第40話 魔王ベリアル
それまで笑っていた茜が何かに気づいたように笑うのをやめた。
「・・・ルシファー。」
茜がドアの方に振り返り、それにつられ他の悪魔たちもドアの方を見たが、そこには誰もいない。
茜がラプラスを抱えたままドアの方に走り出した。
そして、ドアを開けると、そこにはルシファーが立っていた。
ルシファーは一瞬驚いた顔をしていたが、ドアを開けている茜を見て納得したようだった。
ルシファーは茜の頭を撫でて、ドアを閉めた。
「お前たちは何を騒いでいるんだ。」
決して大きな声ではないが低く威圧的な声。
手を出すなと言われていたにも拘らず、喧嘩を売ったレヴィアタンは何も答えられない。
「馬鹿なレヴィアタンが売った喧嘩を私が買って、負かした。」
喧嘩と言っても部屋の中が滅茶苦茶になっているわけではない。
「頭脳戦か。」
ルシファーの言葉に肯定するようにマモンが話にはいってきた。
「はい。茜がレヴィアの言葉に腹が立ったようで、レヴィアは普通にバトルをしたかったんでしょうが、生憎馬鹿ですので・・・」
「マモン、どうして止めなかったんだ?」
ルシファーの声は怒っているような声音ではなくただ疑問に思ったから聞いているようだった。
「勝負の内容を聞いた時点で茜が勝つのは目に見えてましたから。」
「そうか。それで、何を言われたんだ?」
それまでマモンの話を聞いていたルシファーは茜の方に顔を向けた。
「・・・餓鬼」
「ははははは!馬鹿とはいえ序列三位の悪魔が餓鬼以下の知能しか持っていないのか!」
玄関の方から聞きなれない笑い声が響いた。
声のした方を見るといつの間にかそこに着流しの男が立っていた。
青い髪に黒い目、悪魔相手に年を言い出したら切りがないが、見た目は20代後半から40代、その間のどの年代にも見える。
「ベリアル、何をしに来た!」
ルシファーが声を上げると、ベリアルは両手を挙げておどけた。
「勘違いするなよ。俺が今日、用があるのはそこの娘だ。おい、お前俺のこと知ってるな?」
指差しされた茜は頷き答えた。
「もちろん。グリモワール『レゲメント』の第一書の表題『ゴエティア』に記載されている72の悪魔。序列68番の強大にして強力な王・ベリアル。無価値なもの。」
茜の言葉に満足したのかベリアルは機嫌を良くした。
「おう。それじゃあ、自己紹介はいらねぇな。ちょっと話があるから来てくれ。」
茜が「行ってもいい?」とルシファーと目を合わせた。
ルシファーは茜に頷き、マモンに目配せした。
マモンもそれに頷いたが、
「おいおい、他の奴は来るなよ。」
その前にベリアルが釘を刺してきた。
「何?」
ルシファーがベリアルを睨むが、それより先に茜がルシファーに声をかけた。
「大丈夫、ルシファー。私はこれでも強いから。」
「だが、・・・」
「ねぇ、ベリアル。この子だけは連れて行ってもいい?」
ルシファーがこれ以上心配しないようにと茜はラプラスを連れて行ってもいいかベリアルに確認した。
ベリアルはラプラスを見て驚きの混ざった声を上げる。
「・・・うぉう。何だそれは。いや、待て待て。何で、そいつがお前みたいな小娘と一緒にいる?」
ラプラスの存在を知っているのか、この場にいる異常さをベリアルは理解していた。
「友達だから?」
「何でそこで疑問形!?」
明らかに変な流れになってしまっているこの場の空気に他の悪魔は呆然と見ていた。
「ルシファー、どうするんだ?」
その空気に流されなかったサタンが問いかけた。
「・・・茜、気を付けていって来い。」
「うん、行ってきます。」
結局ベリアルが許可を出したわけでもないのだが茜はラプラスを腕に抱えていた。




