予測をつけて、貴方の「見える」と言う言葉から透視かなと思ったけど側近にそんな力を持つものはいないから、見るための何かがそこら中にあるのだと予測をつけて貴方の名前を導いたの。」


 「・・・それだけで普通は分からない。」


 「普通ではないから仕方がないだろ。茜はこの年でバベルの塔に上っているのだぞ。そんな奴が普通ですまされるか?」


 「それはそうだが・・・」


 「警戒しているのはそれだけじゃないよね。私の力が貴方よりも強かったから。恐怖、羨望、不安、焦燥、嫉妬。」


 「・・・・・・・」


 「でもね、私はこんな力が欲しいかったんじゃない。ただ静かに幸せに暮らせるだけでよかった。でも、そんなもの最初から存在しなかった。周囲から向けられるのは恐怖、嫌悪、畏怖ばかり。親を奪われ、殺意を向けられ、抵抗することもできない。この力があったばかりに――――――」


 周囲の壁に罅が入り窓ガラスが割れた。

 茜が無意識のうちに力を暴走させた結果だ。


 「茜!!」


 それに気づいたラプラスが呼びかけるが茜には届いていない。

 そこに異変に気付いたルシファーとベリアルが来た。

 だが部屋を囲むように風が吹き荒れていて近づくことは出来ない。


 「なんだ、これは?」


 「多分、茜の暴走だ。」


 「マスターの?どうするんだ、無理やり破るか?」


 「いや、それだと余計に被害が広がる。・・・サタン、ベルゼブル中にいるな

!!」


 ルシファーは中に向かって叫んだ。


 「ルシファー様!!」


 「・・・ルシ、ファー・・・」


 ルシファーと言う言葉に茜が反応し、部屋の中にふく風が弱まった。

 そのタイミングでルシファーとベリアルが中に入ってきた。

 弱まったとはいえ、まだ風は強い。

 割れたガラスの破片が飛び散りルシファーとベリアルの身体に傷を作っていく。

 だが、二人ともそんなことは気にせず茜の居る場所に向かって進む。

 ようやくたどり着いた時には風も収まっていた。

 ルシファーとベリアルを見た茜は顔色を変えた。


 「ごめんなさい。・・・ごめんなさい。」


 茜は泣きながら傷つけてしまったことを謝った。

 その後、力の暴走による力の枯渇で、茜は気を失い倒れた。

 倒れる直前でルシファーが茜の体を支え、抱き上げた。


 「ベリアル、茜を部屋に連れて行って寝かせてくれ。」


 ルシファーはベリアルに倒れた茜を渡した。

 ベリアルは茜を受け取り部屋を出た。

 部屋にはルシファーとサタン、ベルゼブルそれにラプラスが残っている。


 「何があった。」


 怒りを含ませたルシファーの声に空気が震える。


 「サタン様とのゲーム後、茜がベルゼブル様と話がしたいと言い出して話し合いの場になったのですが・・・」


 「その話し合いでどうやら茜の触れられたくない所にふれたようだ。」

  

 言葉を濁したラプラスに代わってサタンが答えた。

 ルシファーもそれだけで何があったかを察したらしく、その原因にすぐに思い至った。


 「・・・過去か。」


 「過去?それならルシファー様にも話されているのでしょう?なぜ、それが問題になるのですか?」


 ルシファーは首を振る。

 茜は自分のことについて何一つ打ち明けていなかった。

 ルシファーが茜の過去を知っているのはラプラスに見せて貰ったからである。


 「お前も知っているだろ。混血が禁忌とされる理由を。そのうえ、唯一の味方だった者も早くに死んだからな。それに茜は実際に人間に殺され、死んだことになっている。」


 「ですが、それは・・・・」


 茜だけに言えることではない、と反論しようとしたが、出来なかった。

 先ほどの茜の力の暴走の時に一瞬だけ何かが頭の中に流れ込んできた。

 

 『・・・あんな悪魔の娘が、この世に存在すること自体が罪だ。お前は滅びるべき存在なんだ。』


 小さな茜の上に乗り首を絞め、剣を突き付けている男。

 それを見ている茜の顔には何の感情も見えなかった。

 そして、その男の顔には見覚えがあった。

 幾度となく戦場で顔を合わせてきた大天使の長、ミカエル。

 何故、この男が・・・と考え答えはすぐ目の前にあった。

 視線を上げた先でルシファー様がこっちを見ていた。




 「ベルゼブル、お前一度でも真正面から向き合ってマスターと話したのか?俺たちの言葉が信じられないなら気が済むまで話せばいい。」


 声のした方に視線を向けると、そこには茜を部屋まで運び、ベッドに寝かせて戻ってきたベリアルがドアに凭れていた。


 「目が覚めたらその場を設けるからそのつもりでいろ。」


 ルシファーとラプラスはそのまま部屋を出た。

 ベリアルは代わりに中に入り椅子に座った。


 「サタン、お前はあの娘をどう思っているんだ?」


 「信頼できる娘だと思うぞ。それに賢い。」


 「ベリアル、お前はなんで従うんだ?契約をしているわけではないだろ。」


 「いーや、契約よりももっとたちの悪いもので縛られてるよ・・・身体的に自由なのに精神的に拘束されるって、思ったより不便だな。」


 「・・・なるほど。」


 サタンが楽しそうに笑う。


 「先に惚れた方の負け、って奴か。」


 「まったくもってその通りで。」


 楽しそうに語るサタンとベリアルをみて、自分は茜と言う少女のことを何も知らないんだなと思い知った。

 

 「言葉で話せないんなら闘ってみたらどうだ?そっちの方が我々らしいだろ。」


 「・・・あぁ、そうだな。」


 悪魔は悪魔らしく欲に忠実にあるべきだ。

 それこそ『嫉妬』は本領ではないが『貪欲(暴食)』の悪魔として。



茜にルシファーが取られたと嫉妬して敵意をむき出しにしていたベルゼブルでした。

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