第24話 出立の時間
零時が来る少し前、茜と蒼は皆に気づかれないようにパーティーから抜け出し、ゼウスのもとに向かった。
ゼウスは窓際で1人、月を見ながらグラスを傾けていた。
茜たちの気付いたゼウスは手に持っているグラスを近くにある机に置いた。
「楽しめたか?」
「うん、別れがたくなってしまうぐらい。」
「止めておくか?」
ゼウスの言葉に茜も蒼も横に首を振った。
2人の目に迷いや不安は一切見えなかった。宿っているのは決意だけだった。
「・・・行くよ。」
「そうか。」
ゼウスも返事が変わらないことは知っていた。
それでも後悔だけはして欲しくなかったからそれを承知で聞いたのだ。
ゼウスが再び杖を突くと、今度はもともといた王の間に戻ってきていた。
その時、ちょうど零時を知らせる鐘が鳴った。
周りの空気が騒めき始め、部屋の中心に影が伸びてきた。
そして、そこからクロアとジブリールが出てきた。
「話は着けておいてくれたかい、ゼウス王。」
「君たちも考えてくれた?」
クロアがゼウスに、ジブリールが茜と蒼に話を振った。
茜がゼウスの方を見るとゼウスは頷いた。茜と蒼も顔を見合わせ頷いた。
「・・・ジブリール、僕たちを連れていって。」
蒼の言葉にジブリールが嬉しそうに微笑んだ。
「良かった。君ならそう言うと思ったよ。」
「君もそれでいいかい?」
クロアも確認するように茜に問う。
「うん。」
二人の了承を取れたことでクロアは機嫌を良くした。
そして、クロアが手を掲げた瞬間その空間を影が覆い、十字に切り裂いた。
その裂け目が広がり門が出来た。
「では、行こうか。」
クロアがその門に足を踏み入れ茜たちを誘う。
茜たちもクロアに続き足を踏み入れた。
そして、振り返った。
「行ってきます、ゼウス。」
影に消える最後に見えたのは、今まで見たことがないような笑顔だった。
笑わなかった茜と笑顔を張り付けていた蒼の心からの笑顔。
世界に絶望していた彼らの心に確かに光は宿った。これはその証だろう。
だから私は願い続けよう—―――彼らの心の灯が宿り続けるように―――――
また、彼らに会える日まで。




