第37話 マモンの挨拶
ルシファーは茜の母親、菫との出会いを茜に聞かせていた。
「ルシファーって本当にお母さんのこと好きだったんだね。」
ルシファーは茜の言葉に顔を赤くして顔を背けた。
「・・・今日はもう休め。他の奴らもお前のことを心配していたぞ。明日は少しぐらい顔を見せてやれ。」
ルシファーの手が優しく頭を撫で、次第に茜の瞳も閉じていった。
「おやすみ、茜。」
優しい声は闇に溶けていった。
「ラプラス、茜を頼む。」
ラプラスが頷くのを見届け、ルシファーは椅子から立ち上がり、部屋から出ていった。
部屋から出ると男が立っていた。
黒紫の長髪を左側で結っており、服装は黒い礼装。
男の顔には心配そうな表情をしていた。
「茜は大丈夫だ。明日には出てくるだろう。俺は今から休むから明日はお前が城を案内してやれ。」
「・・・はい。」
男は、ホッと安心そうな顔をして、一礼した。
「頼んだぞ、マモン。」
ルシファーは長い廊下を歩き始めた。
翌朝、茜が目を覚ました時、枕元にはラプラスが寝ていた。
部屋の中にはそれ以外の人はいなかった。
ラプラスはぐっすり寝ていて、今まで寝ていなかったことが分かる。
(・・・ラプラス、ありがとう。)
茜がラプラスを撫でていると、トントンと言う音が聞こえた。
そしてガチャっと扉があいた。
「失礼します。・・・起きられて大丈夫なのですか、茜様?」
「・・・・・・」
部屋に入ってきたのは見たことはあるが面識のない男だった。
茜が突然の言葉に驚いて何も言えなかったのを男は警戒していると思ったのだろう。
「初めまして、私はマモンと申します。以後お見知りおきください、茜様。」
「どうして様をつけるの?敬っているわけでもないのに・・・」
「貴方はルシファー様の娘です。それにここでは力が全てですから。」
「じゃあ、様はいらない。その代わり、マモンって呼んでいい?」
交換条件だというと、マモンは納得がいかないという顔をしていたがそこは譲ってくれた。
「・・・分かりました。茜」
「うん、よろしくね。マモン。」
茜はベッドから降りてマモンの近くにより、手を差し出した。
「・・・私の力をご存じないのですか?」
「知ってるよ。」
それがどうしたの?と笑う茜にあの時の女が重なった。
マモンは溜息を吐き茜の手を見た。
「・・・よろしくお願いします。」
「ねぇ、マモン。私のお母さんってどんな人だったの?」
突然の質問にマモンは驚いたような声を上げ、茜を見た。
茜の目は好奇心でいっぱいだった。
「えっ!?う~ん、そうですね。一言でいえば変わった人でした。」
孤独を誰よりも知っていて、それでも誰よりも強くて、優しい。
悪魔でさえも怖がらない変わった人間。
「茜に少し似ていると思います。」
「?」
「それより今日はどうしますか?」
マモンは話は終わりだと、別の話題に逸らした。
茜も気にはなるけれど、無理遣り聞き出すことでもないのでマモンの話に合わせる。
「ルシファーが皆が心配してるから顔を見せてやれって。」
「私は城を案内するように申し付かっていますので、行きましょうか?」
「うん、あ、ちょっと待って。」
蒼はベッドに駆け寄り、寝ているラプラスを起こさないように手のひらに乗せた。
「うん、準備できたよ。」
「では、行きましょう。」
マモンは扉を開け、茜に出るように促した。




