第15話 大天使ガブリエル
先ほどの部屋では少年がクロアの試練をつまらなそうに見ていた。
少年の瞳には面白くないという感情がありありと浮かんで見えた。
「あ~あ、クロアのやつ負けちゃった。」
「・・・・・」
少年の声にもう一人の男は何も反応せず、変わらず本を読んでいた。
「じゃあ、次は僕が行くね。」
少年は男の反応に気分を害した様子もなく、楽しそうに手を振りながら部屋を出ていった。
三人が次に辿り着いたのは筒状の部屋だった。
天井はなく、空が丸見えだった。
そしてその部屋の中心にいたのは茜より少し年上ぐらいに見える少年だった。
「ようこそ、僕の試練へ。・・・あれ?このセリフ使うのすごく久しぶりな気がする。まぁ、いいか。僕の名前はジブリール。君たちの名前は?」
少年がにこやかにあいさつしてきた。
「私はセン。こっちは、弟のソウ。」
「初めまして。大天使ガブリエル様。」
茜と蒼が同時に頭を下げ、挨拶をする。
蒼の言葉にジブリールの目が一度大きく見開かれたが、すぐに元の笑顔に戻った。
「あれ、すごいな。僕の名前分かったんだ。流石、あの変態の試練をクリアしただけのことはあるね。」
クスクスと楽しそうに笑うジブリールの言葉に反論の言葉が返ってきた。
「失礼な。愛の神に年の差は関係ないッ!!私は生まれたばかりの赤子から年を重ねた熟女まで大いに情熱を燃やすことが出来る徹頭徹尾揺るがない完璧な、愛の神だッ!!」
いきなり現れたうえに、言動が危ないクロアに、ジブリールは慣れているのか、冷静に返している。
「うん、わかったから早く死んで。」
「我が人生に一片の恥なしッ!!愛の神の博愛万歳ッ!!博愛主義万歳っ!!!」
それでも挫けることなく、クロアは更に叫び出した。
「・・・・・」
その場にいる全員が彼から少し距離を取った。
「失礼。少し本性を開放してしまったようだ。」
しばらく経って落ち着いたクロアは山高帽を被り直し、ネクタイを整えた。
「ジブリール、あの程度の試練でもクリアできない神は山ほどいたのだぞ。それに比べればこの子らは十分『知』を備えている。」
クロアは茜と蒼を見据えている。
ジブリールもクロアの試練の難易度は分かっている。
クロアの試練をクリアする奴が少なかったために、ジブリールがこうやって試練を出すことがほとんどなかったのだ。
例え、クロアとジブリールの試練をクリアしても最後まで行き着くことはほぼ不可能に近いのだが。
「それは、わかっているよ。それに僕が試すのは『知』じゃない。多少『知』がなくてはクリアできないが、僕の課題は『勇気』だよ。だから、もう邪魔しないでね。」
そう言った後、ジブリールはトントンと足で二回床を叩いた。
するとジブリールの下の床が一部消え、床には丸い穴が出来た。
「僕の試練は、ここから飛び降り、下にある世界で僕の大事な木の実を取ってくること。君たちのどちらかが木の実に触れた時点でクリア。この場に戻ってこれるよ。ただし力は使ってはいけないよ。それと木の実に触れられるのは1人1回まで。制限時間は一時間。僕が合図したらスタートだ。ちなみにここから下の世界まではかなりの距離があるから覚悟しておいてね。」
ジブリールは満面の笑みで告げるが、ジブリールの言葉に対してニケが食いついた。
「なっ、彼らを殺すつもりですか。」
「さぁ?僕が試すのは『勇気』だからね。怖いなら止めてもいいよ。・・・それじゃあ、とりあえずスタート!!」
ジブリールの陽気な声が響いた。
茜と蒼は頷き合い、手を繋いぎ、ジブリールに向かい合う形で穴の前に立った。
「へぇ~。行くんだ。」
興味深そうな目が茜と蒼に向いている。
「セン、ソウ!!」
「アテナ、ニケ。大丈夫、二人一緒なら―――――」
『――――出来ないことは無い。』
二人、声を揃えて言い放ち穴の中に飛び込んだ。




