第六話 勉強
ミューズがぱちんと指を鳴らすと、神秘的な空間は教室に変わり、いつの間にか黒板や机、いすが置かれていた。ミューズもいつの間にかローブを羽織っていて手にはチョークを握っていた。
「「そこの空いている椅子に座れ」」
そう言われ私は近くのイスに座った。
机の上には既に教科書やノート、筆記用具なども置いてあり、結構本格的な準備のしように驚いた。教科書も紙辞書ぐらいの厚さがある。
(これ、今から全部やるの…?)
「「では魔法について教えるぞ!今から向こうの世界で学ぶ16年分の教育を一気に詰め込むから覚悟しろ?」」
「─へ?ウソでしょ…?!多すぎじゃないですか?!」
「「我慢しろ。向こうの世界では魔法は仕組みを知らないと使えないし、使えなければ生きていけないからな。それに向こうの世界でも音楽やりたいんだろ?」」
「うっ……それはそうですけど」
確かに死ぬまでサックス吹く想いは変わらないし、変えるつもりもない。サックスを吹くためならなんだってできる。それならやることはひとつだ。
「私、頑張ります!頑張って魔法習得して絶対にサックス人生謳歌します!」
「「おう。その意気だ。では早速授業を始めるぞ!教科書の4ページを開け!」」
(新しい世界でも音楽できるようにサックスを吹けるように生活の基本である魔法は習得しないと…!)
音羽はそう意気込んでミューズの授業を聞くのだった。
***
(………つかれた。)
やっぱり地球と理が違うから今までの考え方が使えなくて理解に苦労した。途中休憩も挟みながらだったが、それよりも授業の時間が長い。時計がないので正確な時間は分からないが確実に4時間以上は毎回ぶっ通しでやっていたと思う。
でも魔法の実技に移ってからは速かった。意外と早くコツをつかめたのでなんとか、最低限の魔法は使えるようになったと思う。
「「まだ一夜漬けレベルだが、とりあえず何とかなりそうだな。あとは向こうの世界で生活していく中で慣れていくだろう。あとその教科書はやるから、復習に使うといい。それとこれもやる。」」
ミューズはそう言って手のひらと同じくらいの大きさがあるブローチを渡した。ブローチにはト音記号を軸にして夜空みたいな深い青の石が周りを囲んでいる。神秘的な美しさもありかわいらしさもあるが凛としたかっこよさもありなんだかミューズの雰囲気に似ている。
「すごい!これなんですか?」
「「これは俺の印だ。これを持っていると音楽の神である俺の加護を受けていることの証になる。俺は地球の神だから効力はあまりないが、音羽が助けを求めた時に必ず力になろう。まあお守りみたいなもんだ。失くすなよ?」」
「はい!大切にします!」
早速ブローチを左胸の位置に着けてみる。石が反射してとても綺麗だ。見ているとなんだかやる気が湧いてくるような気がする。確かにこれを身に着けていればサックスがもっと上手になれそうだ。
***
「「必要事項も伝えたし、そろそろ異世界に転移させるぞ。音楽の神として音羽が向こうの世界でも音楽を楽しめることを願っているぞ。」」
ミューズがそう言うと、私の足元が淡く輝き始めて私の周りを覆っていきだんだん視界がぼやけてきた。
「ミューズいろいろありがとう!私必ずサックス上手くなるよ。それで絶対に死ぬまで音楽やる!」
たくさん私が困らないように教えてくれたミューズに何かお礼が言いたくて、そう叫んだ。するとミューズがその視界の先で何か言った気がした。
『『それが今の俺が音羽にできる唯一のことだからな。頑張れよ』』
【投稿は不定期です】
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