第16話 セフィロトの樹
暗い闇がどこまでも続く。
先は何も見えず、ただ風を切る音だけが耳に届く。
重力に任せて下へ下へと落ちていく。
しばらくして漸く光が見えてきた。
「お姉ちゃん!!」
「うん。」
二人の手に込める力が強まった。
暗闇を抜け、二人の眼前に広がったのは広大な森林だった。
そして二人はそのまま地面へ衝突した。
土煙が舞い上がる。
「・・・ソウ、大丈夫?」
「大丈夫。」
辺りには砂ほこりが舞い何も見えない。
慌ててソウに声をかけると、すぐ隣から声は返ってきた。手は繋いだままだ。
砂埃も落ち着き、二人は何もなかったように立ち上がった。
「やっぱり、これぐらいじゃ死ねないね。」
笑顔で蒼が言った。
茜と蒼には傷一つない。
かなりの高さから落ちたにも拘らず、骨が折れるどころかかすり傷1つ無かったのだ。
「そうだね。・・・それより、まずはこれをクリアしなくちゃ。ソウ、さっき見えた景色憶えてる?」
「大丈夫、憶えてるよ。森林の中に大きな木が11本あったよ。」
一面に広がる木の中に11本だけ飛びぬけて大きな木が立っていた。
「11本。・・・ジブリールは僕の大事な木の実を取ってこいって言った。ということはセフィロトの樹をモチーフにしている。」
セフィロトの樹とは別名、生命の木とも呼ばれ10個のセフィラと隠されたもう一つのセフィラで成り立つ。それぞれのセフィラにはそれぞれ象徴するものがあり、守護天使がついている。ここでは木の実をセフィラに例えているのだろう。
蒼も茜の言葉にうなずく。
「ガブリエルが守護するセフィラは、・・・Yesod、基礎。色は、紫だよね。」
「うん、取り敢えず、あの大きな木を探してそこから場所を絞り出そう。」
「落ちてくるのにかなり時間がかかったから探す時間はあまり残ってないからね。」
二人は走り出した。
そして2人は一つの大きな木の下に来ていた。
樹の周りをまわり、木の実を見つける。
大きな木なのに木の実は1つしかついていなかった。
「色は?」
茜が蒼に問いかけると、答えはすぐに返ってきた。
「白。・・Kether、王冠だよ。」
蒼の答えに、茜は少し考え、二つの木の位置関係から目的の木の位置を探ることにした。
「・・・ソウはここにいて。私はもう一つの木を探してくる。その木の位置とこの木の位置を比較して目的の木の方向を探そう。」
「うん、分かった。」
蒼が頷いたのを見て茜はもう一度走り出した。
「・・・見つけた。」
しばらく走ってもう一本の大きな木を見つけた。
茜は木の周りをまわって木の実を見つけた。
「木の実の色は黒。Binah、理解。・・・よし、蒼のもとに戻ろう。」
茜は木の実の色と木の位置を記憶し、
茜は走ってきた方向に体を向け、もう一度走り出した。
茜が蒼の居る一つ目の大きな木の下に戻ってきた。
「いま、私がきた方角に第3のセフィラBinahがある。だから、角度的にこの道をまっずぐ行けば4つの大きな木があるはず。」
茜は先ほど見た木のある方向を指さし、それから次に向かうべき方向を指した。
蒼もそれを聞いて、何番目の木かを確かめる。
「それの3番目の木だね。」
「うん。」
茜の頷きと共に二人は走り出した。
走っていくうちに一つ目の大きな木があったがその木には何もついていなくて二人は確信した。
他のセフィラとは違い、異なる次元にある隠れたセフィラ。
見えないということは隠れているとも読み取れる。
「Daath、知識だね。この道で会っているようだね、お姉ちゃん。」
「そうみたい。」
「それじゃあ、このまま走り切ろう。」
二人は走り続け、しばらくしてまた大きな木が見えてきたがそれは素通りして次の木へと向かった。
そして漸く一つの木のもとへたどり着いた。
その大きな木についているのは紫色の木の実。
2人は正解を確信した。
「うん、じゃあ、触ってくるね。」
そう言って蒼は木に登り始めた。
木の実自体はそれほど高い位置にあるわけではなく、茜が下から見守る中、蒼は紫色の木の身に触れた。
そして蒼が木の実に触れると同時に茜たちは最初にいた部屋に戻ってきていた。
パチパチと手を叩く音が聞こえてきた。
「おめでとう、試練クリアだ。僕の試練をクリアしたのは君たちが初めてだよ。」
ジブリールは素直に賞賛の言葉を贈った。
「・・・『勇気』の試練はクリアだよ。最後の試練、頑張ってね。」
ジブリールはそう言って羽をだし、天井のないこの部屋から飛んでいった。




