第23話 別れのパーティー
宮殿に着いた後、王の間の前で茜と蒼は他の皆と別れた。
アポロンやアルテミスだけでなくアテナもだ。
いつもなら一緒に入るアテナまで入らなかったことに茜も蒼も驚いた。
アテナに理由を聞くと、しなくてはいけないことが出来た、と言っていた。
茜と蒼は不思議に思いながらもゼウスの居る王の間に入った。
部屋に入るとゼウスが待っていた。
「・・・今日は、楽しかったか?」
「うん。楽しかったよ。」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
三人とも何から話せばいいのか迷っていた。
それでも時間が惜しいとゼウスは口を開いた。
「・・・・・茜、蒼。昨日、お前たちが言った私の願いは本当だ。このまま歪みが大きくなれば、この世界はおろか、他の世界も歪みに飲み込まれる。そうなれば世界は終末を迎える。そして―――」
「神が干渉できるのは神界内だけ・・・」
世界が一つだったころ、人と神は身近な存在だった。
それ故に信仰心も高く、神々は力を使うことが出来た。
だが、世界は歪みによって別れ、人々の信仰心は薄まり、人間界では神々の存在自体が希薄になってきている。
「そうだ。人間界に下りれば多少は干渉できるが、人々の信仰が薄れた今、神々(我々)は力を失いつつある。神界以外では思うように力を使えまい。」
「世界の終焉は今までにも何回かあった。人間は世界が一つだったころのような理想郷を目指し、格差社会を作り出した。その世界も歴史の終わりの一つだ。神々の運命もそうだった。それに、人々が神から遠ざかり、霊的な堕落を起こしている今もそうだ。本来、終末論は一つの歴史が終わった後に新たな世界が出来るとしている。だが、歪みによって飲み込まれた世界の後に新たな世界が生まれる可能性は限りなく低い。」
「トトの力を借りても?」
トトはこの世の終焉の時に新たな世界を生み出す役目を担っている。
「あぁ。さっきも言ったが神の力はこの世界全てを救うことは出来ない。だから――――――」
ゼウスはそこまで言って一度区切り、茜たちを見て続けた。
「―――――――私はお前たちを利用するために神界に置いた。だが、お前たちに責任を押し付けるのはお門違いもいいところだな。もともとは神(我々)に責任があるのだから。だから、お前たちは自由にするといい。人間界に戻ろうと、神界に残ろうと。」
「・・・・・・・」
考えるまでもなく茜たちの意思は固まっている。
「・・・僕たちは行くよ。戦い(父さん達)を止めに。」
「神の責任だというのなら私たちにもその責任はある。だって、私たちは神の血を引いているのだから。」
ゼウスは信じられないものを見るような目で茜たちを見た。
「・・・お前たちは自分が何を言っているのか分かっているのか。」
「分かってるよ。」
ゼウスを見つめ返す瞳には一切の不安も迷いも感じ取れなかった。
「・・・利用されてもいいというのか?」
「利用されるんじゃない、協力するの。」
茜は断言した。
運命(ゼウスの意思)に従うのではない、自分たちの意思で行動するのだと。
「・・・ハハハ、協力か。全知全能を司るこの私が童に助けられるか。・・・これは、面白い。」
「僕たちじゃ不満?」
蒼の言葉にゼウスは首を振る。
「いや。最高だな。」
笑いを抑えきれないゼウスに茜は告げた。
「だから、私たちは力をつけるために神界を離れる。」
「・・・知っていたのか。」
ゼウスはクロアが提案してきたことを知っていたのかと聞いているのだろう。
「うん、昨日アテナ達が集まっている間にジブリールが来て教えてくれたから。」
「ここにいても時間はかかるだろうが力は開放できるぞ。・・・それでも行くのか?」
「うん。時間はあまりないから。手っ取り早い方法があるのなら。」
歪みが世界を飲み込むまでに残された時間は誰にも分らない。
明日かもしれないし、一年後かもしれない。はたまた百年後かもしれない。
そんな中で時間はかけられないという茜たちの想いをゼウスは理解した。
「そうか。・・・なら少し付き合え。」
そう言ってゼウスは手元にあった杖を一度床に突いた。
その瞬間それまで静かだった部屋がにぎやかになった。
後ろを振り返ると、部屋の様子が違っていた。いや、部屋が違っていた。
たくさんの料理が並び、たくさんの神々が集まっていた。
ギリシア神群の神だけでなく北欧神群、エジプト神群からも今までに出会った神々が来ていた。
「昨日、アポロンがお前たちがここから出ていくことを予言した。そして、それを聞いた他の奴らがパーティーをしようと言い出したんだ。まぁ、ただ騒ぎたかった奴もいるのだろうが。お前らを思ってのことだ。少しの間付き合ってやれ。」
いつの間にか横に来ていたゼウスがこの状況を説明してくれた。
茜たちがゼウスを見上げると笑っていた。
「茜、蒼!!」
アテナ達が手を振っていた。
「行ってやれ。」
ゼウスの声に背中を押され茜と蒼はアテナ達のところに向かった。
ゼウスの目の前には茜たちを中心に神々が集まっている。
古今東西問わずどの世界においてもここまで神々に愛されたものはいないだろう。
そう考えて1人だけ違うと思い至った。
「・・・いや、1人だけいたな。」
神々に愛されてなお、魔に堕ちた憐れな男が・・・・
だが、彼らが同じ轍を踏むことは無いだろう。二人が共にある限り・・・
ゼウスが見守る中、何事もなくパーティは進んだ。
多少、騒ぎがあったものの皆楽しそうだった。
その後も夜遅くまで騒ぎまくった。




