第42話 サタンとの約束
茜がルシファーの城に滞在するようになって3週間が過ぎた。
1週間目は気を失っていて何も出来なかったが、その次の日にはレヴィアタンとの頭脳戦やベリアルを隷属させたりなどいろんなことがあり瞬く間に時間は流れた。
次第に他の悪魔とも話せるようになったがベルゼブルだけは話すことが出来なかった。
ベリアルは茜がベリアルの城を破壊したこともあり、ルシファーの城に滞在していた。
隷属の契約の為外に行くときは一緒に出掛けていた。
そんなある日、ルシファーとベリアルと茜は人間界に向かった。
ルシファーが茜の母親の墓参りをしたいと言い出したからだ。
お母さんの墓がある場所で3週間ぶりに蒼と会った。
その日はしばらく話した後時間が来て、そのまま魔界に帰ってきた。
茜がいつものように書庫に行こうとラプラスを腕に抱え廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
振り返ってみるとそこにはサタンが立っていた。
「ルシファーの娘よ、私と1つゲームをしよう。」
「何のゲーム、サタン様?」
「前にレヴィアタンとやっていたゲームでどうだ?」
サタンの言うゲームとはきて早々にやった頭脳・心理戦のことだ。
茜は頷き返した。
茜は書庫に行き途中であったため、書庫の近くまで来ていた。
茜とサタンは書庫の中に入り、設備されている椅子に座った。
「先行はお前でいい。」
「分かった。・・・私の霊格(存在)は何だ。」
最初から核心を突く質問を投げかける。
いつもならこんな自分の正体を明かす真似はしないが、推測が正しければサタンはこの問題に答えられる。
サタンはフッと笑って答えを口にした。
「人類に依存していない神、だな。」
「正解・・・やっぱり。」
茜の立てた推測は正しかった。
「うん?バレてたのか?私が知らない振りをしていたこと。」
「私はそこまで馬鹿じゃないよ?サタン様だけ初めて会った時から私を見る目が変わっていないんだから。」
ベリアルを隷属させて帰って来た時から、周りの視線が少し変わった。
あまりよく思ってなかったのが、力を示して少し認められたようなそんな感じの視線に。
それと共に人間界にいた時と同じ恐怖や畏怖と言う感情も少し感じ取るようになっていた。
「よく分かったな。これでも相手を騙すのは得意なんだが。・・・まあいい。次は私だ。では霊格繋がりでこんな問題はどうだ?」
サタンはニヤリと笑って茜を見る。その瞳に侮りがあるわけではない。
「ルシファーの娘よ、お前は私をどう読み解く?」
どこか楽しそうに笑うその表情に魔王と言うよりも子供のような印象を感じた。
けれども、茜を見る目は何かを試すような覚悟を決めるようなそんな目のように思えた。
「神に敵対するものと言う概念のもとに人の悪魔とはこうあるべきと言う概念が重なった悪魔。単純に言えば、悪の象徴であり、死=世界の救済と言う方程式を持つ概念的存在。どう?」
パチパチと拍手するサタンはどこか楽しそうで、同時に少しだけ寂しそうだった。
「お前はやはり頭がいい・・・この勝負はお前の勝ちでいい。その代わり一つ頼みがある。」
茜が首を傾げてサタンを見るとすがすがしい顔で笑っていた。
「あぁ、何かあったときお前が俺を殺してくれ。その代わり、その約束を守ってくれるなら、俺はどんな危機でも、お前の仕事でも、悪魔の説得でもなんでも協力しよう。」
茜はジッとサタンの目を見る。
笑っているのに寂しそうなその目に茜は呟いていた。
「・・・サタン様、自分が嫌いなの?」
「そうだな。好きか嫌いかなら、間違いなく嫌いだろう。」
迷いなく首肯した。
やはり、と思う。
茜が今まで見てきたどの悪魔とも彼は異なる。
ルシファーもベリアルも、レヴィアタンでさえも悪魔であること誇りを持っていた。
けれども彼は違う、悪魔にならざるを得なかったのだ。
彼は神によって堕落した人間を裁くために創られ、その役目故に悪魔なのだ。
「・・・・・分かった。私が貴方を倒す〝神〟になる。約束する。」
「そうか、なら良い。」
2人の間に静寂が流れる。先に口を開いたのは茜だった。
「・・・ねぇ、1週間後に魔界と天界の戦いは始まるの?」
「どうしてそう思う?」
「この一か月戦っている様子がなかったから、休戦協定でも結んだんじゃないかなって。ルシファーは何も言わないから多分連れて行くつもりもないだろうし。」
拗ねたように言う茜にサタンはフッと笑いを零す。
「・・・行きたいのか?」
「うん、これ以上延ばしたら世界の滅びが早くなるだけだから。それにそろそろゼウスとの約束も果たさないと。」
「なら、私が連れて行こう。」
戦場に行きたいと言った茜にサタンは協力を申し出た。
普通なら止めるだろう。
ルシファーも連れて行きたくなかったから茜に教えなかったのだ。
「いいの?戦いを止めても?」
「あぁ、私はこの世界が好きだからな。それに約束しただろ。どんなことでも協力すると。」
「ありがとう、サタン様。」
茜は心からの感謝の気持ちを込めて微笑んだ。
「・・なるほど、レヴィアタンがやられたのはこれか。」
サタンは漸く納得がいったと茜に微笑み返した。




